ふりだしに戻る

光河克実

 

 先ごろ東京都内で行われた日本ウルトラ体育大会のマラソン大会のルールは凄まじかった。何故ならゴール寸前の42194キロの地点、つまりゴールまであと1メートルというところで大会役員の立ち合いのもと、サイコロを振る決まりだったのだ。

 そして1の目以外がでたら強制的にふりだし(スタート)に戻らされる。だから、運が良くないとなかなかゴールできず、何度走り直しても必ずサイコロを振り1の目がでないと永遠にゴールできない決まりだったのだ。

 だから大半のランナーはどんなに泣き叫んで抵抗しても屈強な大会役員たちに羽交い絞めにされて、そのままスタート地点に連行された。おかげで招待選手でなく、一般参加のランナーが優勝した。見事一回目のサイコロで1の目を出したのだ。優勝候補の筆頭だったSD食品の田中選手は3回続けて走ったが最後まで1の目が出ず脱水症状で棄権した。

 結局参加ランナー100人中でゴールまで完走したのは16人、その内15人は一回ないし二回目で1の目をだしたランナーだった。尚、最後の一人は4回めも1の目は出ずスタート地点に戻されたが、そこで息絶えた。すなわち人生のゴールに到着したのである。

                                   了

 

 


 


 

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