第2話

  10年前。

 リボー皇国という国が滅んだ。


 原因はいたって普通。

 市民による革命。


 新興国家の躍進を端に発した民主主義思想の流通と封建制度への疑念。

 下位階級から起きた身分階級に対する不平不満。

 それらは大きなうねりとなり皇国打倒へとつながった。

 革命を止める者はおらず数か月で新たな国家が誕生した。


 あの時の熱狂を今でも覚えている。

 誰もが笑顔だった。

 誰もが浮かれていた。


 ただ、当時の私は混乱していた。

 リボー皇国が革命の渦の中だった当時、私は右も左も分からない6歳の子どもだった。

 前世とも呼べる記憶と今の自分に折り合いをつけて何とか皇子として生きて行こうと決心していた矢先の事だった。


 そう。

 私は転生者。

 といっても大したことは無い。

 ここではない何処かの情報を持っているだけで特別な能力を持っているわけではない。

 才覚才能も平凡。

 何処かの知識がこの世界より優れていて天才神童として扱われることもない。


 そもそもリボー皇国の皇族は大体が転生体質。

 父も兄姉も伯父伯母もここではない何処かの情報を持って生まれた。


 ただ、転生といっても生まれ変わりとかそういうのとは少し違う。

 私たちはここではない何処かの世界の情報を持って生まれる。

 その情報はひとりの人物の生涯を通して得られるのだけれどそこに感情は無い。

 私を含めて皆この世界の自分が第一。

 前世ともいえるそれらに思い入れは無い。


 とはいえよくわからない記憶があるというのは大変で幼いころは色々と苦労した。

 5歳前後で自我が形成され自分の中にここではない何処かの情報があることを自覚するのだが色々と混乱して戸惑う。

 周りに経験者が多くいたので孤立しなかったが精神的にはきつかった。


 そうした諸々を飲み込んで前を向いたころに革命が起きた。


 当時6歳の私には何も出来ず流れに身を委ねるしかなかった。

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