第22話 教師としてⅣ / 『あの日の飛空艇』Ⅰ

 朝を迎える前に紅音に至近距離で起こされた。

 最近構ってやれていないのが問題らしい。離れた日の夜はアイラと連絡を取り合うのもあって相手してやれなかった。


 明日も生徒らの相手をしなきゃいけないのにテレビゲームをしたり、漫画読んだりしてなんだか静かでいつもの日常に戻った気がする。

 その後も甘えてくる紅音を抱きしめたり頭を撫でてあげたりして気を落ち着かせた。


「ねえ、いつになったら…くれるの?」


「っ!まあ、日を改めて…」


「またそれ、あんまり待てない。

 そっちから来ないなら私から攻めるからね。」


 静かな空間で紅音は俺と唇を交わす。

 俺は紅音が嫌いなわけではない。ただアイラや夢実のことを考えて先送りにしているということもある。俺の優柔不断という悪いところだ。


「もう待て…」


 急にレーダーが反応をし始めた。

 近くに夢園病の患者がいる。発信先はこの学校内か…

 明魏は気づいており、既に先生らに連絡をして目標を避難させている。

 対象はボルトだった。夢民自体が夢園病になる症例は初めてだな。


 隊員が結果を確認したところ危険度階級はⅭ。熟練戦闘員一人を最低要するレベル。

 だが今回はこれだけの戦力がある。問題はない。


「行くんですよね。僕も行かせてください!」


「戯け!まだ貴様らは生徒。一般の戦闘員にすら及ばぬ…」


「檜垣司令官、もし許されるのなら彼らの動向を許諾させてもらえないでしょうか。」


 朱雀秘書は真っ先に否定したが檜垣司令官は理由を問い、明確な理由を説明したら許諾をくれた。

 その代り参加者すべての責任を俺が背負うという条件。


「いいでしょう。それぐらい覚悟の上です。」


 見学及び実践経験の特別講習。

 ついてくるのは山中、アリア、国枝、底沼、そして俺の担当の人の勇崎、日の精霊のハイヒートの六人である。

 救助隊からは俺、紅音、明魏、保護全般で444、セルルの方のガストンを派遣する。


「夢園病を阻止し、生徒らを必ず守ってくれ。」


「安心してください。全員無事帰還させますよ。」



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 中に入るとそこには豪華な飛空艇が存在した。

 生徒らは驚愕のあまり言葉を失っている。


「先生、この職業って…」


「ああ。この世界にはルールがあってな。

 その与えられた役職をこなす必要がある。従わなければ危険信号がこの世界から発信され、追い出すか殺そうとしてくる。

 だがそれに囚われる必要はない。あくまで表面上やってのければいい。

 スパイとして潜入するんだ。いいな。」


 山中とアリア、俺は整備員。紅音、勇崎、国枝はセレブ客。底沼、ガストンは船員。

 明魏乗り込み暗殺者、444とハイヒートは無職である。

 ラッキーだ。取り合えず生徒の近くに必ずエスポのメンバーがいる。


 俺らは上司の命令に従って整備を俺の支持のもと手っ取り早く済ませる。

 二人は経験がないため苦戦しているところも見受けられるが力があったお陰で予定よりも早く終わった。


「おお凄いじゃないか。あとは他の整備員に管理をさせるからお前らは呼び出されるまで自由にしているといい。」


 これで自由を確保。

 最初に調べるのはここの核だ。

 夢を見ている者が夢民として出て核本体となるタイプか夢民自体が核になっているのかそれともどこかに主核という全ての夢の世界にある夢の核そのものを探さなければならないタイプなのか。

 可能性としては一番目が高い。それは思い出の場所のようだからだ。



「核を探しつつ他の者と合流する。ついてこい。」


「「はいっ!!」」

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