第52話 思い出

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




 真夏美まなみは、母が亡くなった頃のことを思い出すといつも複雑な気持ちになる。もちろん、母が亡くなったのだから悲しいのは当たり前だ。

 しかし、同時にとても楽しかった思い出も蘇るのだ。




▲▽▲▽▲▽▲▽母が亡くなった頃の岡崎家……


 真夏美達の父親は、腕のいい医者で、みんなから頼りにされていた。いつ、どんな時でも病院に駆け付けるのは、当たり前だった。


 父親は、家族のみんなに、よく冗談でこんなことを言っていた。


「お父さんは、正義の味方なんだぞ!

 だから悪い病気が現れたら、いつでも人々を助けに行くんだ!

 正義の味方には、土曜も日曜も、昼も夜も無いんだ。だから、みんなにはこの防衛本部を頼んだぞ!

 正義の味方が、いつでも帰還できるように、任せたからね😉」


と、言っていつも笑っていた。だから、家族も胸を張って、父親が頑張れるように協力を惜しまなかった。






 ところが、母親が倒れた。


 熱中症だった。


 世界中の死亡原因の8割を占めるのが、熱中症だ。どんなに元気でも、どんなに若くても、気を緩めれば罹ってしまう。

 今の地球では、致し方無いところなのだが…………。





 正義の味方の役割は、変わらない。いつも、助けを求める人を救いに出かけるのだ!

 だから、防衛本部を守るのは、小学3年の真夏美まなみと小学1年の真冬也まとやだった。





「姉ちゃん、お腹空いたよ~……もうすぐ、夜になるよ!ゴハンまだ~」


「うん……今日は、お父さん帰れるかな~……なんかお菓子でも食べよっか!」


「うん、うん……ボク、チョコレートがいいなあ~」


「チョコレート?……あったかな~……昨日もチョコ食べてたわよね……もう無いかも?」


「えーえー……ヤダヨ―……お腹空いたよ~」





  ピンポ~ン!……ピンポ~ン!




「あ、誰か来たわ…………はーーい!今、出まーす!」



 ガチャ、ガチャ……

「どちら様ですか?」



「こんばんは!……マナちゃん、マーちゃん、ウチ行こう!一緒に晩ご飯食べよ!」


「あ!ミー姉ちゃん!……え?いいの?」


 玄関で見えた笑顔は、真夏実の1学年上の先輩であり、今まで家族ぐるみで楽しく付き合っていた上杉うえすぎ家の南中子みなこだった。


「いいのよ、マナちゃんのお父さんにも言ってあるから、大丈夫よ!お姉ちゃんも待ってるから!ね、早く行きましょ!」



「う、うん!ありがとう!……マーちゃん、ミーちゃんの家に行くわよ!」


「ホント!姉ちゃん!……やったー!ミー姉ちゃんの家だー、イヤッホー!」


「こら、マーちゃん、あんまり騒いだら、ダメよ!」


「大丈夫よ、マナちゃん!……嬉しいんだもんね、マーちゃんは!……そんなに喜んでもらえて、わたしも嬉しいよ!」


「ミー姉ちゃん…………ありがと!」



 母親が亡くなる前から親しくしていた上杉家だったが、変わらずに声を掛けてくれることに、小学生ながらも、嬉しかったのを真夏美まなみは、覚えている。




(つづく)

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