出遅れ男と愛しの
焼き串
出遅れ男と愛しの
何事も始めが全てを左右する。
僕がメロンパンを口にしようとすると
「始めが全てを、ねえ」
「そうだ。例えば徒競走やレースでもスタートダッシュが肝心だろう?」
我が意を得たとばかりに級友は語り出した。
こうなった彼は止まらないと知っている。黙って先を
「いくらその後、
「全ては後の祭りだと」
「そうだ。最初の遅れは後の
イチゴオレの紙パックを握り、いよいよ彼は
「哀れな話だとは思わないか? 運命の
「そうだね。気の毒だと思うよ」
「さすが我が友人だ。よくわかっている。だからここは」
「でもさ」
話を続けようとする級友を制して僕は言った。
「単に購買で好物のメロンパンを買いそびれたという話をそんな
彼はやたらと
「た、単にとはなんだ! 俺としてはかなり重要な件だぞ!」
「いやまあ、君が甘党なのは知ってるけどさ」
「そもそも君が出遅れたのも、授業中に居眠りした件で怒られていたからで。完全に自業自得だよね?」
「それを言ったらおしまいではないか!?」
級友から、さっきまでの勢いは消えている。
いつもの微妙に残念な彼に戻っていた。
「違うんだ、昨日はついつい遅くまで読書に精を出してしまって。これが実に興味深い内容で」
「何でもいいけど、もう食べていい? 僕もお腹減ったし」
しどろもどろに言い訳を並べる彼に
そして返答は
「……ごめんなさい。一口わけてください」
「素直でよろしい」
向こうのカレーパン一口と交換で手を打った。
「しかし、いいのか?」
「何が?」
昼食を終え、教室に戻る途中で彼が言った。
「いつもこうして、俺とばかり昼飯を食べているが。たまには別の友達と食べたりしなくていいのか? 付き合いとかあるだろう?」
その顔は先程と違い、こちらを純粋に心配する表情をしていた。
彼の根っこにある人の良さが現れていた。
だからこそ僕は笑みを浮かべる。
「君が気にすることじゃないよ。その辺は器用にやっているから」
「そ、そうか? ならいいが」
「それより早く行こう。昼の授業、遅れちゃうよ」
彼を
「……僕が一番いたいのは君の傍だから」
たった一言、小さな声で呟く。
「何か言ったか?」
「何でもないよ。ほら行こう」
僕は制服のスカートを
出遅れ男と愛しの 焼き串 @karinntoudaze
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