異世界人をVtuberに

DE.STORY

魔王召喚編

第1話 プロローグ




「なんで誰も応募してこないんだ!!?」





Vtuberブームのこの時代、いろんなVtuber事務所が立ち上がりVtuberの箱として盛り上げ、収益を得ている


この俺、黒森龍錬(くろもりりゅうね)も大学卒業後に貯めてた金といろんなところからの支援でビル一棟を買い、事務所『マーシャルコード』を立ち上げ、内装を整え、設備も買い揃え、一階はコンビニに貸し出した


そして万全の準備を整えてからVtuberの中の人になるタレントを応募した








しかし応募者0である


理由は簡単、大手の企業がたくさんのタレントを抱え込んでいるからだ



一番だと『ライブオンリー』という会社はその中でいくつもの箱があり、その事務所のVtuberはテレビ等でもアイドル以上に出演しており、そのVtuberにあこがれてその事務所を目指すことが多い



ぶっちゃけ出来立てほやほや弱小事務所なんて見向きもされないと思い知らされた




結果自分自身がVtuberになり、タレントが来るまでの実績づくりしかできなかった







「龍錬くん、もっとSNSとかで発信していくとかどう?」


「ここでは社長と呼べ正弥、それにSNSで発信はたくさんしてるが他事務所のに潰されてる状況だよ」


「あ、ごめん、えっと他には、う~~ん」




この男は土御門正弥(つちみかどまさや)、俺の親友である


事務所を立ち上げる時に俺が誘った男、配信機材などに詳しくメカニックとしても役に立つが少し内気な性格


今俺がやっているVtuberの動画の編集もしてくれているし、Live2Dモデラーとしても役に立つ




「雇用条件を見直したほうがよさそうね」


「やっぱりそうですよね鏡花さん、でも収益の1割から削るのは会社的に厳しいですよ」


「やっぱり『ライブオンリー』みたいに0.5割で最新機材も配布、収益に関係なく固定の収入も高め、っていうのは事務担当からしても難しいわね」


「あそこはその他の収益がバカ高いですからね、テレビにラジオ、アニメ声優のゲスト枠なんかにも進出してますし、最近のエナジードリンクのパッケージにはあそこの事務所のVが載ってますし」


「う~~~ん、一階のコンビニ貸し出しだけじゃ難しいわね」





こちらの女性は土御門鏡花(つちみかどきょうか)、正弥の姉である


元は社会人で事務仕事で有能であったが上司とのいざこざで退職、そのあと俺と正弥が泣きついて何とかマーシャルコードに入ってもらった


そのあと知ったのだがこの人絵がうまい、絵師レベルであったため今俺がやっているVtuberの絵も描いてもらった、つまりVtuber的にママである


入社してもらう条件が『私がその事務所全てのママになるわ!!!』ということで今も事務仕事が終わればいろんなVtuberの原案を書いていたりする


ちなみにイケメンキャラが大好物






「そういえばVの原案ってどれくらいできてる?」


「原案までなら60くらいは」


「そんなにあるの姉ちゃん!?、ちゃんと休んでる?」


「大丈夫よ、合間にイケメンキャラ書いてるから」


「いや、そういうことじゃ」


「冗談よ、これでもちゃんとした会社にいたのよ、毎日8時間の仕事のうちにやってるから、睡眠も7時間取れてるし」


「ならいいけど」



実際絵師に依頼する負担が減ったのはありがたかった


本当は絵師としても給料を出そうとしたが、


『まだいらないわよ、この事務所が大きくなって余裕ができたらまとめてもらうから』


とのこと、マジで鏡花サマサマである







さて、現在全社員(3人)で会議をしているが、結果はいつも通り何も決まらずにいる



はぁ、どっかから面白いタレントが召喚されたりしないかな~~~~なんて























ここはとある世界


豪華絢爛な王都のような場所、そこではお祭りの真っただ中、パレードが行われていた



「ディシア様~~!!」


「お~~、なんとお美しい!」


「ディシアしゃま~~~!!」




そのパレードのど真ん中の乗り物の一番上にはこの国の国王


そしてその隣にはこちらの世界では中学生くらいの体に黒い恰好で頭に角のようなものがある少女が隣にいる国王と同じ形の椅子に座り、民衆に手を振っていた




「平和の象徴!魔王ディシア様!!」


「戦争を終わらせたお方!!」


「生で見れてよかった!!」


「キャーーーかわいい~~!」


「あれで魔術が最強クラスなんだよな?見た目って当てにならないな」


「そんなことよりも見ろよあの笑顔!俺に向けてくれてるんだぜ!」


「馬鹿言うな!俺だ!」


「あっ?」


「おっやるか?」


「黙れ馬鹿男ども!」


「にしても魔族とこうやって仲良く話せるようになるとはな」


「俺らも人間の食べ物を食えるとはな」


「そうだな、記念に酒を飲もう!」


「そりゃいい!人間の酒は飲んでみたかった!!」






人間と魔族が互いに手を取り合い、楽しい時間を過ごす


肩書を魔王とするその女性の動きによって










パレードは終わり、王城にてパーティーが行われていた


「改めてお礼を、あなたのおかげで平和な世界を作ることができそうだ」


「それはわらわも同じこと、互いの勘違いがなくなり、人間と魔族が共存する世界はわらわたちだけではできぬこと、あらためて感謝を」


「こちらこそ」





この国では今まで人間と魔族は敵対していた


理由は太古の昔からあるらしいが今の人間と魔族に知る人はいなかった


『魔族は人間を餌とする獣だ』『人間は我らを無差別に殺害する蛮族だ』


互いにこの考えしかなかった





しかしそこに異を唱える者がいた、それが現魔王であるディシアであった


「なぜそのような争いをする?喋ることができるなら仲良くできるじゃろ」


彼女は前魔王の娘であったが無意味な戦闘を嫌った




前魔王になぜ人間と敵対するのか尋ねるも返事はそういうものだからと返される



「いやそういうものとは、ただのこちら側の偏見ではないか!」


彼女は昔ながらの伝統とかどうでもよかった





後に彼女が魔王に挑戦できる2500歳になってからの動きは速かった






まず前魔王に挑戦し、一方的にボコって魔王の地位を奪った



そして魔王就任の際の一言は


「我は平和を願う、いちいち人間と戦争する気もない!よって人間との和平を結ぶために動く!反対する者がいるならかかってこい!!」



もちろん反対者はいたが全員ボコって解決した




それから人間国との交渉に向かった


その時の人間の王国は疲弊していた、常日頃魔族との戦争の為に神経を使い、物資や食料を消費していった


そのため国も資産がなくなり始めていた




そこで現れたのが魔王ディシアである




警戒はしたが、彼女からの和平の提案と支援物資の提供の話、手土産に持ってこられた金貨や食料などにも驚いたが


人間たちが一番驚いたのは魔王ディシアが人間たちに頭を下げたことであった




人間側はその謝罪に感銘を受け、前向きな対応を取るようになった




その後は互いの誤解を解き、互いの文化や技術を交換、交流することなど、一年かかった




そして今日、人間と魔族の民衆が互いを味方とする和平締結日となった











「一年か、魔族のわらわもここまで長く感じる一年はなかった」


「えぇ、ですがこれからは落ち着いた毎日になりますな」


「じゃな、ほれ王も飲め、これからの平和な日常を想像して語り明かそうぞ!!」


「もちろん!ですがあまり飲みすぎては酔いつぶれてしまいますよ?」


「かかか、魔王のわらわが酒ごときで酔うなど…いや、人間の作る酒はうまいからの~~」


「ははは、そうですかそうですか」


「というかおぬしはまだ硬い口調じゃの、もっと、こう、なんじゃ、そうフレンドリーに!気楽なしゃべり方をしよう!」


「え、そ、そうだな、ディシア」


「それでよい」


二人は親友の様に態度を緩める



「人間と魔族の平和な世界に乾杯」


「乾杯」


二人はグラスでいい音を鳴らすと一気にその酒を飲み、楽しく未来のことを語り合う








これはとある別の世界の出来事




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