第7話

過去編


 「冗談、冗談!!」


 「本当のことを言って」


 「まぁ、半分は本当だから全部が冗談ってわけじゃないんだよ?俺、仕事のせいで夜遅くまで学校に残ってることが多いからさ」

 今こいつ、半分は本当って言った?



 私と同じ境遇なのだろうか。まぁ、彼の立場とか理由を鑑みると、私とは違うけど。

 

 「それで、春さんを見たの。」


 私は全く気付いてなかった。いや興味が無かったから忘れていたのかもしれない


 「服を見たら、同い年みたいだからさぁ、せっかく遅くまで俺にいるなら一回くらいは話してみたいなって思って」


 「なら話しかけてくれば良かったじゃないの」


 「話そうとは思ったんだけど、俺初対面の人と話すのが苦手だからさ。クラスの連中に聞いたんだよ。春さんってどんな人?って」


 「怖っ」

 いや、きもいわ。


「それでね、春さんのことを聞いて回ったら、おかしなことに気づいたんだ」

 私のリアクション関係なく話すな。


 「何が?」


 「みんな、春さんは家事で忙しいからノリが悪いって言うんだよ。」


 「・・・っ」

 知らなかったと言えば嘘になる。そんな風に思われてるだろうとは思ってたけど、やっぱり周囲からはあまりいい印象は持たれていなかったようだ。


 「だけど、春さんは学校に遅くまでいる。部活もやらないでね。家事で忙しいはずの春さんが、ずっと学校にいるのって不自然でしょ?」


 「・・・」


 「それで、俺は思ったんだ。もしかしたら何か事情があって家に帰らないんじゃないかなって」


 「・・・」


 「それで春さんが相談室に入っていくところを見たんだ」


 「今日の、見られてたのね」


 「うん、そう。そして相談室に入ったってことは、大抵が」


 「家族の問題」


 「・・・やっぱり、そうだったんだね。」


 「えぇ、そうよ。で、私の家族問題がどう繋がるの?」


 「実は俺さ、両親を亡くしてるんだ」


 「・・・っ!」


 「優しい親だった」


 なんで、それをわざわざ私に伝えるの?しかも、このタイミングで。


 「なに、アンタも子供は親を大切にするべきとか説教しに来たの?」


 「いや、違うよ。」


 「はぁ?」


 「俺の両親、ずっと虐待を受けていたんだって」


 「・・・」


 「でも昔から『親は大切にするものだ』って言われてきたんだって」


 「・・・」


 「お父さんもお母さんもその言葉を聞いて、『なんで子供を本当に大切に想ってくれる親と、子供を虐待するクズ親を同類に思えるんだ』『親を大切にしろ』なんて言えるんだってよく言ってた」


 「・・・」


 「だから、俺は親の愛情を知ってる。けど同時に、親から受ける痛みも知ってるんだ。だから凄く、物凄く偽善的な考えかもしれないけど・・・君のことが放っておけなくて」


 「・・・何よそれ」


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