姫騎士からは逃げられない ~脳筋ダンジョンマスターは彼氏ゲットの夢を見るか?~
石橋凛
第一話 チュートリアルからは逃げられない
両手で握ったロングソードを力強く振り下ろす。
臭くて醜い
崩れ落ちたゴブリンの死骸を乗り越えて、
半身を翻し、おかわり目掛けて渾身のケンカキックを叩き込む。
ゴブリンの膝の骨を砕く感触が心地良い!
態勢を崩したゴブリンの頭蓋目掛けて、もう一度ロングソードを振り下ろす。
ゴブリン達の息の根を完全に止めたことを確認しながら、残心。
:この巨乳エルフ、脳筋過ぎwww
:人型のモンスター相手に全くためらいがなくて草www
:メンタル強強過ぎて草生えるわwww
:どうしてこの娘は、チュートリアルからゴブリンケイブダンジョンを選択してるんだよwww
:それな
:普通の新人ウォーチューバーは、もっと楽なダンジョンから挑戦するんだよなあ
:そもそも、素人の動きじゃないだろ
:何か、武術の心得がありそうだよな
:中堅ウォーチュバーの俺より強そうに見える。ロングソードの扱い方は日本の剣術とはちょっと違うような?
:胸がでかいだけに、度胸も大型新人過ぎるぞ
:誰がうまいことを言えとwww
:美少女エルフの配信者は他にも沢山いるけど、この新人は色々な意味で規格外過ぎるwww
:でかい胸と尻以外は細っこいのに、何故こんなに馬鹿力なのか意味不明過ぎるwww
特別な
ボクの日本人としての名前は、
前世は、
武の頂点へ至ったエルダーエルフの姫騎士だったボクの
日本語では、性的魅力と表現した方がわかりやすいかもしれない。
ただし、女の子達にね!
騎士団の部下達は女性ばかりで、全員同じ女性のはずのボクにゾッコンラブだったさ!
そうじゃない、ボクの望みはそうじゃなかったんだ!
特別イケメンじゃなくても良かった!
ボクだけを見てくれるなら、外見や種族は勿論のこと年齢とかもあまり気にしなかったから!
男性と恋愛したかった!
愛しのダーリンとの間に赤ちゃんだって欲しかった!
ゴブリンやオークのオス?
見敵必殺だったけど何か?
チュートリアルでとりあえず、このゴブリンケイブダンジョンを選択したのも、ゴブリン
話が少し脱線してしまったね。
手足が多少細くても、ゴブリンを一刀両断にできる膂力は、
今から21年前に、
現在はダンジョンの外では大きな混乱が起きないように調整されているらしい。
ダンジョンから新しく入手可能になった資源により、地球上の生活は大きく一変。
日本国政府も、ダンジョン資源獲得のために様々な法令を整備していて、特にダンジョン省所轄のダンジョン資源採取者資格取得者には様々な優遇措置がある。
それは、ダンジョンの採取者専用エリアへの優先的立ち入り許可であったり、ダンジョン関連企業には企業規模に合わせて所定の人数の有資格者の雇用を義務付けていたりとか。
有資格者なら人気企業への就職の道が開けたり、独立して起業することも出来るんだよね。
モグリの無資格採取者がいないわけじゃないんだけれど、ダンジョン内で何らかのトラブルに巻き込まれても、何一つ保障されないので割が合わない。
ボクも高校在学中に、ダンジョン資源採取者資格には合格している。
心の友の
でも、今は
ボクのウォーチューバーデビュー配信を見てくれている男子達の存在が嬉しい!
ガチ恋勢カモン!
今なら最古参勢を名乗れるよ!
そんな純粋で尊い祈りで思考を巡らせながら、群がるゴブリン達を蹴散らして前へ進む。
苔むした石畳踏みしめて走り続けると、石造りの大きな扉が見えてきた。
:もうボス部屋までたどり着いていて草www。
:このままボスを倒したら、ようやく彼女の声を聴ける!
:どんな声なのか楽しみだよな!
:チュートリアルでボス倒すまでは、無言配信しかできないから普通は退屈なんだけど、この娘の無双っぷりは見てて痛快だった!
:早くボスを倒してもろて。
ここまで来たら、是非もなし。
慎重かつ大胆に扉を蹴破って室内へと飛び込む。
ボクの姿を見て呆然とする前衛の雑魚ゴブリンの群れへ突貫!
後衛に陣取るゴブリンシャーマンやゴブリンアーチャー達が慌ててボク目掛けて呪文や矢を放つ。でも、判断が遅い!
ボクに当たりそうな矢だけロングソードで切り払い、大いに混乱するゴブリンたちを目についた順番に斬り捨てて走りぬける。
:チュートリアルなのに、なんでこんなに敵の数が多いわけ?
:ボス部屋の殺意が高すぎる!
:チュートリアル配信初見勢かな? チュートリアルはウォーチューバーが強いほどボス部屋の敵が強化されるんだよ!
:彼女、全然苦戦してなくて草生えるwww
:チュートリアルでホブゴブリン見かけるのは、初めてかも知れない
:チュートリアルから撮れ高が多くて草www
ゴブリン共を斬って斬って斬りまくり、叩き潰して蹴飛ばして。部屋の奥で余裕ぶっこいていたホブゴブリン――他の
ホブゴブリンは、その赤い眼をボクへの殺意で更に充血させている。一声大きく吠えるとグレートソードを出鱈目に振り回しながら駆け寄ってくる。
さすがホブゴブリン、同士討ちとか全く気にしないね!
ホブゴブリンは、ボクの胴体を袈裟斬りで真っ二つにしようと狙ってたんだろうけれど、その動きはもう見切っている。
グレードソードとロングソードを軽く合わせることで軌道を反らしてやる。虚を突かれて隙を晒したホブゴブリンの首筋目掛けてロングソードを振り下ろす。
緑色の血しぶきとともに、ホブゴブリンの首が床に落ちる。
もちろん、血しぶきは避けて残敵掃討へと即座に移行。
:ホブゴブリンも鎧袖一触で草生えるwww
:音声オンキター!!
:早く喋ってもろて。
:そろそろコメントにも反応してクレメンス
:コメントには全く反応しないで、黙々と生き残りのゴブリンにトドメ刺してるのはちょっと怖いかも
:ゴブリン絶対殺すウーマンで草www
:ゴブリンたちを狩るだけで、全く採取してなくて草www
:チュートリアルでもこれだけ沢山のゴブリン倒してたら、ダンジョンからボーナス報酬貰えるんじゃね?
ゴブリンには前世では色々と苦労させられたので、念の為全員の頭蓋を踏み砕いていると。
脳裏に場違いなファンファーレが鳴り響き、続いて何者かの声が聞こえてくる。
「チュートリアルクリアおめでとうございます! 私は当ダンジョンのダンジョンマスターのゴブゴブ親父です!」
随分とノリが軽いダンジョンマスターの声に内心、警戒心を強める。
「チュートリアル報酬として、荷物を沢山しまえる魔法袋、ランダムでスキルを獲得できるスキルオーブ、任意の
「どれも不要。貴様との一騎打ちを所望する」
:報酬無視からの一騎打ち要求でめっちゃワロタ
:第一声が脳筋すぎてクソワロタ
:やたら奇麗な可愛い声でワロタ
:それな! この声だけでも推せるわ!
:贈り物、どれもハズレなしの有用品なのにちょっともったいない!
:俺も同じ立場だったら贈り物を選んで次のダンジョンに備えるなあ
「その意気や良し! 貴女の傲慢さが如何ほどのものか、私自ら見定めてあげましょう!」
光り輝く王冠に豪奢な衣装、そしてきらびやかな甲冑。
ゴブリンやホブゴブリンとは一線を画す筋骨隆々で見事な体躯。
キングゴブリンが眼の前に現れた!
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