後半戦

第11話大嫌いなスポーツ

昨日の真と堂又の喧嘩によって、チームの雰囲気は最悪な状態になってしまった。


まあ、どちらも言いたいことはわかる。どんなに格上でもやってみないとわかんないこともあるし、かと言ってトーナメントのというルールの中で、格上相手と当たってしまったら諦めたくなる気持ちもわかる。


でもどうやら、堂又と真の喧嘩は終わったらしい。


堂又はトラブルを起こしてしまったことに落ち込み、なおかつ反省しているんだろうか、ベンチで俯いてる。


「おい!真!」


校庭に太郎の大きな声が響いた。


げ、なんかやばそうな感じ?もうそろそろウォーミングアップなのに…


「ん、なに。」


「おい、まさかまた喧嘩か?もうやめろよ。」


蒼…!てか俺も止めにいかねえと!


「昨日の話はもう大丈夫だから、ほらウォーミングアップしないと!」


「何がウォーミングアップしようだよ、素人が。」


「っ!おい!真。先生相手に失礼だ!」


「あああ!もういいから、とりあえずみんなは先にウォーミングアップしてて。蒼、よろしくね。」


「はい…」

「それで、太郎くんは何が言いたかったの?」


こういうとこを上手く解決させないと、チームが崩壊する。それだけは避けねば…でも、やり方知らねえよ!


「腹立つんですよ!俺も堂又くんの意見と同じです!なんで戦ってもないくせに諦めるの?」


「はあ…めんどくさ。俺はな、お前らみたいに熱くないんだよ。」


「熱くない?何言ってんの?ここまで一緒に練習してきたのになんでだよっ!」


「いや、あの、えと。もうやめようか、、」


「もういいわ、飽きたから帰るわ俺。」

真はそう言うと、ベンチの方にあった自分の荷物を取り、ダルそうに帰ってしまった。


「ダメだこりゃ…どうしたらいいんだよ…」


俺が小学校にいた時も中学校にいた時も、喧嘩することはよくあった。でもどんな喧嘩でも結局先生が全て収めてくれた。あの時の先生の苦労がようやくわかった。


だから喧嘩したらあんなに先生怒ってたんだ…


「先生、とりあえず俺はウォーミングアップしてきます」


「おう。」


上手くいかねえなぁ。どうやって解決させれば…


てか、熱がないってなんだ?確かに変な話だな。サッカー好きじゃないってこと?じゃあなんでこのチームに入ったんだろう。


 ◆

「堂又くん!」


「ん?どうした?太郎。あ、大輔も!」


「昨日できなかったから、サッカーもっと教えて!」


「お、いいぞ!」


よかったよかった。ひとまず雰囲気は戻ってきたかな!


ていうかこの前爆発した大輔もやばいけど、やっぱ堂又もうまいな!なんじゃありゃ!


「やっぱり決定力は大事かな!難しいボールはいっぱいあるとは思うが、とにかく枠内に飛ばす!確実に決められるやつは確実に決められるコースでな!」


「わかった!」


 ◆

「はい!じゃあ今日も練習お疲れ様!ミーティング終わり。」


「ありがとうございました!」


ふぅ、トラブルは起きてしまったが後半は大丈夫だったな。


「みんな居なくなったな。俺も帰るかぁ!」


「あの…先生。」


「え!?真!?」

「どうしてここに?」


なにやら真は校庭の隅っこにずっと隠れていたらしい。


「なんでまたそんなことを…風邪ひくぞ?」


「すいません……」


「…真、お前なんかあったか?」


「何も、ないすよ」


「だってほら、口調が変だ」


「あった、です。」


「まあなきゃこんなとこにずっと隠れてなんかしないでしょう。もし話せるなら話してくれない?」


「…俺サッカー嫌いなんですよ。嫌いっていうか、やりたくなくて。」


「熱ってそれだな。」


「はい。だけど両親がどうしてもスポーツやれっていうから、サッカーをやらされてて。」


「そうか、」


「そのせいで大好きな勉強にも集中できなくて。学年でも1位をとれたことがなくて…」

「でも、がっかりさせたくないから、サッカーやんないと…そう思ってもやっぱり両立なんて器用なことは俺には出来なくて。」


「今日も練習が終わる時間になるまで家に帰りたくなかったんだな。」


「はあ…」


「なあ真、今度の大会にはご両親はいらっしゃるのかな?」


「もちろんそうです。」


「先生から相談してみていい?」


「いいんですか?」


「いいんですかってwそれが俺の指導者としての立派な仕事なんだよ!やるよどんなことでも!」

「ほら、ささっと暗くなる前に帰るぞ!」


「ありがとうございます!先生!」


なるほどな、太郎も堂又も誤解をしてたみたいだ。


それにしても、相談相手が俺で本当によかったんだろうか。


でもとにかく次こそは解決させなきゃ!

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