第54話 ステータスオープン、です
「結衣ちゃんって武器はメイス使ってるんだねっ、すごく重くて強そう」
「う、うん……。本当はもっと大きい武器がいいんだけど……まだユイには持てないから。だから盾も一緒」
「大きい武器が好きなの?」
「ユイ、体小さいから、大きい武器を持てば、アニメみたいで『
「あっ、そうだ。今のうちに、ステータス見せ合いっこしとこ?」
「はい。ステータスオープン、です」
ふたりは自分のステータスカードをその場で更新して、見せ合った。
紗夜のステータスは、以下の通り。
現在値の()内には、基礎値と、
第1階層の比較的薄い
実際には等倍で強化されているわけではないが、それでも、か弱い少女が、そこそこ鍛えた成人男性くらいの強さにはなる。
一方、結衣のステータスは……。
「わあ、すごい! あたしが勝ってるの、
「うん、力こそ、パワー……だから」
本人の言う通り、見事なまでのパワー型。
可憐で小柄な女の子だが、
「なので……
「うん、わかった。やってみるね」
ぽん、と腰のクロスボウを叩いてみせる紗夜だった。
それから結衣は、興味深げにおれのほうを見上げた。
「あの、良かったらモンスレさんの、ステータスも見てみたいです……」
「あっ、あたしも気になりますっ。嫌じゃなかったらぜひ見せてください!」
「えーっと……まあいいか。他の人には言わないでね?」
おれもその場でステータスカードを更新して、見せてあげる。
すると、紗夜も結衣も、一様に固まった。
「あの、一条先生? これ本当ですか?
「むしろ……素の能力がちゃんと普通の人なのが意外、です……。モンスレさん、このステータスで、あのグリフォン倒したんですよね……?」
「そ、そういえばそっかっ」
ふたり揃って、「うわぁ」とばかりに一歩引いた。
「やめてよ引かないでよ。割と傷つくからね、それっ」
おれはステータスカードを引っ込める。
「おれやフィリアさんは、日本政府の依頼でずっと前から
ということにしておく。丈二が作ってくれた『設定』だ。
おれやフィリアの強さに疑問を持たれたときには、こう答えることに決めたのだ。
「へええ、前から政府と……って、先生ってやっぱりすごい人だったんですね」
「エージェント……。かっこいい、です」
「他のみんなには秘密だよ?」
と、フィリアの真似をして唇に人差し指を立ててみる。
「あと、秘密と言えば、ステータスは基本的に他人には見せないほうがいいと思うよ。あんまり考えたくないけど、自分より弱い相手探してなにかしでかそうとする悪い人もいるかもしれない」
「あっ、そっか……。そういうことも、あるかもしれないんですね……」
「知識や経験で能力差を覆せはするけど、能力値の低いほうが不利なのは変わらないからね」
「はい……気をつけます……」
ふたりが神妙に頷いてくれたところで、おれはフィリアにも目を向ける。
「おれたちも、マッチングのときにはステータスの詳細は伏せるように気をつけないといけないね?」
「そうですね。パーティが成立するまでは互いのステータスは明かさないよう徹底いたしましょう」
言ってから、フィリアは胸元で手を重ね、にこりと微笑む。
「ところで動画の構成がまとまりましたので、そろそろ撮影を始めてもよろしいでしょうか?」
なんか口数が少ないなー、と思っていたが、ずっと考えていたのか……。
「はい、あたしは大丈夫ですっ。結衣ちゃんは、どう?」
「は、はい。や、やります……っ」
◇
「はい、始まりました。モンスレチャンネルのフィリアです。今日はとっても可愛いゲストのおふたりと一緒に
フィリアが引っ込むと、代わりにまず結衣がカメラに入ってくる。
「お、お、お邪魔します……。ゆ、ユイちゃんネルのユイ、です……! 今日はこれから――じゃなくて、あの、ユイは前衛で、えと……得意武器はメイスですっ。ちょっと重いけど、こうやって――ひゃうっ!」
メイスを振り上げたところでバランスを崩し、すてーん! と転んでしまった。
「あうぅ……カット、してください……」
結衣は顔を両手で覆いながら、呻くように懇願した。
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