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「えっと、天獣チェーロなの?」


レリアが思わずと言った風情でまどろんでいる白い肉食獣に聞いた。


白い獣は「ん?」と顔を上げると、『そうだが何か?』と何でもないように答えた。


コリアも思わず地獣テラの方を見る。テラものんびりとコリアの方を見つめる。


その様子を見ていたジェスとロナルドは二頭の軽さにまた頭を抱える羽目になっていた。





「つまりですね、お二人ともこの伝承と似た、もしくは同じ契約を神獣様方と結ばれたということになります」


((どうしてこうなった))


レリアとコリアは頭を抱えたが、契約を結んでしまった今となってはもうどうしようもない事だった。


「こうなったら……」「うん」二人とも頷きあい、この状況を楽しもうとそれぞれが契約した神獣の元に行、その毛並みに顔をうずめた。


チェーロもテラも嫌がるそぶりも見せず、相変わらずゆったりと寝そべっている。


「ーーあの、話を続けても?」


「ええ、ロナルド、問題ないわ」


「そうそう」


もふもふ、ふさふさの毛並みでアニマルセラピーを行って心の安定を図っている二人をどこか羨ましそうに見つめながら、今度はロナルドが二人に質問を始めた。


「えーと、それじゃあ、湖の湖畔でお二人と別れたあとの話なんだが、単刀直入に聞くが、なぜお二人だけが水鏡の向こうに呼ばれたか聞いたか?」


「えっと」「なんか僕らが【ギフト】持ってるから入れたって言ってた」


「……なるほど、これは確定ですかね」


ロナルドはジェスと顔を見合わせると頷きあった。レリアとコリアは首を傾げている。


「お二人は【ギフト】についてどなたからご説明を受けたことはございますか?」


レリアとコリアは首を振って答えた。二人の知識は育てられた屋敷に放置されていた古い本や絵本によるもので、知識に相当偏りがあるのだ。


「じゃあ、そこから説明しますね。【ギフト】ってのは神様や精霊様から与えられると言われてる能力の総称です。神様や精霊様が愛している魂に与えると言われています。地域に寄っちゃ異能とか超能力とか言われてますね。で、お二人が持ってると思われる【ギフト】は多分【妖精の目】と【妖精の耳】かその上位互換だと思います」


「「【妖精の目と耳】?」」


「そーです。まあ、端的に説明すると、人ならざる世界が見える人と人ならざる者の声が聞こえる耳ってことですね。妖精ってのは人間界と重なった上位の別の世界に生息してると言われてるんですけど、その世界と繋がる鍵ってとこですね」


「人ならざる……」「……世界」


「あとはもしかしたら魔力量も関係あるかも知れないですけど、それはとりあえず置いときますね」


「その世界にどんな形でも触れられないと入れない世界という事ですね」


ジェスが簡潔に締めくくった。






「ギフトかぁ……コリア、どう思う?」


「いきなりそんな事言われてもって感じだね」


「うーー!!」


なんとなくもやもやしたのか、レリアがチェーロに抱き着いたのをコリアは苦笑しながら見ていた。まあ、コリアもテラにもたれかかっているのだが。


ギフトが神様や精霊様に愛されている証というなら、どうして自分たちはこんな所に生まれたのか、とは二人とも思っていることだ。


「なんか、理不尽だよねぇ」


「そうだね」


不満そうなレリアと苦笑するコリアを神獣たちはどこか申し訳なさそうに見ていたのだった。






「それにしても、レリア様とコリア様が【ギフト】持ちだったとは……」


「神殿には隠さないといけませんね」


「……ええ、特にレリア様は最悪聖女として祭り上げられるでしょう。ーー聖女とは名ばかりの生贄にね」


「ああ……今神殿はきな臭いっすからね」


「はい、我が領地の御当主をあんな所にお渡しする訳にはいきません」


「とりあえず、明日から魔力の扱いと護身術をお教えしないといけませんね」


「そうですね」


「我らでお二人を誠心誠意お守りしましょう、最も、チェーロ様とテラ様がいらっしゃったら戦力的には問題ないかもしれないですが……」


「違いないっすね」


カツンと杯が重なった。二人が語らう夜は静かに更けて行った。

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