第5話 琴美の存在

 まさか、あの友奈から声かけられるとは。緊張して何も話せなかったよ。そうだ、今日これから会う英二に自慢でもしてやろう!!


 それにしても、何と言うかとんでもないオーラ出てる娘だよな。スカウトとかされてもおかしくない。そんな同級生がいるってそれだけでも凄いことなんだけど、何と言うか、俺には高嶺の花過ぎるね。緊張しっぱなしで…これも疲れる。



※カラン、コロン〜※ この喫茶店、懐かしい響き!!



※いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?※



あいつ来てないじゃん!


【待ち合わせで、もう一人来ます】



※窓側の席でよろしいですか?※



【はい、ブレンド一つお願いします】


先に来るのが常識だろ!!


人を呼んどいて、まったくもう!!



※お待たせしました。ブレンドになります※



 懐かしいな。ここ。当時はここでのんびりなんて、そんな少しのゆとりも無かったな。


 学校、バイト、バイト、寝る。そして宿題。とんでもないハードな日々を送っていたな。若いから出来たんだな。



※カラン、コロン〜※ 



※いらっしゃいませ※



【いやー、遅れた!!やっぱ、ここ懐かしい〜】


【遅れるってどういう…で、何頼む?】


【同じもので!!】



※ブレンドですね※



【英二!、ちゃんとメニュー見て言えよ!!】


【言ってみたかったんだ。ドラマとかさ言ってるじゃん!!同じもので通るじゃん!!】


【……それは置いといて…で、話は?】


【これ見てくれ】


【アルバム?わざわざ持ってきたのか?】



※ブレンドお待たせしました※



【いい香りだ〜、うん、美味しい!!】


【それで、このアルバムがどうした?】


【いないんだよ…それが】


【誰が?】


【琴美】


【風邪で休んでいたんだろ?】


【何処にも写って無いんだよ】


何それ?何処にも?


【何か理由あるんだろうな。たいした問題じゃない。誰が写ってるとか気にしたことない】


【おかしいと思わないか?みんな琴美のこと知ってるだろ?お前の琴美の記憶は?】


【遅刻する娘。本人に言うと怒るけどな】


【俺もだよ】


【だからさ、何の問題も無いって!!】


【それがおかしいって、それ以外の記憶がないんだ。この前も女子達とへんな距離感あったろ。誰かと話していたか?孤立していたって訳ではないけどさ。なんとなくへんな距離感とかさ】


【それは解らないけどさ】


琴美がそれでどうなったと?俺にはイミフだが。


【なぁ、零は琴美ってどこで知り合った?】


【学校だろ、同級生だろ?】


【昔のことではなく最近は?】


最近?


【昨日以外では、俺が🐕の散歩の時に会って、そうそういきなりタメ口でさ。不思議と🐕懐いてて、男性には懐くけど、女性に懐くって珍しいからさ、よく覚えているよ。なぁ、おかしいことないだろ?】


【ん~何か違和感あるんだよな~】


【じゃ、今度三人で会ってみるか?その時に聞けばいい。それで問題解決。あまり昔のこと聞かれたくないかも知れないから様子見てさ。怒らすなよ。念の為に言っておくけど、俺の彼女だからさ】


【解ったよ、でもさ、アルバムに何処にも写って無いって、不思議だよな~そんなことあるのかも知れないって言われたら確かにって思うけど、それ以外の記憶がないってのもな〜】


 英二はそこが気になるらしい。だいたい人の記憶なんて曖昧だと想うがな。


 俺は昔の琴美の記憶はない、今の琴美と相性抜群だから、過去は気にしない。英二とはそこで分かれたが、仕事前の休日の夕方って憂鬱だ。


明日から仕事。嫌だな〜


気晴らしゲーム。🐕を抱っこしながら、ログイン。


ログインしてる…いつもの人。気まずいけど、


とりあえず俺から、


※こんにちは※


※こんにちは!!この時間からって珍しいね※


※友達と会ってました※


※なんか言葉よそよそしい…で、彼女さん?※


※いや、友達、くされ縁って感じの※


※そう。じゃ、そこに戻るから始めよう※


※コンビ続けてくれるの?※


※私とは嫌なの?※


※そんなこと無いって!!よろしく※


※はーい、じゃ、スタート※


琴美のことは、とりあえず気にしないでおこう。


やっぱ楽しいな、この人とのオンラインゲーム。



※ワンワンワン🐕※



【零、早く起きなさい!!!仕事でしょ】


【はいよ〜】


【全く前日の夜遅くまでゲームしてるから】


【眠くないって、憂鬱なだけだよ】


【とにかく早く食べてちょうだい】



憂鬱だ〜これ、つらすぎる。



駅までの道のり、憂鬱…あー、サボろう!!


なんて、そんな風になんて言えたら楽なんだけど。


 あれっ?前歩いてる娘って、友奈か!!昨日偶然あったからよく解る。声をかけるべきか、スルーすべきなのか?とりあえず少し離れて、うっ、バレた…


【あれ〜零くん!同じ駅なんだね。途中まで行こう】


【あ、うん、良ければ…】


【何良ければって?面白〜】


【ごめん…慣れてなくて】


【女性に?凄く素敵なお姉さんいるじゃん】


【会ったことないよね?俺の姉貴と】


【学校の先輩でしょ!有名だよ。知ってる。というよりもほとんど知ってるんじゃない?あれほどの素敵な人そうそういないよ。お姉さん元気?】


【会ってないけど、出張続きで家にいないから】


 そんなにか。まぁ、普通よりやや綺麗にだとは思うけど。そんなことよりも友奈のほうが素適だ。


何か話す内容は、何かないと、気まずいな。


【友奈さん…あのさ、琴美…いや、琴美さんって覚えてる?】


【何かヘンだから友奈って呼んでよ。それで、琴美だっけ?えーと、うーん、あっ!遅刻の娘】


やっぱそれか。遅刻イメージ。


【それ以外に、何かある?】


【んー、ごめん、解らない。会ってなかったから】


【そうか。ありがとう】


【琴美がどうかしたの?】


 彼女ってなったとは言わない方がいいのかな。噂広がると嫌な娘かも知れないから。


【ごめん。何でもない。ありがとう、さぁ、急ごう。乗り遅れる!!】









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る