A Reborn Romance in 2024.1.1

坂中祐介

第1話

ここは、北陸地方のA県A市である。

 東京から転勤になった40代後半の食品メーカーの会社員のヒロアキは、2024年の初詣は、A市のA神社へ向かった。

 そして、A神社でおみくじを引いたら、「大吉」だった。

 巫女は、ヒロアキにこう言った。

「大吉です」

「ええ、そうですか?」

「そうですよ」

「幸先良いかも」

「ここの神社では滅多に出ないんですよ」

「え、そうですか?」

「何か願い事はありませんか?」

「彼女が、欲しいです」

 と言ったら、彼女は、クスッと笑った。

 と言った。

 A神社の巫女さんは、肌が真っ白で、女優で言えば、稲森いずみに似ていた。

 ヒロアキは、稲森いずみに似ている巫女を「良い」と少しだけ思った。

 彼女は、少しだけ微笑んだ。

 そして、ヒロアキは、北陸新幹線や北陸本線のターミナル駅の近所のA駅前に住んでいるが、と年初めに、お酒を飲もうとしていた。

 ああ、俺も、到頭、彼女がおらず、そして、もう、生涯独身なのか、と思っていた。もう、何年と彼女がいない。

 そして、このまま年を重ねるのかと思った。

 そんな時だった。

 夕方4時だった。

 ガラガラどんどん。

 凄い揺れが、来た。

 部屋の電灯も色んなものが、揺れているのが、分かった。そして、暫く、立っていることができなかった。

 そして、どうやら、テレビをつけると、アナウンサーが、テレビの映像で「津波です」「逃げてください」と言っている。

 そして、一目散になって、ヒロアキは、怖くなり、逃げた。

 スマホと、ジャケットとマフラーと手袋と、財布を持って逃げた。

 そして、ハイツから逃げたとたんに、みんなは、A駅前は、パニックになっていた。そして、ヒロアキは、逃げていたら、前を走っている年配の男性がいて、ビルの上から、看板が、風にあおられ、バンッと落ちてきた。

 ヒロアキの前を走っていた、その年配の男性に頭からあたった。

「大丈夫ですか?」

 とヒロアキは、声をかけたが

「早く逃げろ」

 と言った声が、聞こえて、ヒロアキは、逃げた。

 年配の男性は、道端に倒れていたが、どうにもできないヒロアキが、いた。

 あの歌手の寺尾聰に似た男性。

 目の前で倒れたが、怖かった。

 ところが、死んでいたらどうしようか、とも思った。

 避難所では、ヒロアキは、彼の寺尾聰に似た男性のことばかりを考えていた。あのビルの看板、「A市のおいしいお菓子」と書いている看板もトラウマになっていた。自分だって、食品メーカーの会社員で、お菓子を作っている会社の営業マンだが、何故だか、申し訳ないと思った。

 そして、北陸新幹線A駅では、東京へ帰ろうと思っても、帰れない。そんな声が、SNSでもあった。

 さらに、そのまま、数か月が経った。

 避難所も終わり、そして、A駅前も、何とか復興した。

 そうは言っても、被災をしていて、建物も、崩壊し、街中では、これから「がんばろうA駅」「負けるな地震、A駅前商店街」などとあった。 

 40代後半のヒロアキは、それでも、こんな時だった。

 こんな時、とは、2024年1月の北陸地方の地震の後だった。

 まさか、と思った。

 A駅前の居酒屋が出来た。

「居酒屋強運」だ。

 そして、強運へ入ったとたんに

「いらっしゃいませ」

 と掛け声があった。

 その時だった。

 ヒロアキは、一人の見覚えがある顔がいた。

 そして、彼女もそうだった。

「あの」

「はい」

「どこかで会っていませんか?」

「え」

「A神社で、巫女をしていたのですが」

「ああ」

「そして、<彼女が欲しい>と言った人で」

 と言った。

 そんな時、手を出すのが早いヒロアキは、LINE交換をした。

「名前って、レイカさんって、言うのですね」

「はい」

 と言って付き合いが始まった。

 ヒロアキは、ここで、何度かチューハイを頼んだ。焼き鳥もよく食べた。

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