私の嫌いな冬
皆川翠
私の嫌いな冬
……今年も冬がやってきた。窓の外に降る雪を見ながら思う。
私の大大大嫌いな冬。朝明るくなるのは遅くて、日が暮れるのは早い。
なんでよ。せめてどっちかにしなさいよ。
そしてなにより、寒い。今もあったかいお布団が離してくれない。
寒いのは嫌。学校に行くのは楽しいけれど、寒いというだけで行きたくなくなっちゃう。
「ひなた、早く起きないと学校遅れるわよ!」
一階からお母さんの声が聞こえる。
わかってるんだけど、お布団が離してくれないの……。
そんなことを思っていたら、お母さんにお布団剥がされちゃった。
「早く起きなさい。今何時だと思ってるの」
「寒いよぅ……」
「早く着替えて、ご飯食べてあったまりなさい」
「はぁい……」
制服に着替えて、あったかいコーンスープを飲む。
「はぁ……沁みるわぁ……」
暖かさに感涙していると弟の涼太が、
「姉ちゃんババくさい」
と一言。
「何だってー!?もっかい言ってみなさいよ涼太!」
「ふぇ、そんな怒らなくてもいいじゃん」
「あのねぇ、年頃の女の子に……って、もうこんな時間!?行ってきます!」
時計は8時を差している。もう出ないと間に合わない。
慌てて鞄を背負って学校へ急いだ。
あまりの寒さに手袋をしているはずの手が震える。寒い。寒すぎる……
「あ、おはよう、悠くん」
「おはよう、ひなた。すっかり冬景色だね」
悠くんは私の幼馴染。小さい頃からずっと一緒に学校に通っている。
高校を出て大学に行ったら、離れ離れになっちゃうけど……
「ほんと、もうやだよ雪は……北海道民の宿命だけどさ……」
「僕は好きだけどね、雪」
「えぇ……どうして?」
「こうやって大切な人と、話せる話題になってくれるから」
大切な、人……?
「ひなたとこうして雪を見られるのも、もう2年くらいなんだね……」
そう話す横顔がなんだか悲しそうに見えて、思わず言ってしまった。
「じゃ、じゃあ……卒業して離れちゃっても……一緒に、雪、見に行く?」
悠くんは可笑しそうに笑って言った。
「嫌だよ、なんでわざわざ雪見なきゃいけないの。ひなたと見に行くなら、もっと……特別なものがいい」
何年振りか分からないくらい久し振りに繋いだ手が震えていたのは、きっと、この底知れない寒さのせいだ。
私の嫌いな冬 皆川翠 @kusunokiP_888
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます