第133話 【生配信回】闇冒険者に制裁を

"なんだこの配信?"


"配信者視点か"


「こんばんは。ファルコンと申します。今日は、今、迷宮ダンジョン周辺を騒がせている闇冒険者に制裁を加えに行きます」


"なに言ってんだこいつ?"


"ボイスチェンジャー使ってんのか"


「移動がてら、闇冒険者について知らない人のため、説明しますね」


 ファルコンは迷宮ダンジョンを移動しながら、闇サイトや、そこで依頼される犯罪行為について説明した。そうしていくうちに、ファルコンの声には怒りが滲み、語調が強くなっていく。


「つまり、逮捕やライセンス剥奪だけで済ますなんて生ぬるい! 徹底的に叩き潰して、二度とこんなことする気も起きないようにしてやらなきゃダメだ!」


"私人逮捕系、とも違うか?"


"やっちまえ。犯罪者に人権なんかねーよ"


 ファルコンは手配書を、カメラに映す。


「今日はこいつ、やなぎ智浩ともひろを制裁します。何度も女性冒険者の卑猥な写真を盗撮していた上に、逮捕しようとしてたパーティを奇襲して怪我までさせてる。あまつさえ、その場で強姦未遂だ。他のパーティが駆けつけなきゃ、どうなっていたか……。こいつはクズだ。叩き潰さなきゃならない!」


 ファルコンは、何度か魔物モンスターの襲撃を受けながらも単独で切り抜けていく。


 魔力探査を用いつつ、やがて迷宮ダンジョン第2階層の一画で野営している者を見つけた。


 2人組で、一方が休み、もう一方が番をしている。


 気配を潜めながら、双眼鏡で観察。手配書を確認。


「……見つけた。柳智浩です。それに、もうひとりも手配されてるやつだ。制裁してやる」


"お、いよいよやるか"


"1対2でやれんのか?"


"わくわく"


 ファルコンは真剣を抜いた。少しずつ近づいていき、間合いに入った瞬間、一気に踏み込んだ。


 番に立っている闇冒険者に、奇襲の一撃を食らわせる。


 さすがに警戒に立っていた相手だ。咄嗟に体を逸らされ、直撃はしない。だが切先は確かに相手を捉えていた。


"流血!?"


"こいつ、マジに切りつけたぞ!"


 ファルコンは戦闘を継続する。休んでいたほうもすぐ異変に気づき、武器を取って起き上がる。


 1対2だが、ファルコンの戦いぶりは一切不利を感じさせない。むしろ余裕すらある。相当のステータス差があるのだ。


"強い!?"


"一方的になってきた"


 ファルコンは急所にこそ当てないものの、容赦なく相手を斬りつけていく。間違いが起こって、相手が死んでも構わないとばかりの勢いだ。


 やがて相手はふたりとも倒れる。ファルコンは剣を収める。


"お見事だな"


"強え……"


"この強さ、モンスレさんじゃね?"


 ファルコンは倒れた闇冒険者を見下ろす。


「なに寝てるんだ。ここからが本番だぞ!」


"!?"


 ファルコンは倒れた闇冒険者の顔面を思い切り蹴り上げた。


 それだけで済まさず、何度も何度も、まるで無傷の場所をどこにも残さない勢いで蹴り続ける。


"おいおいおい"


"やりすぎじゃねーのか"


「や、やめ……もう、やめ……て」


 痣だらけの必死な顔で、涙ながらに許しを乞う闇冒険者。その顔面にさらに蹴りを叩き込む。


 その一撃で気絶した相手に、なおも暴行を加え続ける。


"容赦なしかよ……"


"バーサーカーじゃねえか"


 そうしてるうちに、もうひとりの闇冒険者――柳智浩がふらふらの体を引きずって逃げようとする。


 ファルコンはその背中に襲いかかる。


 飛び蹴りで転倒させるやいなや、背中にのしかかり、その後頭部へ拳を叩きつける。


 攻撃に耐えかね、柳智浩はうつ伏せから仰向けに反転して、両手を防御に回す。ファルコンは構わず、荒々しく拳を振るい続ける。


 柳の防御は役には立たない。ファルコンが叩きつけた拳が、腕の骨を砕く。防御を無くした柳は、ファルコンにされるがまま、顔面を数え切れないほど殴打される。


 飛び散った返り血で、画面に赤色が混じる。


 やがてファルコンは立ち上がる。もはや抵抗できない柳は、暴行が終わったのだと思い、安堵の表情を浮かべた。


 次の瞬間、ファルコンは柳の股間を全力で蹴り上げていた。


「うがあぁあああ――!」


"うげっ"


"いてえ!"


「柳智浩、お前がやったのは性犯罪だ。そんなに性欲が抑えられないか? 理性のない獣なのか? じゃあ大人しくなるように去勢してやる!」


 その言葉通り、今度は柳の股間を執拗に攻める。蹴り上げ、あるいは踏み潰す。何度も。何度も。


 始めこそ苦痛に悶えていた柳だったが、やがて動かなくなった。


 股間からは、まるで小便を漏らしたように血が滲み、地面に広がっていく。


"マジにタマ潰しやがった……"


"死んでない、これ? 死んでない?"


「……今日はこれくらいにしといてやる」


 ファルコンはカメラを手に取り、自分に向けた。血塗れの覆面が映る。


「おい、見てるか闇冒険者ども! 分かったか? 闇サイトの仕事なんてしたら、こうなるんだ! こいつらみたいになりたくなかったら自首しろ! 闇サイトなんか使うな! いいか、本気だからな! 闇冒険者は手当たり次第にぶっ潰してやる!」


"やべえよこいつ"


"いいじゃん、応援するぜ。犯罪者にはこれくらいやったほうがいいって"


"もはやこいつが犯罪者じゃん"


"モンスレさん、いつも優しいのになんで……"


"そのモンスレさんをここまでキレさせるのが悪い"


"いや、そもそもモンスレさんか、こいつ?"


"どっちでもいいよ。俺はスカッとしたし"


「ご視聴ありがとうございます。次回は、またいずれ……」

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