27:フォン・ダン・ショコラさん?
なんだかなぁ? と思いつつも、偽ヒヨルドの正面に座り、いただきます。
皮面をパリパリに焼いたチキンと、ハニーマスタードソース。完璧なる組み合わせ。
何にでも合うマヨネーズをベースに、ちょこっとお醤油。マスタードの辛味と酸味をはちみつがまろやかにしてくれる。
個人的にはごまドレと二大巨頭だ。
バターをたっぷりと染み染みさせたパンも最高!
塩分過多だとか知らない。がぶりと齧り付くのはマナーが悪いとかも知らない。美味しいは正義!
「んーまい!」
「……ん」
「「ワフゥワフゥ!」」
足元でフォン・ダン・ショコラが何やら言っているけど無視無視。大体において『それ食べたい』みたいな感じだろうし。
「やらん」
ほらね。って、偽ヒヨルドにくれって言ってたの? フォン・ダン・ショコラ、強いわね。
「このソースは何だ?」
「ハニーマスタードソースですよ。主に鶏肉系に合うかなぁ。唐揚げとも相性バッチリ」
「…………」
偽ヒヨルドがジーッと見詰めてくる。ウサ耳ひょろモヤシのうるうる瞳で。ちょっと可愛いなぁと思っていたけど、よくよく考えたら、中身って魔王じゃないの。
銀髪ストレートロングで、山羊だか羊だかのくるんとした黒い角を頭に生やした超絶イケメン。それが、うるうる瞳で見詰めてきてるの!?
――――え? 何この状況。
「ソース、欲しいの?」
「ん。いっぱい」
いっぱい欲しいの!? いっぱい!? か、かわいい……なにそれ! 可愛すぎる!
魔王の可愛さに悶えてしまったけど、今世での目標を思い出した。魔王の胃袋陥落メシのリストに入れてたんだった! めちゃめちゃ成功してるんだけど!? あれ? 魔王って実はチョロいの?
「いいけど。ところで、人の家で何してるの?」
「ん? 店に来たら休みだった」
店内が真っ暗で今日休みだったことを思い出したらしい。帰ろうとしたら、フォン・ダン・ショコラが居住スペースに来ていいと言ったらしい。ヲイ、フォン・ダン・ショコラ。
ただ、私は寝てるから、飯を食いたくばここで待てと。ヲイ……フォン・ダン・ショコラくん?
私がいつも飲んでいるものはそこにあるから勝手に飲めと。ヲイ? フォン・ダン・ショコラさん?
「今日は、特に急ぎの仕事もないから、ここで書類仕事をしていた」
「なるほど?」
なるほど? で納得は出来かねるけども。
フォン・ダン・ショコラは今日からしばらくドッグフードにしよ。
「「クキュュュュン!」」
無視でいい。
「ところで、拡張の申請を出したのか?」
一瞬何の話かと思ったけど、ペラリと申請書を見せられて理解。
「え? あ、貯蔵庫ね。うん! 色々と新メニュー考えてたんだけどストック置場が確保できないから保留してたの」
「新メニュー」
「うん。ササッと食べられる丼ものとかいいよねぇ」
こう、お箸でガツガツかき込めるようなものこそ、定食屋って感じ。
「今すぐ拡張する」
――――は!?
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