第54話 Go Back In Time(時を遡る) 3
現世の時代……。
その翌日、ミランダやガムがリビングに入る頃には、ワンドルの姿はなかった。
「ミランダ様。昨夜は何故ワンドル様の過去の捜索を止めたのでしょうか?マタスタシス=テクを習得しているのはワンドル様のみ……。」
「よく考えてみてガム。己の力と引き換えに、と書いてあった。マタスタシス=テクを使うこと、己の力と引き換えにそれが叶う。果たしてどのくらいのパワーを消費するのか。それを考えたら、ワンドルのパワー消費は甚大。気に掛けて当たり前よ。」
「なるほど、そこまで考えてませんでした。次に戻った時には少しでも身体を休めてもらわねばなりませんね。」
ガムは何やら身支度していた。それを見てミランダが問う。
「ガム。今日はどこへ出掛けるの?」
「山へ登ります。何かヒントが得られればと思って……。」
「そう。でも今朝からグアムスタンの雲の色が
「分かりましたミランダ様。雲の色はよく注意して過ごします。では行ってまいります。」
ガムは支度を終えると、山に向かった。
ミランダは椅子にもたれかかり、考え事。そのうちにテーブルに伏せて眠ってしまった。
バリスタン山のいつもの岩山までやってきたガム。
荷物を下ろし、側に腰を下ろした。
ガムはここに来て、何かヒントがと言っていたが、当の本人は何をどうすればいいのか考えあぐねていた。
シンクロとリンクのパワーを上級域まで上げて、何かを感じ取ろうとしていた。
グアムスタンの雲は澱みが晴れないまま、時折淡い光が瞬いている。
すると一瞬、雲が強く光り稲妻が走った。
目を閉じていたガムでも感じる明るさ。光りを感じ目を開いた。
と、その先。岩山の近くにある巨人の槍に稲光が落ちるのを見た。
一瞬だったが、巨人の槍は光りを吸収して輝いてはその大きな姿を表し、元の岩に戻った。
「巨人の槍に光りが落ちた……。あの大きな岩が輝く程のエネルギー。あそこなら何か得られるかもしれないな。」
ガムはグアムスタンの雲行きが怪しくなるのには気にも留めず、巨人の槍に足を向けた。
ちょうど同じ時刻の過去の時代のワンドル。彼も巨人の槍の近くに来ていた。
グアムスタンの雲からの稲光を目にした。
巨人の槍に落ちる稲光は、ガムが見たものと同様、巨人の槍を輝かせては元の岩に戻ったのだ。
「私がこの身に受けたエネルギー、測り知れるものではない。……待て。グアムスタンより離れた巨人の槍にまで稲光が届いている。これを利用できないものか……。」
グアムスタンの雲の色が変わってきていた。
「ミランダと巨人の槍を使ってリンク出来るかもしれんな。同じ時刻に違う時代とのリンク。試す価値はありそうだ。」
ワンドルはその時代から姿を消した。
一方のガムは、グアムスタンの雲の色が変わってきたのを見て下山した。
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