第87話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 7
「二人共、よく頑張っているようで安心した。これで現世に戻る。私は体力の限界が近いようだ。以後は頻繫に訪れることはないと思いなさい。それから前もって言っておく、マタスタシス=テクは多用してはいけない術式だ。私のようになってしまうからな。」
ワンドルは一瞬身体を
「ワンドルさん大丈夫かしら。なんだか意識が弱く感じた。」
「私も。ついそれを話しそうになってやめたわ。レイラも気付いていたのね。」
「マタスタシス=テクを多用するなって言ってた。ちょっと確認したい事がある。部屋に戻ったら書物を読み返してみるわ。」
「何か気が付いたの?レイラ?」
「うん、書物の最後のページの内容。」
「やっぱりそこだね。……己の全てを纏い、轟く雷鳴に身を捧げよ。稲妻を身に纏いしは、いずれ光の力が己自身となり元に返る。それをもって己は光の使いとなす。感じた場所に移動する。己の力と引き換えに。……この文言が気になってるんでしょ?」
「ライラ、覚えてたの?驚き!……気になったのはその最後のところなのよ。……己の力と引き換えに……、このせいでワンドルさん、体力失くしてるんじゃないかって思ったの。」
「マタスタシス=テクの術式の副作用……。そう考えると文言の最後の部分は信憑性があるわね。」
「あっいけない!市場に行かなきゃ。ほらライラ、少し急いで下りるわよ。ドンバスさん待ってるから。」
もうかなり影が長くなってきていた。
どうやら立ち話が長くなった姉妹だった。
市場では、晩の食事の買い物客が多くなってきている。
ドンバスはこの時間になると、品物の仲介であちこち歩きまわっている。
肉を扱う店の前で、ドンバスと主人が話していた。
「今日はいつもより遅いねドンバス。あれ?双子のお嬢ちゃんはまだなのかい?」
「そうなんだよドミール。いやなに、時期に来るさ。もう少し待っててくれ。」
ドミールに告げて事務所のある建物へ向かうドンバス。
そこにようやく姉妹が市場に入ってきた。
ちょうどドンバスと事務所入口で出会った。
「遅くなりましたドンバスさん。」
「ちょうど肉屋のドミールと会ってきたところだよ、さぁあちらさんがお待ちかねだ。今日はこのまま店まで行こう、ドミールを紹介しておくよ。」
姉妹は獲物の籠を背負いながらドンバスについていった。
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