第99話 二重記憶データ

~~これは、地球が爽やかさを取り戻した勇敢な人達の記憶である~~



 いよいよその日が、来たわ!今日は、みんな朝からソワソワしてんのよ。

 あたしなんか、アッツが起こしに来る前に起きちゃったんだから!


 今から、出発前の最終確認が始まるわ!

 夏野室長なつのしつちょうも、気合が入るわよね。



「いいか、みんな!今日が分かれ目だ!地球の未来は、みんなに掛かっている!気を引き締めてやってくれ。

 訓練も十分行った。君達は、もう一流の乗組員であり、パイロットだ!


 各自必要な物を準備して、30分後に第一艦橋に集合だ!」





 今は、朝の7時30分。朝食を済ませて集まったので、みんなは緊張の中にもエネルギーは充実しているみたい。

 アッツの冗談も好調だし、ミー先輩も思いの外血色のいい顔をしている。何かいいことがあったのかな?


 相変わらず校長先生とシーセンセは、イチャイチャしてる。


 教頭先生と事務長さんは、一緒にタブレットで動画を見ている。ひょっとして、あの動画気に入ったのかな?



 そう言えば、夏野室長は、コロナちゃんを連れて、どっかへ行ったな?また、秘密道具でも作ったのかな?






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「コロナ、例の物は準備できたかな?」

「もちろんよ、ナッチーの言う通りに作ったから大丈夫よ!」


「ああ、ありがとう!…………………………、ちょっと、いいか?………………」

「え?……あ!……ナッチー、どうしたの?…………あたしの手なんか握って?」

「う、ううん……なあ…………お前は…………誰だ?」


「…………………………」

布礼愛ふれあじゃないのか?」

「…………………………」

布礼愛ふれあなんだろ?」



「イタタタタタ……ナッチーってば、そんなに手を握ったら、痛いって!」

「だって……手を握ると…………」

「言ったじゃん、あの時。指紋認証は、1回コッキリって!…………だから、ウチはコロナなの……コ・ロ・ナよ!……分かった?」




「…………やっぱり、そうだよな…………ゴメン、コロナ……僕はきっぱり気持ちを切り替えるよ!ちゃんと、これからはコロナとして、一緒にやって行こう!」


「うん、ありがとナッチー!ウチも頑張るよ!」



「じゃあ、僕は先行ってるから、遅れるなよ!」








「……ふーっ!……まったくね!……そうそう!…………………」


 ガチャッ………


「だれ?」

「ごめんなさい、コロナちゃん!」

「なんだ、ミナちゃんじゃない。どうしたの?準備はできた?」


「………………………………………ねえ………………」

「何?どうしたの?」


「……お姉ちゃん……でしょ?……ねえ、そうでしょ?……お姉ちゃん!」

「何言ってんの?ウチは、コロナよ……」



「ううん……私は、分かるの!……あなたは、お姉ちゃんよ!」

「……………………………………………………………」

「ねえ、どうして黙っているの?……お姉ちゃん!わ、わ、わたし……うううっ…」




『フーちゃん、やっぱ、ミナちゃんは騙せないよ……』

『そうね、仕方ないわね………ミナ、ミナ……泣かないで、お願い……』



「……グスッ……やっぱりお姉ちゃんなのね!」



『ウフッ……分かっちゃうのね、さすが私の妹ね…………どんなに上手に嘘をついても、コロちゃんには成れないか!』

『いいや、そんなことは無いわよ。だって、室長なんかケロッと騙されてるじゃない。あんなに名前を呼んでるのに、ちっとも気が付かないんだから!』

『そうよね、昔はずーっと“ナッチー”って呼んでたから、違和感ないのよね!』



「え?え?え?……コロナちゃんもいるの?」



『まあね!……いい!このことは、ナッチーには、絶対内緒よ!分かった?』



「あ、ああ……は、はい…………でも、どうして?お姉ちゃんだって、言えばいいじゃない?」



『ダメよ、そんなこと言ったら、あの人は昔の記憶に縛られるわ!

 だって、私はもう居ないのよ……これからは、コロナちゃんと仲良くやって欲しいじゃない!』

『ウチも、室長と仲良くしたい……ウチのことを見て欲しいの』

『私はね、ただの記憶データなのよ……でもね、私もちょっとだけ思い出したいの!

 それで、コロナちゃんにお願いしたの』

『ウチもフーちゃんの気持ちが分かるもん!……だからね……ちょっとだけ協力することにしたの!』



「そっかー……分かったわ。私も協力します!頑張りましょ!」



『ありがとうね、ミナコ…………………』









◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「遅くなりましたーー」

「よし、これで、全員揃ったな!それじゃ、出発準備だ!」


 あれ?ミー先輩が遅れるなんて?…………それに、なんかスッゴイ嬉しそう。





(つづく)

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