第20話 教師としてⅡ
「あーっ。なんでこんな運命を辿らなきゃいけないんだ―。」
「なんだよ、寂しいなぁ。」
仲間には簡潔に説明。
ユーク・マリアンヌ。アジア州で特に人気とされているオーストラリアのメフィストという救助隊に現在所属。
そして昔の俺の師匠である。ガトリングを所持しているが実際は厳つい重武器全般で使いこなす筋肉怪物。有名になるに相応しい実力を有して本物。唯一弟子【俺だけ】に変に絡んでくる事が苦手な理由だ。
で、なぜ俺よりも先輩なのに俺をリーダーに仕立て上げるのか。試されているとしか…まあいい。
最初の訓練はまず全員の実力の把握のために一対一の模擬戦を行ってもらう。資料に特徴が具体的に記されているとはいえ目で見て判断するのが一番わかりやすい。
十二人の試合を俺と師匠とシベリア、紅音と明魏の二組に分かれて審査した。
全体の水準は予想以上だったが個々は予想範疇内。
さて、代表生徒山中とアリアの模擬試合はどこまでのものなのか。
「試合開始。」
お互い慎重に間合いをステップしながら詰めている。
最初に仕掛けたのはアリアだった。全身を大きく前屈みにして手持ちの模擬ナイフで素早く山中の首を狙った。
山中はそれに対応してアリアの腕をつかみ、後ろに引いて胸部を肘で強く突いた。アリアは思うほか頑丈らしくカウンターを耐えて上手投げで山中を倒した。
しかし山中も負けずと倒れる前に足を地に着かせ組手まで持っていった。
「お前はこれをどう見る?」
「確かに基本体力は高くやられた後も予測して自分が一番やりやすい場面にまで態勢を整えられている。
だが、アリアの得意とする素早さ、山中の得意とする怪力を上手くいかせていない。苦手部分を補うばかりで得意が弱く感じるよ。」
「へぇ。昔と違ってかなりいい目と感覚をしている。」
「あんたに育てられたんだからこれぐらい成長しとかないとな。」
解説し合っていると決着が見えていた。
結果はアリア。
―なるほど。山中とアリアは同じCQCであるだけにお互いを高め合う存在になっている。その証拠に殆ど実力差が無く戦っているとき一番輝いているように見える。
だが他の戦闘スタイルに追いつけなくなる、つまりCQCの耐性しかつかなくなる。
紅音の方も終わり、結果は予想を外した国枝。
国枝は突きの速さは達人に匹敵するが次への展開が鈍い。底沼は魔族の得意分野である遠距離魔法を控えて逆に近接魔法を多く使用している。
録画した動きからも無駄のなく魔族としての良さと人の戦闘スタイルを調和できている。
勝てる見込みしかなかったのだが、負けた理由は死んだ魚の目で見守ることしかできないしょうもないこと。
国枝の服が底沼の火炎拳によってボロボロになり、それに気づいてから底沼の動きが鈍くなったおかげで隙をつかれたということ。こいつは精神修行だ。
最後のボルトが残っているがその前に全員に成績表を返した。
顔を曇らせている者が多かった。その結果に納得いかない者、採点基準が厳しいと感じた者などが多くいた。
「そこまで言うなら先生の実力を見せてくださいよ。」
「ものを言う者実力示さずことなかれ。
そういうと思って最後のボルト君と俺が手合わせしようと思う。」
「え?!俺?折角何事もなく終えられると思ったのに。」
理由を尋ねられるが簡単だ。
最終総合戦闘地が一番高いのがボルトだからだ。
いつも気怠そうにしているから弱く感じるだろうが他の者よりも強い。
それを聞いた皆は驚いていた。こいつどんだけサボってたんだよ。
いや俺が言えたことではないか…
武器はボルトが機会装甲に対して俺は竹刀。どんなマウントだよ。
審判は正確な判断を委ねられる明魏に頼んで試合を開始した。
「本気で来い。」
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