第94話 解析、布礼愛のデータ

~~これは、地球が爽やかさを取り戻した勇敢な人達の記憶である~~




 うっわー、ホントに世界中だわ…………今じゃ人間が住めくなったような場所もいっぱいあるわよ。

 これ、どうやって行くの?

 冷却エナジーをセットするって……まさかリモートじゃできないでしょ?



 ああ、ようやく夏野室長なつのしつちょうが落ち着いたようね……






「みんな、すまん……席についてくれないか?」




 この大ホールの円卓に、座れっていうのね?

 何か、大事な話があるようね!

 正面の大型モニターを見ながらの説明か……布礼愛ふれあさんのデータって、けっこう重大な秘密があったのかもね!


 その当人の布礼愛さん……いや、コロナちゃんだっけ?今は……まだ、気を失ったままだから、ミー先輩が抱いて椅子に座ってるけど。

 ……あ、そっか、アンドロイドだから電源が切れてるって言うのかな?

 

 何回も起動のスイッチを押してもダメだって、室長は言ってるけど…………。

 どこがスイッチなのかな?……まさか、ONとOFFの二つがあるって言ってたけど…………まさかね。




「布礼愛のデータを得た今、地球の温暖化は、確実に阻止できる!……少なくともボクは、そう思っている!


 彼女の研究データによれば、冷却エナジーをセットするのは、この世界地図にある全部で10か所なんだ。


 1つは、ここの研究室。つまり虹の森高校の旧温暖化研究室のあった場所だ。


 後の9つは、次の場所になる。いずれも人類が生活していた頃の地名になるが、今はほとんどその場所に人類はいない。かろうじて、両極付近のみ今は生活圏として稼働しているくらいだ。

 場所は、次の9か所だ。


 1.北極点

 2.南極点

 3.ワイハのクラウエア火山

 4.アンドネシアのイワ・イジェン火山

 5.ツリのホジャリカ火山

 6.ゲアテマラのイカヤ火山

 7.ウタリアのビェスヴィオ山

 8.カロンビアのヤレラス火山

 9.ウイスランドのアイヤフィヤトラヨークトル火山


 ここに、冷却エナジーを打ち込めばいいんだ」



「室長!質問がありまーす!」

「なんだ、熱太郎君」



「はい。……そのー……“冷却れいきゃくエナジー”って、どうやって作るんですか?」



「ああ、それも布礼愛が解決してたんだ。

 ここに、10個の“氷の結晶”がある。……君達が一生懸命集めてくれたものだ。

 …………これを、“冷却エナジー抽出装置”にセットすると約3日でエネルギーカプセルに冷却エナジーが充填されるんだ。


3日で1個のエナジーカプセルができるんだ!だから、全ての“氷の結晶”を“エナジーカプセル”に変換するのには、約1ヶ月掛かる。


 この“冷却エナジー抽出装置”の設計図も布礼愛のデータにあったんだ。今、早速制作に掛かっているが、一週間ほどかかるだろう。」





「あのーー、室長?

 そのエナジーカプセルって、どうやって世界各地へ持って行くんですか?さっきの場所は、どう考えても、現在、人間が行けるような場所じゃないと思うんですが…………」



「うん、熱太郎君の言う通りだ。

 まず、エナジーカプセルと言っても、その辺の風邪薬のようなカプセルじゃないんだ。

 …………そうだな、ドラム缶を1本カプセル型にしたと思ってくれ。…………そして、それを世界各地の…………危険な場所に運ぶのが…………君達オンダンVの最後の仕事になるんだ!」



「え?オレ達が運ぶんですか?……世界各地に?……あわわわわわ」



「アッツ、しっかりして!何、気絶してんのよ!……こら!しっかりしなさい!」

「ふうっ……だって、マナ~、ドラム缶を運ぶんだよ~あんな重い物担いで、世界へ行くんだよ!南極だって、それに高い山もあったよ~…………ドラム缶だよ!ああああ~」



「あはははははは……熱太郎君、君は面白いな~……まさか、ドラム缶を直に担いで運ぶ訳がないだろう!まったく、愉快だ…………」



 夏野室長が、頭を掻きながら大笑いをすると、みんなからもつられて笑いがこぼれた。


 そんな笑い声に気づいたのか、コロナちゃんが、急にしゃべりだした。






「……まったく、モー。そんな訳は、ないのです!冷却エナジーは……」


「姉さん?姉さんなの?」



 コロナちゃんの話を遮るように、ミー先輩がコロナちゃんを抱きしめたまま驚いた顔で問いかけた。



(つづく)

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