底辺のおっさん冒険者、見下してくるパーティを思い切ってやめてフリーランスになったら待遇が3000倍になった~異世界でゆるゆるで楽しいフリーランス生活を送りたい!

にこん

駆け出しフリーランス

第1話 おっさん、パーティ抜けます

 異世界に転移して半年くらいが過ぎた。


 俺はどこにでも居るような非モテのおっさんだった。

 ヒゲを剃るのすら面倒な男だ。


 彼女のひとつも出来たことなんてないし、異世界に来てからはヒゲは伸び放題。


 そんな男だったが、今では冒険者として活動している。

 ランクはEランクである。

 そんないわゆるカースト最下位でも毎日必死に生きてます。


 そして、今日も年下のパーティリーダーにこき使われている。

 名前はリダス。


「おい、おっさん。宿取ってきてくれ」

「はい」


 そんな返事をして宿を取りに行く。

 当たり前の話だが誰にでもできる雑用である。


 噛み砕いて言えば"パシリ"


 俺は自分より15歳以上は年下の男にそうやってパシられるような男。


(日本にいた時もそうだったけどさ)


 年下の若者にパシりにされて、そんな35歳のおっさんだった。


 後ろから声が聞こえてくる。


「リーダー、あのおっさんほんと情けないよね」


 パーティメンバーの女の子の声だった。

 リダスの声も聞こえてくる。


「言ってやるなよ。あれでも必死に生きてんだぜ」


 そんな言葉を聞いてると、自分が情けなくなってくる。


(俺の人生なんでこうなったんだろ)


 いや、答えは決まってる。


(ゲームや遊んでばっかだったからだよな)


 物心ついたころからゲームばっかしてたのを思い出す。


 ジャンルはRPG、アクション。

 まぁいろいろやった。


 ちなみにいちばん好きなのはアクションだ。

 ターン制とか正直嫌いなんだよ。


 でもアクションは違う。攻撃を受けずに敵を完封することも可能だからだ。


 ゲームは好きだ。

 こんな俺でも世界を救ったりゲーム内のキャラクターは優しくしてくれる。


 だから好きだ。


(ゲームやりてぇ、エロゲ。女の子に優しくされてぇ)


 そんなこと思いながら歩いてたら思った。


(よく考えたらこの世界ゲームっぽいよな)


 ステータスオープン。


 ブン。


名前:タツヤ オノ

レベル:5

攻撃力:5

防御力:5


 っていうふうにステータスが出てくる。


(ゲームみたいな世界だよなやっぱ)


 ちなみに俺があのリーダーにペコペコ頭下げてるのはあいつの方がレベルが高いからである。

 レベルが高い方が偉い、みたいな風潮がこの世界にはある。


(なら、俺もレベル上げたらいいんじゃないか?)


 ゲームみたいに敵を倒せば上がるしな、この世界。


(うん。今日はもうパーティの活動は終わりだ。この後レベリングをしてみてもいいかもな)


 そんなことを思っていると宿屋の前についた。

 俺は店主と話をして部屋を取った。


 鍵を受け取るとリダスのところに戻った。


「お待たせしました」


 そう言いながら鍵を渡そうとするとリダスは言った。


「なぁおっさん、もっとキビキビ動けないわけ?」

「す、すみません」


 頭を下げた。


 頭を下げるのは得意だ。

 だがその後もリダスの文句は止まらない。


「あほ、マヌケ馬鹿無能」


 文句はただの悪口に変わっていく。


 それを聞いていて俺は思っていた。


(なぁ、何で俺こんなやつの説教真面目に聞いてるんだろうな)


 俺、このままこのパーティにいてもいいんだろうか?


 今はまだいい。

 だが、考えてもみろ。


 40,50になった時もこのパーティにいるのか?

 いや、そもそも冒険者続けられるのか?その歳で。


 考え始めたら不安になってきた。


「おっさん?謝って済むと思ってんの?」


 ニヤニヤするリダス。


 俺はそこで何かがプツリと切れたような感覚を覚えた。


「リーダー」


 リダスの顔を見た。


「なんだよ?」

「このパーティ抜けます」

「抜けてどうすんだよ?お前みたいな雑魚の無能どこ行っても約立たずのままだぞ?」


 出た。


 こうやってどこ行っても結果は変わらないぞマン。


 俺はこの手のヤツを信用してない。

 ここが日本ならともかく、ここはゲーム的異世界だ。


 俺の頑張り次第で結果は変わると思う。


 俺はリダスに今考えていることをいった。


「フリーランスになりたいんです」


 そう言うとリダスは笑った。


 腹を抱えている。


「ぶばっ!てめぇがフリーランス?おっさん、冗談はよしてくれ。フリーランスってのは強いやつがやるんだよ。仮にお前がフリーランスになって、だ。誰がお前みたいな無能に仕事頼むんだよ?えぇ?考えても見ろよ」


「冗談ではありません」


 そう言うとリダスは言った。


「二言はねぇな?おっさん。後で泣きついてきても知らねぇぞ?」

「はい。お世話になりました」


 頭を下げるとリダスは言った。


「おっさん。お前をこのパーティから除隊する。もう二度と俺らのパーティに入れると思うなよ?あとな。お前のパーティ加入期間半年だ。他のパーティに泣きついても誰もいれないぜ?どうせ続けねぇ根性無しだって見抜かれるぜ?」


 そう言ってリーダーは歩いていった。


 その後に捨て台詞のようにリダスは言った。


「無能はどこ行っても無能だぜ?おっさん。お前が野垂れ死んでるのを楽しみに見てるよ」


 リーダー達が歩いていくのを俺は見送った。


 それから現在の所持金を確認した。


【3000ジェル】


 3000円みたいなものだ。


(休んでいる暇は無いな)


 まずやることがある。


 レベリングである。


 ゲームのような世界ってことは数字が支配している世界なはずだ。


 ということはレベルを上げなくてはいけない。


(レベル5ってめちゃくちゃ弱いよな)


 そう決意した俺は装備を確認したあとすぐにダンジョンに向かうことにした。



【ゴブリンの森】


 いちばん近くのダンジョンだとここだった。


 名前の通りゴブリンしか出現しないダンジョンである。

 ゴブリンと言えば雑魚モンスター代表のようなイメージが俺にはあるが。


(今の俺は初心者同然だしな、気が抜けない)


 さぁ、気を張って進んでいこう。


 森の中は薄暗い。

 当然だが周囲は背の高い木で囲まれているせいだ。


 それから既に時刻は夜だからである。


 月のあかりを頼りに森を進んでいく。


 そのとき。


 キラッ。


(右の茂みでなにか光った)


 ガサッ。

 ブン!


 ゴブリンが茂みから飛び出して攻撃してくる。


 さっき光ったのは月明かりが目に反射したからだ。


 ゴブリンは俺の立っていた場所を棍棒で攻撃していた。

 もう少し反応が遅れていれば当たったな。


「ギィィィィィィィ」


 棍棒は当たれば痛そうだ。

 しかし、当たらなければ問題は無い。


 俺は剣を構えてゴブリンと向き合う。


「さぁ、戦闘を開始しようか、ゴブリン」

「ギィィィィィィィ!!!!」


 俺の言葉に答えるようにゴブリンが飛びかかってきた。

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