第51話 泣き虫は弱虫じゃない

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




『お母さん、ただいま…………

 今日はね、キャディーさんを助けたよ!

 あたしが、一人でやっつけたのよ…………

 がん……ばった……ズズ……んだから……ズー……クッスン……』




「なー、姉ちゃんよ~……いい加減に、母ちゃんの前で泣くの止めろよなー」


「ウッサイわね!マーちゃんったら。いいじゃない、他に誰もいないんだから」


「バーロー……オレが居るじゃないかよーー」


「いいじゃん、別にあんたが居ても……」


「だってよー、横で姉ちゃんに泣かれたら……オレだって……オレだって……」






「ははああん……ズズ……マーちゃんだって……ズ……泣いてんじゃ……ズイッ……ないのーー?ねえってばー……ズズッ……」


「ウッサイってば、姉ちゃん……ズズ……もう、7年も前だぞ……ズズ……」






『母さん……まだ、7年しか経っていないんだね…………あれから』








▲▽▲▽▲▽▲▽7年前の岡崎家……


『……お父さん、お父さん、大変だよ!お母さんが、お母さんが……

 倒れちゃったよ~』


『何!急いで救急車をお願いするから、お前達も急いで父さんの病院に来なさい……タクシーを向かわせるから…………分かったか、マナミ!』


『……う、うん、分かった!』





 真夏美まなみの父親は、医者だった。名医だったために、たくさんの患者を抱え毎日忙しい日々を送っていた。

 あの日も、緊急手術が入り、病院に泊まり込みだった。




 真夏美が、母親の異変に気付いたのは、朝だった。いつもは、煩いくらいに起こされるのに、その日はいたって静かだったのだ。

 もう少しで寝坊するくらいの時、真夏美は自分で目が覚めた。



 気になって、2階の自分の部屋から下へ降りて行くと、台所で母親が倒れていた。慌てて、父親に電話して助けを求めたのだ。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 真夏美まなみ達が病院に着いた時は、母親は静かにベッドに寝かされていた。白い布を顔に掛けられて……。


「…………おかあーーさーーんーーー………」


 真夏美は、病室で思いっきり泣いた。声が枯れるほど…………。





 それでも、彼女は弟の手をしっかりと握ったままだった。



 彼女の弟は、小学校の1年生で、何が起きたかまだよく理解できていなかった。泣きじゃくる姉をただじっと見つめていた。




 真夏美は、今でも弟に『姉ちゃんは、よく泣くからなあ~』と、言われる。そんな時、彼女はいつもこう言い返すのだ。



「いいじゃん、別に泣いたって!……その分、あたしは笑うことだって、たっくさんあるんだよ!……あたしは、ただ自分に正直なだけなのよね…………😭」


 真夏美は、いつも涙を流しながら、笑顔でそうやって弟に言い返していた。



(つづく)

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