第18話フリーキック

「おい慶介ーとっとと進めよー」


「え、俺センターバックだよ?フォワード前行ってよ!」


「しゃーねえなぁ、めんどぉ」




変だな、相手にやる気が見られない…そもそも全然楽しそうじゃないし、まるでうちの太郎や大輔とは違うな。


まさか、舐めてるのか?こんな大事な試合で対戦相手を舐めるって…それが強豪なのか?


「ディフェンス下がれ下がれ!」


「まず、一人!!!!」


「やべ、あっさり抜けられた!」


真があんなにあっさり突破された?!


「守備ざっこw」


「うおおおおっ!」


「ちっ、クソつまんな!」


「蒼、ナイスカバー!」

「誠、前パス!」


「おっけっええええ!」


誠の得意なフライパス…狙った先は、


「堂又ああああああっ!」


「っしゃあ!さあ、どうやっ、!」


「取った!」


相手ディフェンダー誰だ?なんだあの子…一瞬で堂又から奪った!?


「こんなあっさりと、、、まじかよ」


「慶介サイドサイド、サイドに早くパスよこせ」


「真矢頼むっ!」


「げっ、外に出るわこれフライパス下手すぎだろあいつ、ゴミだわ」


トンッ


「は?なんで」


「おいゴミ、今の下手すぎだろ。どうにかしろよ」


「いや、でも今のは取れるでしょ…!」


「はぁ、呆れるわ」


「え、なんでだよ…」




箱田サッカークラブは、随分と雰囲気が悪いな。なんつーか…協調性がない?って言うのかな。


いや、なんか変だ。このチームまるで、あの守備の子だけ同じチームじゃないみたいだ。


「真矢パスくれー」


「ういっ!」


「パスカット、パスカット!」


「パスカット出来るならしてみろ雑魚w」


「くっそ!」


「俺が、止めないとダメだろっ!!!」


「松田!」


「サイドバックがサイド開けるとか、馬鹿?w」


「馬鹿で悪かったなああああああ!」


「走っても無駄だよ…うちの有一右ウイングは速いからさ。」


「余裕で避けちゃうよ、雑魚w」


「くっ、、、そ!」


「松田焦るな!大丈夫、センターバックが止める!」


「しつけえなこいつ、一回下がってっと」


「うおおおっ!」


「松田!」


ピーッ


「足かけられたわ、いってええw何してくれてんだよw」


「…ごめ、」


「ごめんなさいだろ?ガキ…後、ムキになったら終わりだからな?雑魚w」




松田のファールでゴールネット右斜めからの、少し離れめの……フリーキック?だっけ。




フリーキックとは相手からのファールを受けた位置から相手の守備なしでボールを撃てるコーナーキックと同様の、セットプレー




「誰が蹴る?」


蹴るプレイヤーはチームから1人、決めることが出来るんだっけ…


「俺、蹴りたい!」


「…ぷっははははw何言ってんのお前wお前が蹴っても入るわけねえじゃんw」


「でも、蹴りたい!」


「反論すんなってwいいわ真矢頼むわ」


「おうw」


「っ……」


「うわっ!!!思いっきり外しちゃったわwごめーんw」


「雑魚相手だから気にしなくていいよw」


「ぷはははははw」


なんで俺に、蹴らしてくれねえんだよ…蹴りたい、俺だって…俺だって、センターバックでも点を入れてやりたいのに。


なんで誰も俺に輝けるチャンスをくれないんだよ…!!


あいつらばっかり、あいつらばっかり、あいつらあいつらあいつらっ、、、っ!


「サッカーうま!ねえねえきみも僕たちの目指してるクラブいっしょにめざそ!!」


「ほんと?ぼくといっしょにサッカーしてくれるの?やったあ!」


どんなに暑くても、雨が降ってても…俺たちは毎日集まって練習したじゃねえか、、なのにたった1人、たった1人、、


「堂又落ちたんだってよwあいつもう終わりだなwこれからは真矢と俺と慶介の3人だけで練習な!w」


たった1人、クラブ試験に落ちた奴がいて、それがたまたま堂又だっただけだ。


なんで堂又を雑魚なんて言うんだよ…!!!


俺が反発をするようになってからは真矢と幸一の2人…いや、クラブ全体からゴミのような扱いを受けるようになった。


理由は単純。クラブのエースである幸一に反発してしまったから…


 ◆

ピーッ!


「おいおいまたファールかよw荒いねえ君たちはw」


「なあ、今度こそ…俺に蹴らせてくれないか」


「だからーw」


「俺は本気なんだよ。」


「っ…!なんだよ、なんで怒ってんだよ。なに?俺になんか文句でもあんの?」


「いいから蹴らせろ」


「まあいいじゃない幸一wそんなにサッカーが甘くないってことを思い知らせればいいさw」


「そらそうだなwんじゃお前、蹴ろよ。入んなかったら殴るからな?w」


集中、集中だ。


入る…絶対入る。


コンコンッドッ!


ボールは柔らかく、ゆっくりと回転、曲がって、そのままキーパーの取りずらい離れた位置へ


「…入った!!!」


「よっしゃ!よっしゃあああああ!」


入った!入った!やった!やった…


ピーッ 前半終了


「つまんな、まじ面白くねえわ」


「…なんで、だよ。なんで誰も喜んでねえんだ、?」


「当たり前だろ、チームのみんながお前が俺に殴られるのを期待してたんだからよ。」


「そうだよな、まじ冷める」


「それな」


言わないと、言わないと…ダメなんだ。言ってやんねえとなんも、、、変わんない!


「ざっけんなああああああああ!はぁ…はぁ…、」


「何叫んでんだよ、うっさ」


「幸一、、だけじゃねえチームの全員だ!!なんで、なんで誰も全力で戦わないんだよっ!!!!全力で、ゴールを狙いにいけよ!!!!」


「はぁ?誰が言ってんだよ」


「お前ら、俺がいなきゃどうすんだよ!!」


「エースは俺だ。お前が居なくたって俺が点を入れんだろうが!!!」


「ふざけんな!相手ばっかり煽って、結局1点も入れてねえじゃねえか!!」


「てめえほんとに黙れよ」


ドンッ!!


「いっ、、、て。点入んなかったら殴るって言ったじゃねえかよ。俺は点を入れた!約束も守れないガキがよ…、相手をガキって言ってんじゃねえよ!!!!」


「おい、2人落ち着け、」


「でも、監督!」


「…黙れ慶介。後半ではお前を使わないからな。」


「は…!?」


「ほら、早く準備しろお前ら。まだ0-0だと思え。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る