【Vシネマ】ニチアサ好きのオタクが悪役生徒に転生した結果、破滅フラグが崩壊していく件について【NEXT】

烏丸英

メルト・エペ:キャラストーリー①『盗撮事件!見えない犯人を追え!』

えっ!?俺が下着泥棒!?

一章終了後、【赤い霧が来る~】の短編が終わって少し経った頃。

メルトとも仲良くなり、彼女の夢の話も聞いて、お互いに強く信頼し合うようになったユーゴの下に、またしても厄介な騒動が訪れようとしていた――


―――――――――――――――――――


「起きろ! そして出てこい! ユーゴ・クレイ!!」


「んぁ? なんだよ、こんな朝っぱらから……?」


 ルミナス学園が休校中のある日のこと、テントで寝ていたユーゴは、外から自分を呼ぶ声に無理矢理起こされてしまった。

 眠気でぼんやりとしながらテントを開けて外へと這いつくばって出ていこうとした彼は、急に体を引っ張られて強引に外へと引き摺り出されてしまう。


「どああっ!? な、なんだぁっ!?」


 あんまりな扱いに驚き、眠気を吹き飛ばしたユーゴが周囲を見回せば、そこには自分が想像していた以上の数の女子たちがいるではないか。

 誰も彼もが憎しみと怒りを込めた視線を自分へと向けている様を目にしたユーゴは、嫌な予感を覚えると共にまたこのパターンかと色々なことを察する。


 今回は何の恨みがあってこんな目に遭わされているんだ……と考えていたユーゴであったが、パシャッという音と共に顔に強い光を浴びて、驚きにこれまた声を上げてしまった。


「わっ!? なんだ、今の……?」


 光が放たれた方を見てみれば、そこにはフィーと同じかそれより背が低い男子生徒がカメラのようなものを構えてこちらを見ているではないか。

 今のは撮影のためのフラッシュかと、そう考えながらいきなり何をするんだと抗議の視線をその男子生徒へと向けてみれば、カメラから顔を離した彼が笑みを浮かべながらこう話しかけてきた。


「どうも! ルミナス学園新聞部のヴェル・グリーザです! 連続して発生している下着盗難事件について、お話を伺ってもよろしいでしょうか!?」


「はぁ? 下着の盗難? そんな事件が起きてんのか?」


「とぼけるんじゃないわよ! 犯人はあんたなんでしょ、ユーゴ!!」


 新聞部の一員を名乗るヴェルの言葉に驚いたユーゴは、彼を押し退けて叫ぶように声をかけてきた女子生徒へと視線を向ける。

 黒色の髪と右目の泣きぼくろが特徴的な彼女は、なにがなんだかわからないといったユーゴへと、責めるような言葉を投げかけていく。


「ここ数週間で何件も入浴中の女子の下着が盗まれてるのよ! 明らかに寮に誰かが侵入してるに違いないわ! そして、こんなことをするのはあんたくらいのもんでしょ! ユーゴ・クレイ!!」


「いや、知らねえよ! 俺じゃねえし、証拠も何もないのに決めつけんなって!!」


 友人と呼べる生徒はメルトとフィーくらいしかいない上に依頼でちょこちょこ学園を離れているユーゴは、この学園で起きている事件には詳しくない。

 下着泥棒がいるという話も初耳だし、過去の自分の素行が悪かったからといって何もかもを自分のせいにされては堪らないと抗議する彼であったが、そんなユーゴへと冷たい声が飛ぶ。


「証拠なら、たった今出てきたぞ。これはなんだ、ユーゴ?」


「はぁ? なんだよ、その袋……?」


「しらばっくれるな。これはお前のテントから出てきたものだ。そして、この中身は――!」


 何かが入った袋を手に、自分のテントから出てきた男子生徒へと訝し気な視線を向けるユーゴ。

 寝ている自分に声をかけ、テントから引きずり出したのはこいつかと考える彼の前でその男子生徒が手に持っている袋を開ければ、そこから色とりどりの女性もの下着たちが顔を出したではないか。


「ああっ!? こっ、これっ! 私たちの下着よ!」


「やっぱりこいつが持ってたんだわ! 最低! 最悪! このクズ男!!」


「はぁっ!? なんだよそれ!? 知らねえよ、そんなの!!」


 完全に見覚えのない袋が自分のテントから出てきたことや、その中から盗まれた女子生徒たちの下着が出てきたことに驚くしかないユーゴは、必死に自分にかけられた容疑を否定する。

 しかし、この状況で信頼が最底辺まで落ちている彼の言葉を信用する者はおらず、決定的な証拠品の出現に新聞部のヴェルは大喜びで写真を撮影している始末だ。


「大スクープ! 元名門貴族の生徒、勘当後に下着泥棒に堕ちる! 連続発生していた下着盗難事件の犯人は、ユーゴ・クレイ! う~ん、これはいい記事になるぞ! 早速、号外として発表しなきゃ!!」


「あっ、おい! デマ情報を拡散するな! 俺はやってねえって!!」


「何がやっていないだ!? この証拠を前に、ふざけたことを言うな!!」


「そうよ! 潔く自分の罪を認めなさい!!」


 細身で長身、どこかハーフめいた甘いマスクの男子生徒に追従するように、女子たちがユーゴを責め始める。

 女子たちの怒りの声を背負いながら、自分の正義を見せつけるようにしながら、その男子生徒はユーゴを指差すと、堂々とした様子で彼へと言い放った。


「ユーゴ・クレイ! 貴様の悪行は全てお見通しだ! 女の子たちを泣かせたお前の罪、このダイ・カーンが裁いてやる!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る