第134話 This World And Times Past (現世と過去の時代) 38

 過去の時代……。

サンドラ邸……。ミランダが戻っていた。


 「同じ時節を転移しても身体に異常は無い。なのに時代を越えると体力と魔力の消耗が激しい……。ワンドルは子供達の為に身を粉にして協力してくれたんだわ。先ず私が転移術式を習得するべきだったかもしれない……ワンドル……。」


 そこにサンドラがドアから出てきた。


 「おや、ミランダ。戻ったのかい。外は冷えるよ、早く中へお入りなさいな。」

「あ、サンドラさん。ごめんなさい、考え事しちゃってて。」


 リビングは心地よく暖まっていた。

 サンドラがティーセットを持ってテーブルに座る。ミランダも向かいに座った。


 「あら、もう日が暮れるというのにあの子達ったらまだ戻らないんですか?」

「市場の帰りに何処かに寄り道してるのかもしれないが、時期に戻るさね。」


 ミランダは麓にリンクを掛けた。

 やがて姉妹に繋がった。


 「あなた達、何処で道草食ってるの?もう日が暮れるわよ。」

「ママー、戻ったのね。すぐに帰ります。」

「ごめんなさい、今、リュージン夫妻の所に来てます。」

「気を付けて戻ってくるのよ。」


 肩をすくめながらミランダはサンドラに話した。


 「リュージン夫妻の所にいるそうです。二人には日が暮れるから戻るように伝えましたわ。」

「それは魔術とやらで話したのかい?すごいことだねぇ。」

「はい。近くなら話すくらいは出来るんです。あの子達にはまだやっとの魔術ですけど。」


 そうこうするうちに姉妹が帰ってきた。


 「おかえり二人共。リュージン夫妻の所に用事だったのかい?」

「はいサンドラさん。リビングに飾られた絵を見させていただきました。」

「それでねママ。」

「あっライラずるーい。私が話したかったのに。」

「ママはどちらから聞いてもかまわないわよ。」


 ライラはミランダの隣りに座ると話し始めた。レイラはサンドラの隣りに座ってライラを睨みつけた。


 「レイラごめん、話させて。……それでね、リュージン夫妻の所のリビングには素敵な絵が飾ってあるの。ダットロームという町の教会の絵。建築した記念に頂いたんだって。今もある教会だって聞いて、それで私達行ってみたの。」

「行ってみた?ダットロームまでは馬を走らせても6日はかかる町だよ。」

「まさか術式を使って行ってきたの?」

「そうよママ。ライラが確かめたいっていうから。」

「それであなた達が今ここに居るってことは、成功したのね!すごいわ。この先期待が持てる。」

「サンドラさん、これも魔術の1つ。ママと同じなのよ。」

「絵を見てその場所に行けるなんて……。不思議な事もあるもんだ。ビックリして腰が抜けるかと思ったよ。」

「座っててよかったわ、サンドラさん。でも本当に行ってきたの。シスターに自己紹介と挨拶も済ませたわ。」

「あなた達の話はビックリすることばかりだよ。でも楽しみが増えたような気がして嬉しいよ。……さて、そろそろ晩ご飯の支度を手伝っておくれ。」


 「支度するまでママは座ってて。」

姉妹はミランダにリンクしながら、珍しくキッチンに入っていった。


 まもなくすると、いい匂いがリビングに立ち込めてきた。

 外の煙突からは煙が上がっている。もう陽が落ちて、辺りは暗くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る