第148話 Two People When Young(若い頃の2人) 1

 とある片田舎の庭先……。


 「そんなんじゃ、いつまでたってもやられっぱなしだぞ。」

「僕は、別に兄ちゃんに勝とうなんて思ってないもん。」

「それだから上達しないんだよ。ほら、もう一回組手からやろう。」


 庭先では、少年兄弟が格闘の練習をしていた。

格闘は少年達の父親が勧めたものだが、兄弟で、さすがに兄は優勢である。

 歳の頃も同じ、体格もそんなに差はなかったが、弟は常に兄を立てていた。


 弟の気持ちを知る由もない兄は問答無用、弟を打ちのめす。


 いつも弟の方が傷だらけになって終わるのだった。


 幼い頃から兄を慕い、いつも側に着いて歩いていた弟だった。

 父親は、そんな弟を見て、格闘を勧めたという経緯があるのだった。


 弟は決して弱腰ではなく、女性っぽくもない。だが、兄を慕っているあまり本気で向かえなかった。


 「お前達は双子である故、同じ体格。だから格闘を始めた。いずれ大きくなったら、2人は王城に行って、近衛にでもなる事を期待している。母さんだってそうさ、お前達の立派な姿を夢見ている。」


 そこへ弟が言った。

 「でも父さん。僕は兄さんとは格闘の技術が違いすぎる。2人揃って近衛なんて無理だよ。」

「だからいつも庭先で練習しているんだろうが。」

「でも……兄さんには追い付けないよ。」


 「大丈夫よ。練習していくうちに兄さんに追いつけるわ。母さんは信じてる。二人共、立派な近衛になれるわ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る