第47話 ステータスカード
「ステータスカード? ステータスと聞くと、テレビゲームを連想してしまいますね」
「実際、RPGに出てくるステータスを思い浮かべてくれていい。それを可視化できるカードだ」
サイズはキャッシュカードや免許証などと同じだ。
「さっそく試してみましょう」
フィリアは持ってきていた針で自分の指を刺す。出てきた血のしずくを、ステータスカードの規定の位置に押し付ける。
それからステータスカードを手に取り、自分の頭から腕、胴、足へと滑らせるように移動させていった。
「今の動作で、カードにわたくしの能力を読み取らせました。ご覧ください」
フィリアがあらためてカードを置き、しばらくすると文字が赤く浮き上がってくる。
「この数字は……?」
「使用者の能力を数値化したものです」
フィリア曰く、カードには魔力回路というものを刻んでいるのだそうだ。
こちらの世界でいう電子回路の魔法版のようなもので、魔力回路に魔力を供給すると、組まれた回路通りに自動的に魔法を発動させる。
おれが
「このカードは、使用者の血と大気中の
「左側の数字が今の状態だ。
「
おれたちの説明を受けて、丈二は興味深げにステータスカードを手に取り、まじまじと見つめた。
「……他の項目はわかりますが、この魔力というのは? このカードの起動にも魔力が使われているとのことですが……。魔力というと魔法のイメージなのですが」
「そのイメージで合ってるよ。
ごくり、と丈二は息を呑んだ。驚きというより、好奇心の顔。
「ではやはりあの動画でグリフォンを撃ったのは魔法でしたか。訓練次第で誰でも、というと、それは例えば私でも?」
「充分に
「それは……心が躍りますね。魔法には詠唱などは必要なのでしょうか?」
「詠唱は必要ありませんが、意識を集中するために短く掛け声を上げる方はいらっしゃいます」
「おれがそのタイプだ」
「では、どんな言葉でもいいのですね。それはいい。少年時代を思い出します。実家からノートを取り寄せなければ……」
「ノート?」
丈二はハッとして、小さく咳払い。
「失礼。私的な話でした。ともかく、これで各冒険者の能力は即座に把握できるわけですね」
「そう。たぶん第1階層の
「
「そこで、だ。これはフィリアさんのアイディアなんだけど、冒険者たちの成長を促す意味も込めて、能力に応じて仕事を斡旋する制度を作ってみてはどうだろう?」
「いわゆる冒険者ギルド、ですか?」
丈二はあくまで冷静だが、どこか楽しそうでもある。
そんな彼の質問に、フィリアが返答する。
「はい。
ちなみに冒険者のランク制もおれの時代にはなかった。いいシステムだ。
「いいですね。今のところ、冒険者の方々は獲物を狩って稼いでばかりですが、本当はもっと色々な仕事をお願いしたかったのです。これなら頼みやすい」
「ついでに、実力以上のことをしようとして、引退や死亡する例を減らせる」
丈二は上機嫌にうんうん、と頷く。
「面白くなりそうです。現行のやり方を、大きく見直しましょう。一条さんが提案してくださっていたパーティ制も、一緒に採用いたします」
「期待してるよ。法改正には時間がかかるだろうけど」
「いえ、それほど時間はかけません。今でもある程度は融通が利きますので。どうしても改正が必要なところは、試験運用とでも言っておけばいいのです。やっているうちに法律が追いつきますよ」
「思ったよりやり手なのかな、丈二さん?」
「いいえ、私より上の者たちこそ、あなたのご意見を尊重したがっているのですよ」
そして丈二はにやりと笑った。
「まあ見ていてください。すぐにやってみせますから」
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