見つかっていないだけ

男気

短編 見つかっていないだけ

夢で見たことが実際に起きるという事は、何回か経験がある。

いわゆる正夢というものだ。

実際は、過去にやったことに多様なことを繰り返しているだけと言った

しょうもないオチで、自分には予知夢なんて特殊能力はない。

そう思っていた・・・。


「櫻井沙羅」は、いつも四番車の中央の扉がくるところで電車を持っていた。

俺はその娘の後ろに立って同じ様に電車を待っていた。

決してストーカーではなく、俺と沙羅は同じ高校の同級生で、

家も近かった。恋人関係とかではなく、あったら軽く挨拶する程度だ。

沙羅どう思っているかわからないが、密かに好意を抱いている。

「沙羅おはよう。」

おそらく部活の先輩であろう、長身の男子高校生がやってきた。

細身だが、ちゃんと筋肉があることがわかる体つきで、悔しいが確実に俺よりもイケメンだ・・・。

「おはようございます。」

沙羅は、そのイケメンの先輩に対して笑顔なのだが、気のせいか、

体がこわばっている気がした。

妙に距離が近く、スキンシップが異様に多い。

セクハラで訴えられてもおかしくないぐらいだ。

「人がいるから・・・。」と小声で言う沙羅を見て、

腹が立つよりも、気持ちが悪くなってきた。

早くこの場から離れたいと思っていたら、電車が来た。

この日はずっとモヤモヤしたまま1日が過ぎた。

***

沙羅たちが通っている高校は、サッカーの強豪校で、

部室練も他の部活は共同で一つの棟を使っているが、

サッカー部は別で専用に用意されている。

サッカー部の部室練は別で後から建てられたため、

他の部室練と比べると校舎からかなり離れたところにある。

他の部活では使われない事と、校舎から離れた場所に位置することで、

本来の使われ方とは違う使われ方をしていた。

部室の中には、制服姿の沙羅と駅のホームにいた先輩がいた。

「先輩、用事ってなんですか?」

沙羅は、小刻みに震えていた。

それを抑えるように自分をキツく抱きしめている。

「聞かなくてもわかるだろ?」

先輩はそういうと、沙羅の方に腕を回した。

急に触られて沙羅は思わずビクッとする。

この先輩の噂は他の同級生や女子の先輩から聞いていた。

ついに、私の番が来たと沙羅は思っていた。

怯える沙羅の様子を見て、先輩はニヤニヤと嬉しそうに笑っていた。

そこから、部活が始まるまでの30分間。

沙羅にとって地獄の時間が続いた。

「ありがとね、また頼むわ。」

そう言い先輩は、ジャージ姿でグラウンドに走って行った。

沙羅は、頬に伝う涙を拭うと足早に部室を後にする。

そこで、スマホのアラームが鳴る。

目を覚ますと、股下が少し湿っているのがわかった。

はあっとため息をつく。

「最悪な夢見たな・・・。」

でも、夢にしては妙にリアルだった。

ズボンを洗濯機にいれ朝自宅をして、いつもと同じ時間に駅に向かい

四番車の中央の扉がくるところで電車を持った。

ただいつもいるはずの沙羅の姿がそこにはなかった。

***

サッカー部の部室から、数人の制服姿の男子が出てきた。

「これ、やばいよな。」

「でも、もう俺たち共犯だよ。」

「そうだよな・・・。」

「先輩は大丈夫って言ってたけど・・・。」

節々にそう言いながら、後者に向かっていた。

部室の中には、ズボンを脱いだ状態の先輩と、

床にうつ伏せになった状態の沙羅がいる。

沙羅のパンツには9本のコンドームが括り付けられていた。

「後一回で、二桁行けたのにな〜」

ズボンをはきながら、床に力無く突っ伏した沙羅に向かって言う。

「あーそれと、今の胴がちゃんと残したからよ。」

「え?」

「誰かに言おうとしたら、晒すからな。」

先輩の恐ろしい眼光を見て、沙羅はただ無言で頷くだけだった。

「じゃあ、ちゃんと鍵閉めとけよ。」

そう言い、先輩は沙羅に鍵を投げつけた。

先輩の足音が聞こえなくなると、

沙羅は、泣きながらパンツに括り付けられたコンドームを外していった。

その日以降、他の女子や先輩たちは沙羅から距離を置いた。

下手に絡むと今度は自分にくる。

あの先輩が卒業するまで、沙羅には犠牲になってもらうしかない

それが女子たちの共通認識だった。

そして男子たちの間では、この日の動画が出回っていた。

***

駅のホームに制服姿の女子高生がいる。

通学の時間よりも少し早い時間で、ホームには人はあまりいない。

いるのは、一人の制服姿の男子だけだった。

電車が来る、アナウンスが鳴ると、

女子高生はふらふらっと線路に向かって歩いていく。

電車の警笛が鳴り響く。

そこで、目が覚めた。


スマホを開くと、AM5:00となっている。

なんだ、まだ寝れるじゃんかと思ったが、

嫌な予感がして、制服に着替え駅に向かった。

駅には沙羅の姿があった。

「おはよう。」と言うと、

沙羅はビクッと体を震わせ体をこわばえらせた。

ゆっくりと俺の方を向くと、

「なんだ、優太か〜。」

「なんだって、なんだよ。誰と思ったんだ?もしかして例の先輩か?」

そう言っていると、

「お前誰だ?」

と後ろから、声がした振り返ると例の先輩であった。

「先輩おはようございます。」

笑って挨拶すると。

「先輩?あーその制服なんだ後輩か部活何やっているの?」

「サッカー部です。」

俺は嘘をついた。本当は別の部活だ。

「サッカー部?なんだよ早く言ってくれよ。おい沙羅

こいつもいいよな?」

「え?」

「なんの話ですか?」

「お前、コンドーム持ってる?」

「持っているわけないでしょ!」

「仕方ねえな、俺の貸してやるよ。沙羅いいよな?」

「だからなんの話しているんですか?」

「お前、勘が鈍いな。この後、部室でこいつをみんなで犯すんだよ。」

数秒時間が止まった。

沙羅は俺の袖を力強く握っていた。

まもなく電車が参ります。

駅のホームにアナウンスが響く。

「沙羅この前の・・・。」

と先輩が言いかけた時、俺は無意識に

その先輩を突き落としていた。

お前、何すん・・・

パーンという破裂音が駅のホームに響き渡った。


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見つかっていないだけ 男気 @otokogi_41

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