第5話ミーティング

「さて!今日もみんなお疲れ!」

ゴールネットと散らばったボールを片づけ、その日の練習が終わる。もう見慣れた景色だが、何回やってもこのミーティングの瞬間は緊張するもんだ。


「今日は、チームにとってとても大事な1日だったと先生は思ってる。」


「はい、今日は本当にありがとうございました!おかげで…ちょっと自信がついたというか…」


「堂又エース!練習に参加してくれたから僕たちもすごい嬉しかった!」

「そうだよそうだそうだ!」


朝は大輔くん…今度は小学四年の太郎くん…。こんなに活発な子がいっぱい居てとても監督としても助かっている。


……まあ、助けてもらっちゃダメなんだろうけど。


「さっ!みんな気を取り直して!本題に行くよ!」


「はい!先生!」


「お!キャプテン蒼くん!なにかな?」


「練習試合ですッッッ!!!!」


「よっしゃああああああああああ!

よっしゃああああああああああ!

やったあああああああ!」


みんなが一斉に声を上げた。校庭中にその声が響き渡り、最終的にはやまびこのような形でみんなの耳に返ってきた。


「そう!大当たり!今回の相手は、南高山小学校みなみたかやまサッカー部のみなさん!この試合がもう2日後に迫っているというわけです。」


「ふううう。痺れる…。嬉しい…」


「喜びの頂点に登るのはいいけど、作戦をたてないとね。なんせ、相手はトーナメント制の県の球技大会、ベスト8常連。とんでもねえ強敵さ」


「まあ、戦術はいつもの通りのカウンターサッカーでいいかな…」


カウンターサッカー、相手にボールを持たせ、相手の守備が上がってきた一瞬の守備の穴を狙い、待っているフォワードへパスし、一気に得点を狙うサッカー。




よくわかんねえけど!!!とりあえずこの戦術以外知らんて!!!!俺、素人だし!!


「だけど、先生。南高山の戦術はサイドアタック、超火力編成。守備がどこまで耐えられるかどうかが心配です」


「んーそうか、まあそんなところで早速だがディフェンダー陣からスタメンを発表する。右センターバックを蒼!左センターバックを誠くん!」


「よっしゃあああああ!

がんばります!」


「そして、ゴールキーパーを…雄二たのむ。」


「はい。」






「よし、最後に左ウイングは復活の堂又エース!これでスタメンは終わりだ。」

「それじゃあ、みんな、初の練習試合緊張せず焦らず怪我なく根気よく元気よくがんばろう!」


「先生、注文多いよ?」


「ミーティング終わりッッッ!」


俺がこれを言うとみながバックを手に取り、校庭を後にした。


(いや?あれ?残ってる子がいる?)

ミーティングの場所からだと少し遠い場所でみなに遅れて未だに荷物をまとめている子がいた。


(あの子…、たしかミッドフィルダーの大輔くんだな!でも、なんで?いつもならすぐ帰るのに)


「大輔くん!まだ帰らないの?もうみんな走って帰っちゃったみたいだけど…」

「………先生!僕!」


え?なんか雰囲気が違う?


俺の目をただ一点に見つめるその瞳には光があるような、なにか願うようなそんな感じがした。


「今度の試合、後半から僕を左ウインガーで試合に入れてください!」


「左ウイング!?そこは、堂又の…。それに大輔くんはミッドフィルダーだろう?」


「それでもお願いします!!!出たいんです!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る