第15話アシスト

ピーッ


前半終了 0-0


なんとか、耐えた。そんな印象の前半だったな…。得点を見れなかったことはもちろん、攻めるシーンすらあまり見れなかった。さて、どうする…


「監督、」


「…ん?どうした?真。」


「俺を変えてください。お願いします」


真は、不安そうな、どこか暗い顔をしている。


「真、俺は別に真のプレーが悪かったとは思ってない。だから、体力切れでもない限りは変えるつもりは無いよ。」


「でも、でも、俺はいっぱい迷惑かけてましたし、変えて欲しいです。」


「…なら、そうだな、後半70分で変える。それまでは頼む」


「………はい」


ピーッ


後半開始


「ふくながー、前からプレッシャーかけてくれ。中盤で俺が取る」


「名前間違ってるやつの指示なんて受けたかねえけど、しゃーないか」


!プレッシャー、、前から!?


「うおりゃあああああああ」


前線からボールを奪いにいくプレッシャー。これをすることによって相手のプレーに焦りが出始め、乱れたパスを狙にいくという戦術。


「なんじゃそりゃ、早すぎっ!」


「誠、焦るな!俺がパスでもいいぞ!」


プレーに焦りが出てしまうと、周りの味方の声すら聞く余裕は無くなる。


「まえ、出さないと!」


「誠っ!」


「マサああああああっチャンスっ!」


高く上げられたフライボール、どっちが抑える?


対応は、真っ!取ってくれ!


…ボール、来る、隣に敵、取られたら終わり。取られたら…


コンッ!


「よっしゃああああ!」


「マサ、ナイス!」


真…なんか躊躇した?


あいつ、わざとだな。


「マサ、ぱああああす!」


「あ、裏抜け!?」


「ひゃっほ!」


シュルー


「はあ…はあ…」


1-0


南高山小学校 先制


「監督、あいつ、」


「わかってるよ大輔。俺だって怒ってるよ」


「じゃあ変えましょうよ。僕はもう準備できてますよ。水分補給の時間なんで変えるなら今…」


「堂又、お前右に移動してくれ。」


「りょうやはごめん。ここで交代だ。」


「監督、俺を交代しないんですか。70分、丁度ですよ。」


「真、俺はお前を変えない」


「え、なんで、ですか」


「真、後悔をするなよ。」


「何、いってんすか?」


試合再開


「圭吾、広大!2人は守備のサポートに徹底!前に出るのは1人だ!」


「え、はい!」


監督が、何を考えてるかわからない。これは初めてだ…。まじで、何考えてんだ!?


変だな、相手の中盤がまったく機能してない。まさか、作戦がこんなにヒットするとは。これじゃあただ高永にパスすればいいだけじゃないか。


こんなに、弱かったか?お前らは。


「真っ!真っ!」


何で俺を交代しないんだよ、しろよ。俺がプレーしたってなんの意味もねえだろ。


「しいいいいいん!!!!」


「え、太郎?」


「俺にパスをくれええええええ!」


何であいつが、俺にパスを要求するんだよ。他のやつに…あれ?


中盤は俺しかいない…?


中盤、ミッドフィルダーは、攻めも守りにも重要なポジション。そして、今の真は中間ポイント。


相手を止めればカウンターに繋がり、相手にボールを奪われれば相手のカウンターに繋がる。


まさに、超重要ポジション。それを、あえて1人に絞る。これをすれば、真がボールを持てば全員が流動的になり、真に大きな仕事が必ず回ってくる。さて、これをどうする?


後悔…


「マサああああ!とれるぞお!」


「とっちまうっぜ!」


ズサーッ


「はっ!?」


「ドリブル、パス、やらなきゃ、俺が中心なんだから…こんなんじゃダメなんだからっ!!!」


ジャンプでスライディングを避けたかっ!よし!きたぞ、のってきたあああ!


「いいぞっ、運んでくれ!」


俺が運ぶ先にはいつも決めてくれる強力な仲間がいる。いるじゃないか!


そこにはいっつも、エースがっっっ!!!


「真、こっちフリーいいいい!」


「裏抜けされたっ!」


完璧なパスっ、決まった。


「シュートおおおおおおおっ!」


1-1 同点


「よ、よっしゃああああああっ!」


アシストだ、アシストっアシストがついた!


真の、アシスト。


どうだ?楽しいだろ!



「ナイス真!」


「次も…次も、決める、決めるよ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る