第32話 狙撃王召喚



エルフの国


現在国ではお祭りがおこなわれている


先祖に感謝し、森に感謝し、友人に感謝する


年に一度の感謝祭が行われる




「やっぱりお祭りはいいね~~、なかなか食べれないものとか食べれるし」


「あまり食べすぎちゃだめよ」


「王らしさが無くなってるぞ、まあかわいいからいいが」


本日は王としての仕事もなく、家族で祭りを見て回る



「お、ティティル様!どうですか一杯?人間の商人が下ろしてくれたんですよ」


「お~~いいね~、といっても私酒飲めないんだけど」


「あれ?そうでしたっけ?ならご両親はいかがですか?」


「ならいただこうかな」


「ふふっ、私も」




ティティルの家族は皆から慕われている、王であることも確かだが皆に分け隔てなく優しく接し、友人としてふるまう


エルフの国は堅苦しい制度や風習は特にはない、王だから下々の民と関わってはいけないわけではない


まあちょっとした悪い遊びをすれば少し非難されるだろうが今のところそういった行動をした王はいない




「ティティル様!人間の商人がいろんな商品を売ってましたよ」


「あ~来たんだ、今行くね!」



エルフの国は鎖国しているわけではない、まあ完全にオープンというわけではないが、友好のある人間とは交流を深めており、その人間がエルフの国にいろんなものを持ってきてくれる



ティティルが向かうとそこには見慣れた男が商品を紹介していた


「これは最近開発された望遠鏡ってやつなんだが、まだ遠視のできない子供のエルフにどうかと思って持ってきたんだが、おっとティティル様、お久しぶりです」



「久しぶり~~」


「ティティル様は変わらずお綺麗ですな」


「え~~そうかな~~えへへ」


「そういえばティティル様、紹介したいものがおりまして」


「え?誰々?」


「私の孫になります、ほら、挨拶しなさい」


「こ、こんにちわティティル様」


「あれ?もう孫!?前に息子ができたってはしゃいでたような」


「ははは、人間とエルフでは時の流れが違いますからね」


「そういえばそうだったね~~」


「いずれ息子と孫と子孫が私の役目を引き継いでいきますので、とりあえず今回は顔合わせをと思いまして」


「へ~~、前にお父さんの後ろで緊張してた行商人がもう孫か~~~」


「ははは、若いころはそうでしたね~~」





エルフはほぼ不死身といえるほど長く生きる


少し経てば数十年たっていることがほとんど、そんなエルフの当たり前






「ティティル様!ここにいましたか!」


「あら?隊長さん?」



話し込んでいると祭りの警備隊の隊長さんが走ってきた



「はぁ………はぁ………、もうすぐ王射式の時間ですよ」


「あっ!いけない!」


「あらあら」


「急いで行ってきなさい」



王射式とはお祭りのイベントの一つで、一番の弓使いである王の一射を見るイベント


会場にすぐに向かうティティル













「これより王射式を始める、王の一射をその目に刻み、自身の弓の腕を上げるように心がけよ」


「ではティティル様、よろしくお願いします」



「わかったーー」





的は4キロ先にある小さな的、こちらでいうダーツの的の大きさ


ティティルは弓を出現させ、矢を生成して構える





矢に光が集中する中、ティティルの足元に魔法陣が展開される





「ん?」


「あれ?」


「ティティル様の足元、何かある?」



周りの見物客たちは今まで見たことない魔法陣に疑問を持つが、的に集中しているティティルは気づかない



「………………っ!」


意を決して矢を放つ、矢はぐんぐんと加速し、そして的のど真ん中に命中する





「よし!あたt……」




「ティティル様!」


「王はどこに!!?」


「まさか転移魔法!?」


「ティティル、ティティルーーーーー!!!!!」






エルフの国から王が消えた





そしてその狙撃王は



























「いい感じいい感じ、案件配信からうちの事務所の知名度がどんどん上がって来てる」


「かかか!そりゃわらわのおかげじゃの、ほれ称えよ!崇拝せよ!あはははは」


「ははーーーディシア様~~!」


「うむ、苦しゅうないぞ正弥、かかか、一度言ってみたかったんじゃ苦しゅうない!」




「ガガルさん、次の配信についてなんだけど、少しいいかしら」


「ええ、大丈夫ですよ鏡花殿」






マーシャルコードは絶好調だった


ディシアやガガルが頑張ってくれてるおかげで事務所の知名度が上がっている


前回は酒造さんとの案件配信ができたし、いずれはディシアのほうにも案件が来るかもしれない





「とはいっても3人目の応募は来ないがな」


「うむ、というか龍錬よ、わらわやガガルのことがあるからそう簡単に応募などできないのではないか?」


「やめろ、前々から考えてたけど考えないようにしてたんだ!!」


「これが現実逃避というやつかの」




わかってはいる、もうディシアの時点で下手にほかのタレントを応募できない、異世界関連がばれたらVtuber事務所どころの話ではない




でも3人目は欲しい




「まあまた異世界人が来るのを待つしかなさそうだね」


「いやそう簡単に来るわけなかろうて」


「まあそうだな~」





そうやってフラグ建築を終えると



ピカーっと部屋の床が光りだす


「っきた!!」


「噓じゃろ!!?」


「まぶしっ、これが自分も」




不意打ちの光が収まり、目が慣れ始めてその場を見ると




「え?あれ?ここどこ?あれれ?」




エルフがいた





「「「エルフキターーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」



「ん?」


「?」




「ひゃ!?だ、誰!?」





現代人の3人は夢にまで見たエルフとの邂逅に喜び、異世界組は困惑し、中心人物のティティルは大混乱であった





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