第9話やるべきことをやればいい
「入ったああああああああああ!」
「よっしゃあ!よくやった、大輔ぇ!」
監督も!みんなも!俺のことを褒めてるっ!!
「やったああああああああああああああ」
俺は空の大きな雲を切る勢いで、手を思いっきり掲げた。周りがそれに合わせて俺を祝福した。もっと、褒めてくれた。やればやるほどに!無限に楽しいっ!
にいちゃんの県大会はテレビで放送されてた。でも、俺がゴールを初めて決めたこの今の試合は、単なる練習試合だからどこにも放送されていない。悪く言えば、誰の目にも留まっていない、響くことも憧れることもないけど、それでも!
やってやったぞ!!!
俺はまた空に手を思いっきり掲げた。
1対1 後半 70分
「おい、福永、そろそろ本気で勝ちとりにいくか」
「だから!名前間違えんなって!たかなが、だわ!高永!」
「……まあそうだな。今のままでは逆転をされてしまう。逆転されてしまったら練習試合だろうとチームのモチベーションダウンは計り知れん。」
「まっ!どうにかしよう!」
「は?おいマサ!あいつらに作戦なし?馬鹿か!?つーか、丁寧派のお前が作戦考えねえっておかしいだろ!」
「もう丁寧は飽きた。お前や、相手チームの大輔くんがやるように、俺にも自由にやらせてくれよ。だって俺はミッドフィルダーだぜ?」
「じ、自由!?お前、ダメだって!」
ピーッ
(さて、相手ボールからの再開と…ここは、奪いたいとこだぞ!!頼む…、あの11番を止めろっ!)
「みんな!11番くるよ!」
「サイド、サイド!」
さっきはあっさり突破されちまった…、俺はこのまんまじゃ空気だ。止めねえと、それが俺のやるべきことならば、それをやるだけ。
「
「は!!?パス?」
「マッサー!」
「やっぱり、空いた!」
「ミドルシュート、くる!」
そうか、高永に守備の全意識を、囮にしたのか!
「うおおおおおおおっ!!」
「へ!はやっ!?」
「松田!」
やるべきことをやれえええええ!
「打つのが、遅れた、」
とった!
「松田、フライパス!カウンターだ、大輔が、みんなが待ってるッ!」
「届けええええええ!」
「監督…、あいつら上手いっす。」
「ああ、そうだな…」
ボールは空中を舞う。しかし、そのスピードは空を切るほどだった!
「トラップ!」
右ウイングの5年生、新川へそのボールは向かっていった。もちろん、そのスピードは落ちることなくただ全速力で…
「やべえ!トラップが、こんなのキツすぎる!」
「監督は知らないでしょうけど…あいつトラップ、めちゃくちゃうめえんすよ」
コンッ
びたっと、彼の足でボールが止まった。全速力のボールが、一瞬にして止まった。
トラップとは、身体の1部を使ってパスされたボールを止める技。見てる分には簡単そうに見えるかもしれないが、全力でパスされた味方からのボールを正確に、落ち着いて捌くというのはまさに
「………大輔。」
「おっ!ふぁ?今、パス?俺の名前呼んだ?」
「でもね監督、あいつ致命的に声小さいんすわ」
「いや、それは知ってる」
「まあいいっ!もう一回、突破すればいいだけ、シザーズッ!」
「…や!…あ!また突破されちまう!すまん、俺が、」
「任せろああああっっっっ!スライディングッッッ!」
「は!?スライディング?どっから!まさか!」
「マサ、あいつ、守備練習してたんだ…」
「俺は守備をサボらねえ!ミッドフィルダーだからだっ!」
あの日、俺はお前に言われてから、初めて気付いたよ、自分の弱点に。自分はやるべきことをちゃんと出来ていなかったと思う。俺ももっとお前みたいに走りゃあよかったんだ!あの脳筋野郎になればよかったんだ!
「スライディングなら、フェイントかけても突破は厳しい!」
トンッ
「あっ、取られた!?足で、どうやって!?しかも絶好調の大輔から、」
「釜下、フライパスだッ!」
マサはスライディングによって寝ながらでも無理やり釜下へとパスをした。釜下はそのボールを受け取り、即座に前線にフライパスを出す!その狙いはもちろん、
「脳筋野郎、いけよ!もっと暴れろよっ!後ろは任せろ。だけど、前は任せたぞ!高永ああああああああああああ!」
「あいつら、戦術変わってねえか!?」
「へへ、相手は賢いな。カウンターにはカウンターが有効なんだぜ、誠。」
「カウンターアタック!」
「カウンター!」
「胸トラップからの切り返し!ファーストタッチは完璧さッ!」
「やべえ!突破される!」
「ピンチはチャンスなんだぜ、お前らよ。シュートっ、」
「シュートコースはけすっ!」
ドドドンッ!
「おっりゃああああ!とってやったぞ!」
サッカーではボールを手で触ることは絶対に許されない。だからこそ、サッカーは守備がとても難しい。足だけでは必ず限界があるのだ。そして遂には相手に突破されてしまう。その時に守備陣がやるべきことはシュートコースの削除である。
これが成功するとシュートは自然と、ゴールキーパーの手の中へ。
「とったぜ、お前のシュート。」
「やべえ、下がれ下がれ!みんな!」
ピーッ
「え、もう?」
1対1 引き分け
「引き分けか。後半はあっという間だったなwふくなが!」
「お前やっぱりわかってやってんだよな?ボケだよな?それとも本当に馬鹿なのか?」
「ほーら、挨拶だ。いくぞ。」
「おお、うん。」
「ありがとうございましたあああああっ!」
「ありがとうございましった!」
「おーい、高永、」
「あ、はい、先生。どうしました?」
ユニフォームを着替えていた時、先生が突然やってきた。周りにはもう誰もいなくなっていた。相変わらず着替えが遅いのはまったく変わっていない。
「今日めちゃくちゃ頑張ってたな!ありがとうな!みんなべた褒めなのは気付いてたか?」
「あ、そうなんですか?よかったです!」
みんながべた褒めw期待されるって辛いなぁw
「気付いてなかったのか!」
本当はバリバリ心の中でイキってたけどね!
「まあ、話は変わるんだが、県大会のトーナメント表が届いた。」
「お!?まじすか!」
「1回戦の前の練習試合も組んだから聞いてくれ。ちなみにまだみんなには話していない」
「はい!どこですか?」
「練習試合は、箱田サッカークラブだ。」
「箱田!?まじすか?あの超強豪…」
「もちろんトーナメントにも入ってるから、最初から手は抜けないな。」
「そして1回戦の相手は、今日戦った、広元スポーツ少年団だ。」
「やっぱりそうすかwまあ、勝ちますよ。今度こそはね」
「あとお前帰りのバス席替えされたから、隣高永ね」
「え?あの!?もう一回席替えしてくださいよ!」
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