第9話 ライブオンリー






ここはVtuber事務所『ライブオンリー』、Vtuberのために会社を興した糸日谷狭間(しびやはざま)が社長を務める


すべてのVtuberを推す彼視点のお話











「社長、結婚してください!!」


「だからオタクの俺は推しとそんなことはしないって!!」



求婚されているのは糸日谷狭間、ライブオンリーの社長


求婚しているのは糸日谷狭間がライブオンリーを興す切っ掛けになったVtuber「天使坂 ウリエ」の中の人で、名前は春日部莉緒(かすかべりお)






こうした求婚騒動は今ではライブオンリーはいつもの光景である



「だって言ったら私のために会社起こしてくれたようなものなのに、それで惚れないわけないでしょ!」


「それはファンがスパチャしたようなものだって」


「社長以外でこの世界のどこに配信環境のスパチャする人がいるんですか!!!」


「ぐぬぬ」


「社長は私のこと嫌いですか?」


「そんなことはない!」






そんな光景にほかの社員やタレントも


「早く結婚して祝わせてくださいよ」


「ファンからも早くくっつけと言われてるのに」


「コラボでいつものろけ話と結婚してくれない愚痴を聞かされる僕たちとファンの気持ちにもなってくださいよ」



と言われるほど











「そういえば社長、最近登場したあの子の配信見ました?」


「あの子?もしかしてマーシャルコードのディシアさん?」


「そう!その子の初配信やばかったですよ」


「確かにね、リアル配信で見てた僕もいつの間には頭を下げてたよ」


「ですよね!あの本物の魔王!って感じがえっと、なんていえばいいのか、とにかくすごかったです」


「言いたいことはわかる」


「やっぱコラボしてみたいんですよ、確か社長同士で面識ってあるんですよね?」


「まあね、タレントがいない間自分がタレントになるっていう考えに驚いて前から目をつけてたんだ、社長同士のパーティーなんかでも話したことはあるし、一応連絡先は交換したけど」


「じゃあそのつながりでコラボ依頼って流れには」


「今はだめだよ」


「え~~~」






「前にも言ったけど、君とのコラボはライブオンリー内で納めてるのは君の影響力のでかさが原因だ、むやみやたらに外部コラボはできないよ」


「ぶ~~~」


「ぐっ、かわいい………………そしてマーシャルコード側からいえば一人目のタレントなんだし、自分たちの力でやっていくべきだと思うし、黒森社長はそういう考え方をするタイプなんだ」


「そんなにその黒森さんのこと気に入ってるんですか?」


「僕にはない発想なのはもちろん、さっきいたパーティーでほかの社長はライブオンリーのコラボしてくれってのばっかだけど、彼は自分の力でやらないと意味がないって言ってたんだ」


「あ~社長の好みのタイプだ~」


「まあ今ではVtuberとしても応援してるよ」


「じゃあその黒森さん?の初めてのタレントのディシアちゃんはどうなりそう?」


「出だしは好調だからあと一カ月はそのブーストが続くと思うよ」


「問題はファンが離れないようにどうするかってこと?」


「正解、一ヶ月たって内容に刺激を感じられなくなったらどんどん過疎っていく、黒森社長の手腕に期待だね」


「なるほどね~~」





社長室で二人が話しているとノックの音とともに一人の社員が入ってくる



「失礼します、春日部さん、MVの撮影時刻になりましたので」


「あ、いまいきま~~す」



春日部はそのまま社長室を退出する









作業を再開する糸日谷はぼそりと口をこぼす


「それにしてもあの子は自分の影響力を少しは理解してくれないかな~~」








「日本人口の7分の3の登録者を抱えてるのに、私と結婚なんてしたらファンになって言われるか」




糸日谷はファンからの責任取れコールはノリと勢いによる発言だろうと勘違いしており、本当はOKと言いたいがそのせいで進めないでいる








「はぁ、どうしたものか」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る