スタート

だら子

第1話

さあ、この金が手に入ったらわたしのだ。

手術には金が必要と言われて、今まさに犯罪に手を染めようとしている。


生きるために、愛する人と暮らすために必要なのだ。

きっと全て思い出す。きっと私は幸せになる。


わたしの記憶は2分しかもたない。

事故が起こる前の記憶は全部あるが、その後の記憶は…何もない。



紙に書いた情報がある。


・私には愛する人がいる

・愛する人の名前はヒロト

・ヒロトのバイクで事故に遭って記憶が2分しかもたない

・何度も同じことを聞いてしまうので紙に記録している

・記憶障害を治すには、手術にはお金が必要

・祖父の金を盗む

・祖父の家の冷蔵庫にパスワードがある

・パスワードの紙はなぜか剥がせない

 覚えてここに書くかできれば、そのまま金庫へ

・お金を手に入れたら、

・ヒロトの電話番号は080-XXXX-XXXX




祖父の家に私はいつからいるのだろう。

不安で吐きそうになる。

冷蔵庫の音がうるさい。

ふと顔を上げると時計は真夜中の2時をさしていた。


事故の前の記憶はあるので、ここが祖父の家であることも、

冷蔵庫や金庫の場所も全て把握している。

ああこんな自分を安心させる言葉は、今はいらない。


冷蔵庫を開ける。一番奥のタッパーの下。

そこにパスワードが書かれている。

パスワードは、私の誕生日だった

 ・0305

さあ、開けよう。私の記憶を取り戻すために。



金庫には何も入っていなかった。

ヒロト…ごめん。

電話しなきゃ…



【そして、冒頭に戻る】



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