第46話 南中子の決意!

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




▲▽▲▽▲▽▲▽5年前の上杉家……



「……おねえーーーちゃーーーん……おねえーーーちゃーーーん………」


 その日、南中子みなこは病院のベッドに縋り付いて泣いていた。救急車で運ばれた布礼愛ふれあは、すでに心臓も止まっていたのだ。


 家族は、警察から連絡を受け、急いで病院に駆け付けたが、そこにはベッドに横たわる布礼愛がいた。

 とても安らかな寝顔に見えたが、すでに冷たくなっていた。



「どうしてーー?どうするの?……ねえ!おねえちゃーん?……ねえってばーー!」


 泣きながら冷たくなった姉の手を握り、問い詰める南中子だったが、小学校6年生の彼女にはそれ位しか掛ける言葉が見つからなかった。



 両親も目にいっぱい涙を溜めていたが、静かに布礼愛の寝顔を見つめるだけだった。


 母は、それでも南中子をしっかりと抱きしめ、姉に縋り付く妹を支えていたのだった。










「ナッチャン?ナッチャン!…………そろそろお姉ちゃんを休ませてあげましょう?……きっと、いっぱい研究して疲れているのよ…………ねえ、ゆっくり…………静かに…………う、ウッ……ウウッ……」


「なあ、南中子…………布礼愛を安心させてあげよう……なあ……僕達ができるのは、それだけだよ…………」


 父親も優しく南中子に声を掛け、2人を後ろから抱きしめたのだった。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 南中子は、その日、泣きながら一晩中考えた。


『自分が何をすれば、お姉ちゃんは安心するんだろう?』















「そうか!わかった!…………やるよ、お姉ちゃん!……わたし、やるからね!」







 南中子は、それから人が変わったように勉強に集中した。


 それまでも、自分で勉強はしていたが、必ず難しい勉強になると姉が助けてくれた。

 でも、これからは全部自分でやらなければならないと思うと、必死さは違ってきた。



 クールな南中子になったのは、その頃からだった。使う言葉も変えた。いつも力強く、自分の考えをしっかり表現するようになった。

 友達は作らず、いつも姉の研究を追い駆けるような勉強をしていた。体も鍛えた。どんなことにも負けない体と心を目指したのだ。





▲▽▲▽▲▽▲▽1年前の南中子……



 そして、とうとう念願の虹ノ森高校に入学した。姉の研究室があったあの高校に通えることになったのだ。



 ところが………


「え?……どうして?……無いの?……先生、この学校には地球温暖研究室があったはずなのに!なぜなんですか?」


 入学式の日、南中子は担任の先生に問い詰めた。


「んー。僕は知らないなあ~。

 そう言えば、ずっと昔はそんな研究室があったって言ってた先生もいたけど、今じゃそんな研究をする部すら無いと思うよ…………。

 あきらめて、テニス部にでも入ったら?君、体も鍛えていそうだし、いい選手になるんじゃないかな?」



 南中子は、歯を食いしばって担任の顔を睨んで吐き捨てるように言った。


「わたしは、一人でもやりますから!」



(つづく)

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