青葉小路 二千花
「立ち聞き、と言うのは礼を失すると理解はしていますが。スピーカーホンで音量最大。聞いてほしい、と見えたのでだいたいお話は伺ってしまいました」
いつの間にかガイトの後ろに、ツインテールに白と黒のワンピースが立っていた。
「どうとらえるかは
ガイトがふり返ると、あえて姿勢良く、顎を引いてお嬢様善として立つ二千花。
普段感じる容姿の幼さなど微塵も感じさせない姿があった。
「ガイトさんにわたくしの携帯電話と、お借りしているPCに登録してあるメールからの発信、これを許可していただくようお願いいたします。現在わたくしの預かっている会社五社のうち、ネットニュース関係に関わる会社があるのですが、そこの出入りの方に、”鬼“と言う事象にとても造詣が深い方がいるのです」
「社長なのかよ、お前……」
「とは言え、それほどのことはありません、複数の従業員50人前後の会社で執行役員に名前があるだけです」
「うん、そこはもう、考えるのやめた。……その人物が諜報とオカルトの専門家集団であるコングレス、彼らの知識を上回り、調査網にも引っかからない。と考えた根拠は?」
「まずは
「まぁ、フリーのライターなら紹介はそういう感じになるかな。でも、ただのオカルトライターじゃない、と?」
「先の電話でお話しされていた、伝承レベルで”神が鬼に堕ちる“。わたくしはその話を聞くのは実は二度目になります。初めに教えてくださったのがその方です。なんの肩書もない方ですが民間の伝承や失われた宗教、鬼や妖怪の出自など、個人的にかなり詳細に調べている。……もちろん、調査結果をどこかで公式に発表などするはずもなく。知識がある、というのも、わたくし個人の印象ですが」
二千花は、言葉とは裏腹に自信満々に見える。
――人を見る目には自信がある、か。
もっとも、ガイトはその部分には異を唱える気はなかった。
「いいだろう……
「費用はわたくしが負担するつもりでしたが」
彼女もまたガイトに対し、何かの役に立ちたいのではあったが。
オカルト的な能力は皆無、標準より上とは言え他の三人に比べれば身体能力も低い。
但し、既に代表取締役の肩書を複数持ち、個人資産も豊富なので自身の判断だけで動かせる額は八桁に届く。
二千花はそんないびつな少女だった。
「そんなわけにいくかっての、仕事の上の必要経費だぜ? ……報酬は基本五〇万税別+経費、内容によっては上乗せする。期日は明朝六時まで」
「そんなに……」
「なにしろ急ぎだからな。ネット銀行か電子マネーでいいなら成果物確認後に即、入金する。現金がいいなら月曜以降、書留で送るが一割減。創作は一切不要。わからん、という結論でも経費込みで最低半額は保証する」
「穴埋め記事を、ゼロから三時間で四本書ける方です。その場合でも通常、一本につき六,〇〇〇円程度なのだと聞いています。さらには自身の専門分野、その条件なら受けて下さるでしょう。先ほどの資料はいただいても?」
「お前の使ってたPCは3番だったな? 資料はPDFで来てるやつを共有ファイルに転送する。相手にそのまま参考資料として送っていい。電話はこれから二時間、通話先無制限で開放する。時間以降の連絡先は、これから教えるアドレスのメールオンリーとしてくれ」
「ありがとうございます」
「お前が見込んだ人間だったら使えるヤツだろうよ。期待するぜ?」
「ご期待に沿えればよいのですが。なにしろ、わたくし個人が何かをするわけではありませんのでその辺は成果次第、と言うことで」
彼女は軽く会釈をするとガラスを開け、リビングへと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます