風光る

山乃そら

第1話

 学校の窓の外の景色は、青空に校庭の木々の新緑が映えて綺麗だと思った。念仏のように聞こえる先生の授業も考えこんでいる今の私にはいいBGMかもしれない。

 考えこんでいる内容のほとんどは「この世界からいなくなりたい」というものだ。変換すると死にたいということになるのだろうか。死だけはすべての生き物にあたえられた平等な出来事である。

 いじめられているわけではないが、世の中に嫌気がさしているというのが理由なのかと自己分析している。

 己だけの正義 自己顕示 悪意 無関心… 。自分も何かに感心があるわけではない。ただこの世に生きている意味があるのかわからない。この世ではないどこかに帰れば穏やかに過ごせるのだろうか。


「優ちゃんのお弁当、カラフルで美味しそうだね。一緒に食べていい?」

 母が張り切って作った弁当を褒めてくれたのは同じクラスの舞衣だった。教室の窓の近くで食べていた私の隣に座り、自分のお弁当を食べはじめる。

 中学三年生になってもクラス替えがなく、お互い居心地がいいのかよく一緒にいる子だった。でも私は舞衣のことをどこまで知っているのだろうか。教室の中の舞衣しか知らない。

 「優ちゃんは進路決まった?なにかしたいことはある?」

「どうしたの?真面目なこと聞くね。」

「お母さんに外国に行きたいって言ったら怒られちゃった。」

 半分本気で半分冗談だったんだという舞衣の本当の気持ちはわからない。

「いろんなところに行ってみたいの。見たこともない景色が見てみたい。地球は小さな惑星だけど、私もその小さな一部しか知らないんだよね。」

 キラキラと輝く瞳ってこんな眼なんだと思ってしばらくじっと見ていたら舞衣が慌てて謝った。

 「ごめん。変なこと言って。」

 違うんだ。ちょっと見惚れていただけなんだ。後で私はこの時舞衣に言葉を返してあげなかったことを後悔する。

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