隣の家の幼馴染のお姉ちゃんが同じ高校に入学した途端、俺のことを狙ってくるんだが

楠木のある

第一章

第1話 隣の家の幼馴染兼お姉ちゃん

「優弥~? 今日から学校でしょうー?」

「んぅー」

「早く起きなさいよー、入学式に遅刻なんて、許さないわよ」


 母さんから、早く起きろと急かされ、用意された朝食を食べ、制服を着て寝癖を直して学校へ向かう。

 俺、鷹村優弥は15歳の男子高校生になる男だ。入学式を終えていないのでまだ高校生ではない。


 玄関から出ると、隣の家の玄関の扉もガチャリと開く。

 そこから出てくるのは、見慣れた顔である。


 瞳はクリッと大きく、まつげは長く、黒髪のボブヘアーであり、顔は小さくスタイルもいい。

 制服からでもわかるほどの巨乳である。中学の時よりも成長しているような……。


 隣から出てくるその女の子のことをジーっと見つめていたら、その子とパチッと目が合う。


「ゆうちゃん~!」

「春姉……朝から元気だな」

「入学おめでとう」

「ありがと……」


 俺の幼馴染の宮野小春みやのこはる、通称春姉と呼んでいる。

 家が隣で、小さいときから交流のある、姉のような存在だ。


「おばさんから勉強頑張ってたって聞いたぞ~? えらいえらいっ」

「やめろよ、撫でるなっ! 俺だってもう高校生になったんだぞ」

「えぇ~? 高校生でもゆうちゃんはゆうちゃんだよー?」


 この発言は高校生になっても何歳になっても俺は春姉の弟で春姉は姉であるということだ。


「勉強に関しては、春姉に頼んだけど断られたって母さん言ってたぞ」

「そ、それは……」

「めんどくさくて、やりたくなかったんだろ」

「ち、違うよっ~」

「どーだか」

「…………同じ空間に二人きりなんて、何するかわからないし」

「何か言った?」

「んーん? なにも」


 最後に春姉が小声でなにか言ってた気がするが、気のせいだったらしい。


「これからまた、一緒に学校に登校できるね?」

「いやいや、もう高校生だし一緒に登校はしないでしょ」

「…………え」


 あれ? なにこの反応。

 高校生だし、カップルでもないのに男女が一緒に登校なんてしないでしょ。


「変なこと言った?」

「あー……いや? 別になんでもないよ」

「カップルでもないしね」

「カップルだったらいいんだ?」

「いいと思うけど。それに中学の時はモテなかったから、高校では彼女を作りたい」


 俺の切実の思いである。

 中学生の時にはモテというモテはなかったし、彼女は生まれてからできたことがない。


「ふ~ん? ゆうちゃんの目標は彼女作ることなんだ」

「は、春姉……ち、近いよ」


 気づいたら春姉の顔が俺の目の前にあった。

 近くで見たら、もっと可愛い。

 彼女ができなかったのも春姉が原因というのもある。


 こんなに可愛い女の子を日頃から見ていると、理想が高くなってしまう。

 それに卒業式で言われたのは「あの先輩と付き合っていると思ってたから狙うのやめたー」これを言われては何もできない。


 特定で好きって人はいなかったから別によかったのだが。


「学校行こ?」

「え? あーうん、行こうねー」


 変な返事だったが、俺と春姉は一緒に学校へ向かった。


「小春、おはよー」

「あ、おはよー」


 春姉に声をかけてきたのは、ボーイッシュな女子生徒だった。

 ショートカットで身長も高い、美形の女性だ。


「あれ? その子、一年生?」

「そうだよー」

「じゃあ、この子が……」

「あっ、静かにねー?」


 春姉の友達だろう。めちゃくちゃ、意外って目でジロジロ見られる。

 なんだよ、この子がって……春姉普段俺のことなんて言ってんだよ。


 俺は春姉とその友達のことを邪魔しないように、そーっとじゃれ合っている横を通り過ぎる。


 すると、後ろからガシッと腕を掴まれる。

 春姉の小さく綺麗な手が、がっしりと俺の腕を掴んでいた。


「なぁーに、先に行こうとしてるのかなー?」

「え……だめなの? 別によくない?」

「良くないの! 逆になんでいいって思ったの!」

「春姉、友達と話してるし」


 俺がそう言うと「そっか……」と言って、しょんぼりした表情を見せる。


「小春、少年に迷惑をかけてはいけない」

「……そうだよね」

「迷惑ではないけど」

「本当っ!? じゃあ一緒に行こっ」


 そう言って半ば強引に手を引っ張られる。


「こりゃ、厄介だな」

「誰が厄介な先輩ですか」

「お前のことだよ小春」

「厄介じゃないもん、優しいもん」

「はいはい」

「ひっどーいっ!」


 キャッキャッというこれぞ女子という会話が俺の隣で繰り広げられている。


「そういえば、少年とても早い登校なんだな」

「へ? 時間ギリギリじゃないんですか?」

「一年生は九時登校だろ?」

「…………春姉」

「――――っぷ、ぷぷ、あははははっ」


 春姉はお腹を抱えて大笑いしていた。

 その際にお腹を腕でぎゅっとしているので、胸がとても強調される。


 というか、春姉のこの反応絶対分かってやがった。

 くそっ、昔からこういう悪戯好きなところあるんだよなぁ……。


「ごめんごめん……気づいてなかったみたいだから……」

「いや、教えてくれよっ!!」

「あんたら、いいコンビだね」

「コンビって、漫才師かなんかですか」


 あー、1時間以上時間が余っている。

 この時間、なにして時間を潰そうか考えるしかないか……。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん」

「ん?」


 春姉が俺に耳打ちで話しかけてくる。

 隣に居る友達には聞こえない声で。


「黙ってたのは、ゆうちゃんと一緒に登校したかったからだよ」


 そう言うと、ニコッと満面の笑みを向けてくる。

 その顔に不覚にもドキッとしてしまい、顔が赤くなるのが分かる。


 隣でその一部のやり取りを見ていた春姉の友達が、驚いた表情をしていた。


 入学初日から、良いのか悪いのかわからない日だ。

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