第97話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 17

 現世の時代、ガムが王都へ立ってから数日が過ぎた頃。


 ミランダはグランダの意識をおびき寄せる為に、パワーを強めて周囲を伺っていた。手にはグランダの爪。

数人の魔導士達を引き連れ、ブレインラードを出て、崖が連なる山に来ていた。


 (私を探して妖魔を仕向けてきているのは明らか。おびき寄せるのは容易にできる。……そこからが問題よね。意識だけのグランダを消滅せしめる手立てが見付からない。……ヤツの意識にシンクロが可能なのかしら?)


 ミランダは試行錯誤を繰り返した末、シンクロをかけることにした。

元々、グランダの腕を切り裂くことに成功したのはシンクロによるものだった。意識にも可能ではと考えたのだった。


 すると爪が薄っすらと光始めた。

それに気付いた魔導士達。

 「ミランダ様、注意していてください。」

「心配ない。今回は最大パワーでシンクロを試みる。成功したら崖に向かって投げつける。その時の崖の状態が分かるかどうか、場所が特定出来たら皆は最大パワーで術式を向けて。」


 次第に爪の光が強くなってくる。

ミランダは髪色を変え、身体にオーラを纏いながらシンクロを仕向けた。


 「……微かに手ごたえがある!……よしっ掴んだ!」


 崖に近寄る魔導士達、ミランダもゆっくりと崖に向かった。

崖に近付くと、グランダの意識を叩きつける。崖の岩には何の変化もない。微かに砂埃が舞う。

そこに向かって魔導士達の攻撃魔術の応酬が始まった。


 まばゆく光を発し、炎で岩が赤く変色した。

その一瞬の衝撃にミランダのシンクロが解けてしまった。

ミランダは解けたことに気が付かなかった。


 鋭く光る閃光がミランダに向かってくる。

それは一瞬だった。ミランダの左手首が血を吹き切断された。

その後、ミランダの左手首と共に、グランダの意識は遠くなっていった。


 痛みに大きく叫ぶミランダ。

駆け寄る魔導士達は、直ぐに止血に取り掛かる。

魔導士達は声を掛けながら応急処置を続けている。


 包帯を巻かれた左腕の先に、持ち寄った有りったけのポーションを浴びせかける。


 「ああーっ!」

痛みに耐えかねたミランダが叫び声を上げた。


 「ミランダ様、お気を確かに。もう大丈夫です。戻って再びポーションを。」

「さあ、肩をお貸しします。掴まって。」


 両側から抱きかかえられ、ブレインラードに戻っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る