第2話 出逢い

 私が新卒で赴任したのは、地元の高校でした。今も別の高校ではありますが、英語の教師を続けています。

 当時の私は、先程言った通りで、都会の生活に疲れ果て心身共に参ってしまい、日々の生活に〝価値〟を見い出せない時でもありました。その頃に、出逢ったのが彼だったのです。


 清純君は、私が初めて担任した二年生のクラスの転入生でした。ご両親の仕事の都合で一年間だけ祖父母宅へ移り住む事になり、半ば無理やりこの街に来たと、当時の彼が言っていた事を思い出します。

「ここ、ほんと何も楽しい事ないよな」

 あまり周りの生徒と馴れ合う事を好まない彼を、私はどこか自分自身と重ね合わせていたのかも知れません。

「そうね。貴方が住んでいた都会みたいに娯楽もないし、退屈でしょう」

「文香ちゃんは、ずっとここに住んでるの?」

「ふみかちゃん⁈ ……私、一応教師なので、先生って呼んでください」

「はーい。じゃあ……文香先生。で? ずっとここに住んでるの?」

「……大学の四年間は、この街を出ていました。帰ってきたのはほんの一ケ月ほど前」

「ふーん。なんで戻ってきたの? こんな何もない所に」

「寧ろ何もないから戻ってきたの。……都会の重圧から逃げ帰ってきたのよ」


 清純君の学ランを少し着崩す姿は、学校内でも浮いた存在でした。髪色も茶髪でしたし、左耳には、いつも金色のクロスのピアスが揺れていて。年頃の女の子たちは当然色めきましたし、ある事ない事を噂していました。

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