第2話

大切なペンが、壊されてる。


 明らかにわざと壊された、踏まれた跡がある。


 そもそもこれはいつも大切にバックの中に入れてある。


 まさか、


ーーーーーーー


 その日は、メイド終了の1日前


 「どう??勇気」


久しぶりに話しかけられた。


 「どうって??何が??」


「ご主人様、私達と話せなくて寂しかったですよね」


「・・・」


ここ最近は最早寂しい所の問題じゃない。ただ辛かった。特に大切なお父さんとお母さんの形見を壊した。


 「もしかして、その為にみんなで俺を??」


 「そうだよ。勇気!!」


「私たちどうしてもご主人様と一緒に居たくて」


「うん」


一応三人とも一年以上は一緒に暮らした中だ。顔を見れば本当か嘘かは分かる。だから本当に、一緒に居たくてやったんだろう。


 だけど、流石にやりすぎだと思う。


 「ごめん、それよりこのペン壊したの誰か分かる??」


「えっ、それって大切にしてる奴じゃ」


「ご主人様、ごめんなさい私わからないです」


「知らない」


嘘、偽りのない顔。


 

 だけど、


 「そうなんだ」


  三人は申し訳なさそうに「はい」と答える。


  

 でも、俺は言いたいことがある。三人の気持ちは痛いほど分かるけど


 「ねぇ、俺だって三人にメイドに辞めさせるなんて嫌だったんだよ」

  何度も考えた、三人を辞めさなさい方法を。このままメイドでいる方法を。


「なら!!」 「私も辞めたくないですよ」 「うん」

 三人の意見は揃う。けど


「確かに俺が決断を決めたのは早まり過ぎたのかも知れない」


「まだ、頑張れば!」 「そうですよ!!」「うんうん」


「でも、それは確実じゃないし、俺はまだ高校生。分からないことがいっぱいある。」


「そうですが、」


「だから、無理な選択は出来ないし、君達や社員のこともある。だから俺はこれを選んだ」


「勇気」「ご主人様」「・・・」


三人は反発しないで俺のことを呼んでくれる。やっと分かってくれたようだ。


 やっと・・・


 【このペンは私たちだと思ってね。無くさないでよ】


「何度も言うけど、これは苦渋の選択だったんだ!!俺だって嫌だったよ!!けどこれが一番だったんだ。」


「勇気、泣いて」 「ご主人様、ハンカチを」 「・・・っ!」


「来るな!!」


 「ご、ご主人様」


「…勇気」 「…ゆう」


思わず、夏を振り解いてしまった。


 だけど、俺の気持ちは抑えられない。


「なのに、みんなして酷いよ。俺のこといじめて」


「それは、考えを改めてくれると思って」


「それだけで、変えられたらとっくにやってるよ!!」


「ご主人様」


「なのに・・・くそ!!」


「勇気!!」「ご主人様」「・・・」


 「もう、三人の振込は終わった。住所とかも分かるだろうし、携帯とかの契約はそのままだから、あとは好きにしろ!!」


勇気は走った。


三人は追いかけなかった。


 



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