第13話 収まる?
ホテルと言ってもビジネスホテルにやってきた俺たち。ツインルームの一番良い部屋を選んだ。メンバー同士では普通の感覚を忘れずに、と言い合っているが、会社からはいつも「最高の物を選べ」と言われている。ホテルやレストラン、飛行機など、安い物を選ぶと、安い客がいて危険だと言う。お前たちはVIPなのだと言われる。いつも混乱する。でも、今は何となくボディーガードもいないし、高級なホテルの、高級な部屋を選んでおいた方が安心かなと、会社の方針を思い出してそうしてみた。
「俺、推し活ってしたことないけど、お前に会うために今まで稼いだお金全部使ってもいいなって思ってる。これって、推し活みたいじゃないか?」
テツヤが部屋に着いて広いベッドに飛び込んだ後、こんなことを言った。推し活か。たくさんの人に推してもらっている俺たちからすれば、その言葉は一般の人が思うそれとは違う意味を持つ。でも、今テツヤが言っているのは、一般の人が使う意味の“推し活”なのだろう。
「じゃあ、その代わりにたくさんファンサービスしないとね。」
テツヤの顔を指でくいっと持ち上げて俺がそう言うと、テツヤは照れたように笑って顎を引いた。可愛い。
コートを脱いでハンガーに掛けていると、テツヤが後ろからタッチしてきた。
「うわ、もうこんなに……。触ってもないのに。」
テツヤが驚いている。俺のやる気はもうマックスだ。
「でも、放っておけば収まるんだよな?」
テツヤが意地悪く言う。
「テツヤが目の前にいたら、一生収まらないよ。」
これ、一生いじられるんだろうな。俺の浮気事件。いやいや、断じて浮気したわけじゃないぞ。
「そういうテツヤはどうなんだよ?」
俺がテツヤの方へ手を伸ばすと、テツヤはひらりと身をかわして逃げた。
「やだよ、触るな。」
「触る。」
「やだ。」
「待て、触らせろ!」
「キャー!」
広い部屋をしばし追いかけっこする俺たち。
「捕まえた。」
腕を掴んで、それからバッチリ触らせてもらったら。
「むふふふ。」
「なんだよぅ。」
お互い、やる気バッチリ。二人でふふふと笑う。夜は長い。ゆっくりと愛し合おうではないか。
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