第19話 球技大会の話し合い
今日はみんなに、球技大会の種目の投票をしてもらった。
その時の教室の雰囲気は盛り上がっていた。
「す、すごい盛り上がりだな……」
「そうですね……なんか怖いくらいです」
「みんな、こういうイベントごとが好きなのかな」
「そうかもしれませんね、みなさん学校生活のストレスが溜まってるんでしょう」
先日テストが終わり、ストレスや疲れが溜まっているからこそ、一度このイベントですべてを吐き出そうと考えているだ。
「田畑さんも、この際に全部吐き出したら?」
「は、吐き出すも何も、溜まってませんよ」
「ありゃ、そうなの? じゃあ俺は思う存分吐き出そうかな」
「鷹村さんは、大変そうですもんね」
生徒会やテストがあるので、自分ではやりがいのがあると感じている。
まだ、一か月くらいしか経っていないのだが。
「んー、まぁ何とかやってるって感じかな」
「流石ですね、私とは大違いです」
「え? どうして?」
「いや、頑張っている鷹村さんのことを見ていると、自分はどうしてこうなのかなって思う時があります」
田畑さんは三つ編みの毛先をいじりながら、喋る。
本気でそう思っているのだ、冗談とかではなく。
「人と自分を比べるのは悪くないとは思うけれど、それを真に受けちゃいけないと思う」
「そ、そうですよね……」
「自分にしかわからない大変さがあるじゃん、それを自分なんてって言って否定的になっちゃいけないよ」
俺がそう言うと、田畑さんの顔に笑顔が戻る。
「へへ、そうですね」
「私も頑張ってるけど、あなたも頑張ってるねでいいんだよ」
「なるほど……すごく救われます」
「自分なりに頑張ってる、これが最強だね」
その言葉に田畑さんは、微笑む。
そもそも田畑さんはテストでもいい点とってるし、学級委員もやっているので、落ち込む必要など一ミリもない。
「――――でも、私球技苦手なんですよね……」
「苦手な人でも楽しめるような玉入れとかもあるみたいだよ」
「届くでしょうか……」
不安そうな声でハハハと冗談っぽく言って来る。
どう考えても、嘘言ってる様子はないよな……。
「な、なんとかなるよ」
「そ、そうですよね」
妙に変な空気になってしまった。
「鷹村さんはなにかの種目に出るんですか?」
「どうしようか、迷ってるんだよね」
「運動とか得意そうですよね」
「得意かはわからないけど、嫌いじゃないよ」
中学の時までは運動部だったので、球技大会でその種目があれば出ようとは思っているが、他でも面白いと思う。
だからこそ、早めに種目が決まってほしい気持ちがある。
「おーい、鷹村ー」
クラスメイトの男子に呼ばれたのでそっちの方へ行こうとした時、田畑さんに腕を掴まれる。
「どうしたの?」
「……あ、いや、そ、その……」
「うん、ゆっくりでいいよ」
「あの、本当にさっきの言葉には気持ちが軽くなるような力がありました」
漫画のセリフのようなことを田畑さんが言う。
そこまで気にしたつもりはなく、本当に自分が思ったことを言っただけだ。
「本当にありがとうございました」
「別に俺は何もしてないよ、思ったことを言っただけだからお礼もいらないよ」
俺は笑いながらお辞儀してくる田畑さんにそう言う。
まぁ、直接お礼を言われて恥ずかしかったってのはある。
「わ、わかりました」
「はい! じゃあ、行ってくるね」
俺はそう言って、男子生徒のところへと向かう。
◆
放課後、生徒会室から春姉と一緒に帰宅している途中だった。
話す内容はやはり、球技大会のことだ。
「ゆうちゃん、なんの種目に出るか決めたの?」
「んー、まだ迷ってる」
「そうなんだー、ゆうちゃんのかっこいいところみたいなー」
春姉に見せるために球技大会があるわけではないのだが……。
「春姉には見せないよ」
「なんでっ!?」
「敵同士だから」
「いやいや、クラス別対抗じゃなく、赤、白でしょー」
俺たちの学校は学年で赤白に分かれて対決をしポイントが高い方の勝利になる。
球技大会とは言っているが、実際には運動会に近いって前生徒会の人が言っていた。
「まだチーム決まってないから、敵同士かわからないじゃんっ」
「そうだね」
「でもでもっ、敵同士なら負けないよ~?」
「俺も春姉だからって容赦しないから」
キリッと目つきを変える春姉に対して、俺も応える。
「おっ、めずらしくやる気だね~」
「まぁね、勝ちたいし」
「じゃあさ、罰ゲームつけよう」
「え、罰ゲーム?」
急に春姉がそんなことを言うので、俺は口がポカンと開いてしまった。
「うん! もし敵だった場合、負けた方が勝った方の言うことを聞くの!」
「…………いいね、それ」
「負けたら何でも聞いてね? 何にしようかなー」
「今から勝った時のことを考えてるのかよ」
「負けたときは、どんなお願いされるのかなー??」
そんなことを言いながら、ニヤついた表情を浮かべる。
俺は変に意識していしまう。
「やぁ~ん、ゆうちゃんのえっち」
「まだ、なんも言ってないだろっ!」
「ふふふっ! そうだね、じゃあそれまでに考えておくということで!」
春姉は大きく手を振りながら、笑顔で自分の家に帰った。
俺はそんな春姉を見ながらため息を吐いた。
勢いで言ったけど、ヤバいお願いとか来たらどうしよう……。
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