第4話 一段落
帰還すると仲間から感謝の言葉が沢山告げられた。それよりも仕事の後に仕事ってまあブラックよな。
「シベリアさん、ここが俺らの家だ。」
大きな見晴らしのいい大きな窓の付いたリビングルームに3枚の扉(一枚の扉に複数の扉が重ねられており触った人物の部屋に繋げる転送装置の応用)が付いており、シェアハウスのようなどこか落ち着く感じがする。
シャワー浴びてスッキリ。
情報屋兼通信サポート役 黒電話異形頭のフォンが作ってくれたマカロンはやっぱり格別だぁ。美味い。
「今晩豪華にしているのであまり食べ過ぎないでくださいよ。」
「それは楽しみ。今回新しい仲間が増えた記念日でもありますからね。」
そんなこと言ったらほぼ3か月に一回あるようなものだ。自己紹介を済ませると、俺の声を聞きつけて隣の部屋から相棒が来た。
「全く、帰ってきたならこっちに顔出しなさいよね。」
主題メンバーのサポート担当の相棒 アイラ・マーティスである。同じ時期にここに就き、それからはタッグを組んで親友として共に働いている。
賢く、無駄のない処理能力のお陰でかなり助かる。
「帰ってきたなら、私に挨拶くらいしていきなさいよ。」
「はい、ごめんよ。」
「アイラ様、壱星様といちゃつくのは自由ですが期限の近い仕事を済ませてください。」
分かったような口を利いて赤面しながらもどこか物足りなそうな顔で部屋に戻っていった。俺はフォンが発行してくれた講習会申込表をシベリアさんに手渡し、事務作業に取り組む。
時間が経過して夕日が沈むころ。
新たな仲間と今日通知があった壱星の昇格を記念して豪華な食事をアイラのチームも呼んで大人数で食卓を囲んだ。
「それよりも久々に真面な人材見つけてきたね。」
「久々にとは、マグルも俺がいない間に随分と大きくなったなぁ。」
「てか、それじゃあ私たちが真面じゃないみたいな口振りじゃない。」
シベリアさんは慣れない食事や環境でも所々緊張している節はあるものの、女性陣と楽しそうに会話を進めていた。
アイラの方も新たな仲間を増やしたらしく新たな景色に皆はしゃいでいた。
食事休憩も兼ねてちょいと外の空気を吸いにいきますか。
夜風が気持ちいい。昔に比べて多々世界は変わってしまったけど、それでもこっちの世界が俺は好きだな。
シベリアさんもベランダに来た。
流石に今日は経験することが多くて疲れたらしい。当たり前だよな。でもやっぱり食事と会話とマルクスと酒があると空気は一つに感じ、和めたそうだ。
「今日の講習会で色々と知ったよ。
鏑木君の世界のこと、私がどうしていかなければならないかということ、自分は他者が創った創造物でしかないということ。」
最初は彼女もショックを受けると思っていた。自分は他者によって仕組まれた運命で悲しみ、失い、強くなったことに…
でも違った。
彼女は強かった。それを受け入れてこれからの自由をどう楽しむかということをもう考えていた。
会った時から前のめりな性格だとは思っていたけど、俺とここまでの差があるとはな…
「なあ、鏑木君。
これからは君がリーダーなんだろ?それに私からしてみればもう三年の付き合いだ。だから、私に敬語は必要ない。それと私の事はシベリアと呼び捨てで呼んでほしい。」
「…わかりました。なら俺も壱星で呼んでくださいよ。」
俺らは前の世界よりも互い距離感が縮まったような気がした。
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