第48話 地温研で仲間

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




 上杉南中子うえすぎ みなこは、孤独の中でも“地球温暖化研究同好会”を必死に続けた1年生の女子高校生だった。

 学力、運動能力、そして頑張り屋で姉想いの優しい性格…………普通なら学園のアイドルになれそうな逸材なのである。



 しかし、彼女は眼鏡めがねの奥に熱き眼差しを隠し、ただひたすらに研究に打ち込んだ。



「あ、ああの~……う、上杉さん…………たまには休憩……し、しましょうね……き、今日は……お、おいしい……ショートケーキ……持って来たのよ~……食べましょう……ね!」


「…………え、ええ…………」



 時々、オヤツをもって現れる胸山むなやま先生は、南中子みなこにとっては“オアシス”だった。彼女と一緒にオヤツを食べる時だけが、気の休まる時間だった。


 愛想も無く、ひたすら胸山先生のたどたどしいおしゃべりを聞くだけの時間が、彼女にとっては何事にも代え難かった。




「……ね、ねえ……う、うえ杉さん?……わたし、邪魔じゃ……ない?」


 胸山先生は、よく聞いてくる。よっぽど自分に自信がないのか、人に気を使い過ぎていると思うことがあった南中子は、精一杯の返事を返そうと思い始めていた。


「そんなことは、ありません!先生は、好きなようにおしゃべりしてください。

 …………それで、いいんです!」



 南中子は、胸山先生の中に、姉の姿を見ていたのかもしれない。あんなに性格が違っているのに、その優しさだけは凄く似ているような気がした。



「そ、そおお?……いい?……じゃあ……………」



 そんな、2人だけの同好会は、南中子が1年生の間、ずっと続いたのであった。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ミーセンパーーーイ!ヤッホー………あたし達を地温研ちおんけんに入れてください!」


「おお、マナ~…………久しぶりだな!元気だったか?」

「もちろんよ!よろしく、お願いしまーーーす!」



 南中子が2年になった時、地温研同好会に2人の後輩が入って来た。


「マナ?その子は?」


「えっと、アッツです!あたしとは幼馴染なの!アッツも地温研に入りたいって!」


「お、オレは、中村熱太郎なかむら あたろうで、です!よろしく、おねがいします!」

「何、アッツ?緊張してる?……大丈夫よ、ミー先輩は、とっても優しいの!」


「う、煩いぞ、マナ!……オレは、緊張してんじゃないんだ……今、とっても嬉しいんだ……こんな、美人の先輩と一緒に部活ができるなんて!」



「ん?アッツは、また始まった……ミー先輩は、真面目なの!あんたみたいなチャラチャラしてるのは、お断りなの!あんたは、あたしで十分なのよ!」



「あれ?マナ?……お前……ふーん、そう言う事なのか?」


「え?ミー先輩、何ですか?……そんなにジロジロ見ないでくださいよ!」


「ま、2人ともよろしく頼むな!」



 南中子は、以前、“マナ”こと岡崎真夏美おかざき まなみと親しくしていたことがあった。まったく友達を作らなかった南中子も、唯一の知り合い真夏美との再会で、思わず笑みもこぼれた。



「あ、あ、あ、う、うえ杉さんが…………わ、笑ってる!」


「もーシーちゃんセンセったら、ミー先輩は、笑うととっても可愛いのよ!知らなかったの?」



「うっひょおおおおーー!クールなところもいいけど、笑顔も最高だぜ!黒の水着が眩しくって目を開けてられないぜーー!」



「マナ?……こいつ、ちょっと煩くないか?……大丈夫なのか?」


「えっと、すみませんミー先輩……今、大人しくさせますから……」



  ゴン!👊!(╬▔皿▔)╯



「痛ってえええーな、マナ!…………は!はい😰、大人しくします{{{(>_<)}}}」




「おい、マナ……アッツは、お前の下部なのか?」


「あは、あは……はははははは……まあ、似たようなものかな~」




 今年の地温研同好会は、楽しくなる予感がした南中子だった。



(つづく)

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