ミケランの心のこり
喜島 塔
第1話「猫天原にて」
―― ここは、
虹の橋を渡ったネコちゃんたちが暮らす天空の楽園。幸せな猫生を送った子もそうでない子も、皆、幸せそうに暮らしています。
おや? あそこに見える三毛猫の子、なんだか、ちょっと寂しそう。どうしたのでしょうか? ちょっと、近づいてみますね ――
「どうしたのじゃ? ミケランよ。何か悩みがあるのにゃら、ワシに話してみなさい。そなたの助けになることができるかもしれにゃいぞよ」
もふもふの白い毛に包まれた、猫天原にいるどの子よりも大きいネコが三毛猫の子に話し掛けた。その透き通ったサファイアブルーの瞳に吸い込まれそうになりながら“ミケラン”という名の三毛猫は言った。
「ね……ネコ神さま! ご心配おかけしてしまってごめんにゃさい……あたちは、とても幸せな猫生を送ってきました。生まれてすぐに飼い主さんに捨てられてしまいましたが、その後、
そう言いながらも、ミケランのエメラルドグリーンの瞳には悲しみの色が映し出されていた。
「そうか。それは、まことに素晴らしいことにゃ! しかし、そなたの言葉とは裏腹に、そなたは何かを憂いているように見えるのじゃが、ワシの気のせいかにょ?」
ああ、ネコ神さまはなんでもお見通しなんだとわかったミケランは、正直に悩みを打ち明けた。
「あたち……空くんのことが心配にゃんです。あたち、何の前触れもにゃく、空くんが学校に行っている間に、眠るように虹の橋を渡ってしまったから……そのことで、空くんは悲しんでいるんじゃにゃいかと思って。『ありがとう』って、空くんに言えにゃかったことがあたちの心のこりにゃんです」
「にゃるほど。そういうことじゃったのか。そなたの事情はようわかった。もし、そなたが良ければ、そなたの願い叶えることも可能じゃが、やってみるかね?」
ミケランのエメラルドグリーンの瞳が満天の星空みたいに、きらきらと輝いた。
「はいっ! やってみます! ありがとうございます、ネコ神さま!」
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