本を積む
@assembly
第1話
放課後、俺はいつものように本屋をうろついた。
別に、本を探していたわけではない。
俺が探していたのは、文芸部のミドリだ。
ミドリには貸しがあった。
今日こそ、それを返してもらわなければ。
俺は本屋を三軒ばかり回った。
ミドリはどこにもいなかった。
疲れたので公園に寄るとグリーンがいた。
グリーンはミドリの妹である。
「グリーン」
「あら、先輩じゃないですか」
「ミドリがどこにいるか知らないか」
「知りませんよ、お姉ちゃんのことなんか」
グリーンは走り去った。
それにしてもミドリとグリーンは似ていた。
瓜二つだった。
双子みたいだった。
俺はしばらくベンチで休んでから、四軒目の本屋へ向かった。
そこはとても古い本屋で、明らかに傾いていた。
店主の近藤は煙草をくわえていた。
火事になったらどうするのだろう。
「近藤さん」
「いないよ」
「へ?」
「ミドリちゃんなら、ここにはいないよ」
その口調に俺は疑念を持った。
何か隠しているように感じられたからだ。
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