174話 筆記試験

「光流、面接終わったよ」


 ルーシーから面接が終わったと電話がきた。


 長電話をすると勉強に差し支えるので、受験が終わるまでは控えようという話をしていたが、今回だけは短い時間のみ良しとした。


「ルーシーお疲れ様。どうだった?」

「うん。緊張したけど、言いたかったことは言えたと思う」


 電話越しのルーシーの声はとても耳心地が良い。

 ただ、面接でたくさん話したからか、少し疲れているような声音だ。


「そっか。ならあとは結果を待つだけだね」

「光流に甘えたい〜って思うけど、光流がまだ受験終わってないから我慢するっ」


 既にこの時点で少し猫なで声になっている。

 その声を聞いていると、脳内がとろけそうになる。


「そういやどんなこと聞かれた? 面接だから似たようなこと聞かれるような気がする」

「確かに! てかこういうこと教えても良いのかな?」

「面接は筆記じゃないから良いんじゃないかな」

「そうだよね。まずは志望動機でしょ。それから自分の長所と短所。学校に入ってしたいこと。あとは秋皇をどんな学校だと思っているとか?」


 ルーシーに聞く限り、それほど変わった質問はされなかったようだ。

 面接は思ったよりも心配する必要はなさそうだ。


「――うん……うん。ありがと」

「じゃあ。頑張ってね。受験終わったらご褒美あげるからね」

「えっ?」

「ふふっ。楽しみにしててね」

「わかったよ。それじゃあね」

「うん。じゃあね」


 最後に気になることを言っていたが、なんのことだろうか。

 受験のことしか考えておらず、全く想像がつかなかった。


 電話を切ったあと、ルーシーからスーツ姿の写真が送られてきた。


 ぴしっとした黒のスーツ姿がとても似合っていて最高だった。

 これでメガネをかけたりでもすれば、家庭教師っぽくなるのかなとかも考えたりして、色々と妄想が捗った。


 ちなみに、以前しずはへの返事でちょっとえっちな写真を送ってくれたあの時から、ルーシーは逐一写真を送って来るようになった。

 露出度は減ってはいるけど、今のアメリカでのルーシーが見られて、離れているのに近さを感じるようになった。


 たまに真空と一緒の写真も送ってきてくれたり、アメリカのクラスメイトと仲良くしている写真も送ってくれたりもした。




 ◇ ◇ ◇




 毎日毎日、ギリギリまで勉強を繰り返し、ついに受験日前日となった。


 受験のために中学校自体が休みとなる学校もあるようだが、うちの学校もそれに近かった。

 受験前の一週間は学校に行かず、家で自主勉強しても問題ない。


 ただ、俺は受験前の最後の日だけは登校し、一日中図書室に籠もって勉強を続けた。

 その理由は受験に向けて皆で意気込むため。


 今、図書室には、いつものメンバー八人が集まっている。

 俺、冬矢、しずは、深月、陸、理沙、朱利、里帆。


 陽も暮れて夕方。勉強道具を仕舞い、全員帰る準備ができてから俺は皆に声をかけた。


「皆、明日は受験票だけは忘れないようにね」


 わかってるって、という声が飛び交ったが、かなり重要なことだ。

 いくら勉強してもそれを忘れてしまっては意味がない。


 そして、一人一人に声をかけることにした。


「理沙。得意科目は社会だったよね。期末テストの時みたいに理沙なら高得点とれるよ。あとは残りの科目。一生懸命やってきたことを全部出そう」

「うん。光流……皆。本当にここまでありがとう。一番バカな私を教えるのは大変だったと思う。でも私も頑張って勉強してきたつもり。秋皇は正直厳しいとは思ってる。でも、やれるだけ頑張るね」


 なんだか既に泣きそうな雰囲気になっている。泣くとしたら合格発表の時にとっておきたい。


「朱利は理沙と同じく勉強すれば点数がとれるポテンシャルはある。結構地頭も良いと思ってる。得意な数学で点数を稼ごう」

「ありがとう。特に光流と理帆はたくさん教えてくれたね。人生で初めて真面目に勉強して自分の得意分野がわかって驚いたけど、本番は明日だもんね。全力出せるように頑張る」


 そんな朱利の手元には単語帳があった。そこには数学のあらゆる公式や方程式が書き込まれていて、日頃からそれを見返して頭に叩き込んでいた。彼女なりの努力だった。


「理帆。基本的に教える側だったけど、毎日ありがとう。俺もわからない部分たまに教えてもらったけど、本当に助かった。受かるって信じてる」

「光流くん……前に言ってたけど、教える側もメリットがあったから凄い自分の勉強のためになったよ。勉強会ってわからないことすぐに聞けるから、これで成績上がるってわかってたら一年生の時からやりたいくらいだったよ。でも、こうやって勉強会を皆でやれて良かった。初めて勉強が楽しいって思えたかも」


 俺も理帆と同じ気持ちだ。

 友達と勉強を一緒にやるって凄い楽しくて、しかもわからないことをすぐに聞ける。

 一年生の時からやっていたら、俺だってもっと上の順位を……。


「陸……多分一番感謝してる。秋皇に行くわけじゃないのに、俺たちに協力してくれて本当にありがとう。陸のことは正直心配してない。山崎さんと一緒の学校に行けると良いね」

「ははっ。俺だってテストで成績上がったんだし、勉強会様々だよ。皆と同じとこに行けないのは少し寂しいけどさ、学園祭は蓮ちゃんと絶対に行くから。だから秋皇に受かって俺をもてなしてくれよ」


 陸らしい言葉だった。

 少し前に陸から話を聞いていたのだが、恋人の山崎さんも陸と同じ学校を目指しているらしい。二人が目指している学校は秋皇よりもレベルが高い。山崎さんも頭は良いそうなので、多分問題ないだろう。


「深月は俺が教える機会はそんなになかったけど、期末テストで一気に成績が上がったところを見ると、恐らく大丈夫。俺よりも冬矢の方がわかってると思うけどね」

「私は流れで秋皇目指してるだけだし。別にどの学校に行ってもピアノはできるしね。ただ……しずはが行こうって言うから少しだけ頑張ってみただけ」

「正直にしずはと一緒の学校に行きたいって言えば良いのにな」

「うるさいっ!」

「いでっ!?」


 深月の本心ではなさそうな言葉に冬矢がツッコミを入れると深月にバシッと頭を叩かれる。

 時間が進むに連れて、こういった夫婦漫才が発生するようになった。最初は冬矢のことが嫌って感じだったけど、最近はそんな気配はない。良い傾向だ。


「しずはも大丈夫だと思う。努力できることは昔から知ってるからね。それに、少し前からもっと勉強頑張ってたみたいだし」

「まぁね。めんどいことに行かなきゃならない理由もできたし。やれるだけやるよ」


 ルーシーとの再会を約束したしずは。あれから彼女はいつも以上に勉強を頑張っていた。

 めんどい、なんて言ってはいるが、ルーシーに対してだけはなぜか昔のしずはに戻ってしまうツンデレだ。


「そして冬矢。最初に秋皇に行こうって言ったのは冬矢だったよね。一年前から言ってたけど、まさか勉強会をやることになるなんてね。目指す動機は不順だったけど、誘ってくれて嬉しかった」

「そういうの掘り返すなよ〜。深月の目が怖い。まぁ、でも俺はお前と一緒の学校なら正直どこでも良かった。その中で秋皇を選んだのはたまたまだけど、俺も勉強会を開いて良かったと思ってるよ」


 動機というのは、女子の制服が可愛いというものだった。

 あとは自由な校風というのもあったけど。

 だからその話題を出すと深月が冬矢のことをゴミを見るような目で見始める。


 冬矢に関しては自分が言い出しっぺだ。必ず合格するだろう。


「じゃあ最後に自分のことを言うね。こんなこと言うのも変だけど、受験票とか名前を書き忘れない限り、合格する自信はある。だからといって俺は勉強を怠ってきた日はない。小学生の時から勉強を頑張ってきて、まさかここまで成績が上がるだなんてあの頃は思ってもいなかったけど、努力すればできることだってあることがわかった。多分、皆もそれを今回で体験したと思う。とにかく言いたいのは、今日まで勉強会に参加してくれてありがとう」


 俺は少し自慢気な話を入れつつも感謝を述べた。

 理沙と朱利の目を見ると、涙が零れそうなほど水滴が溜まっていた。


「お前が落ちるなんて思ってるやつはいねーよ」

「光流が落ちたら全員落ちるね」


 冬矢としずはにそうツッコまれ、少し笑いが起きる。



「じゃあ最後に掛け声をして今日は帰ろう」


 俺がそう言うと一同に真剣な表情で頷いた。


 今日は図書室が一日中開放されているため、図書委員はいない。

 なので、一瞬だけ大きな声を出しても怒る人はいないだろう。


 俺は囲んでいたテーブルの中心に右手を出した。

 すると、次々に俺の手の上に皆の手が重ねられてゆく。


 そうして、八人全員の手が重なると――、


「――皆で受験に受かるぞーっ!!」

「「「「おーっ!!!」」」」


 声を出して手を上に突き上げる。

 深月だけはかなり小さい動作だったが、彼女らしいのでそれで問題ない。



「じゃあ、帰ろっか」



 それぞれカバンを持ち、アウターを制服の上に着込んで学校の外に出た。




 ◇ ◇ ◇




 緊張するのは、久しぶりだった。


 文化祭の時以来だろうか。

 心臓の中心にヘビがいるようにうねうねと心をかき乱す。


 高校受験当日。今日は筆記試験の日。


 地面にはまだ雪が残ってはいるが、空からは何も降ってきてはおらず、ここしばらくの天気とは打って変わって青空が広がる快晴だった。


 天気が良いことは素晴らしい。心も晴れる気がする。

 今日は受験日和といっても良いだろう。


 朝、家から出る時には、母に「受験票持った?」と百回くらい言われた気がした。

 玄関でカバンの中に入れた受験票を見せて、さらにそれを仕舞うところまで。


 ここまで心配されたのは、事故に遭った時以来ではないかと思ったくらいだ。

 姉の高校受験の時はいつも通りに送り出していたと思うが、今回は心配に心配を重ねていた。


 と、言っても姉も一週間後に大学受験を控えている。

 俺と同じ状況だ。


 そんな姉には「光流なら息を吸ってさえいれば受かる」といった心配ともとれないような冗談をもらった。

 最後に父は「心配はしていない」と言われ送り出された。



 ともかく俺は、電車で秋皇学園がある駅まで移動し、そこから数分。

 見慣れない景色が広がる並木道を歩いている。


 今回は電車移動しているが、もし通うことになったら自転車でも行けなくもない距離だ。

 その時になってみないとわからないが、臨機応変にいきたい。


「よっ」


 秋皇学園に向かう道の途中、耳が痛くなるほど聞き慣れた声が後ろから聞こえた。


 軽い口調、明るく跳ねた声。その一言だけで冬矢だとわかる。


「おはよう、冬矢」

「ついに来たか〜」


 全く緊張はしていないような表情。彼が緊張している場面は見たことがない。


 サッカーの試合でもバンドの演奏の時だって、いつも楽しんでいるような顔をしていた。

 唯一暗い顔をしていたのは、膝に大怪我を負い、俺が病院にお見舞いに行った時。


 まだ完全には吹っ切れていなかったとわかってはいるものの、今何をすれば良いかわからない。高校でそれが解決すれば良いとは思うけど。


「皆、受かるといいな」

「俺は受かるって信じてる」


 だって、あんなに頑張ってきたんだ。

 内申点が厳しい人もいるけど、十分挽回できるくらいになっていると予想している。


 そう冬矢と会話していると、秋皇学園の巨大な校舎が見えてくる。


 マンモス校と言われるだけあって、かなりの大きい。

 今日は受験日なので、在校生は休みになっているのか姿は見当たらない。


 それよりか目に入ったのは、俺たちと同じ受験生の数々。

 本当に人が多い。


 自分とは違う制服の生徒が次々と校内へと足を進めていった。


 俺たちも校門をくぐって看板の案内に従い、学校の中へと進んでゆく。

 自分の受験票の番号を確認し、指定された教室へ辿り着いた。


「受験場所は別々みたいだな」


 俺が先に一つの教室の前で足を止めると、冬矢から声をかけられる。


「うん。じゃあ……お互いに頑張ろう」

「おうっ。またなっ!」


 コツンと俺と冬矢は右手の拳同士を前に出して軽くぶつけ合った。

 

 そうして、冬矢が先の教室へと歩いていくのを見送った。




 …………




 結局、ここまで冬矢以外の友達には会うことはなかった。


 俺は心の中で皆頑張れと唱えながら試験会場の教室へと足を踏み入れた。 


 入口からぱっと教室を見渡してみると、まだ半数も埋まっていなかった。


 俺は黒板に貼ってあった受験番号が記載された座席表の紙に従い、自分の番号の席へと向かった。


 窓際、後ろから二つ目。そこが俺の席だった。


「ふぅ……」


 コートを脱いでから椅子を引いて腰を下ろし、カバンの中から受験票と筆記用具を取り出して机の上に置いた。同時にスマホの電源も切った。

 これで後は試験の開始を待つだけとなった。 


 俺より先に到着していた受験生のほとんどが、参考書や単語帳などを見返したりしていて、ギリギリまで頭に入れようとしていた。

 確かにこれをすることによって、数点変わる可能性がある。


 ただ俺はこれまでのテストでもそうだったのだが、直前に勉強することはなかった。

 それは、テスト当日まで十分なほど勉強をしてきたから。


 一種の余裕ではあるが、それだけ勉強をしてくれば直前になってあたふたすることもないはずだ。


 ふと左側、窓があるほうを眺めてみた。


 ここは四階の教室。続々と校門から受験生がやってくるのが見えた。

 本当に人が多い。歴代の倍率から最低でも二倍近くになると予想できた。


「きみ、勉強しないんだぁ?」


 窓の外を見ていると、ふと後ろの席から声が聞こえてきた。


「ん?」


 俺は振り返ってみた。


 すると話しかけてきたのは、どこの学校なのかわからない制服を着ていた女子生徒だった。


 小柄な体格に首元まで伸びている髪は毛先が外に跳ねている軽めのミディアムボブ。特徴的な大きめの黒縁メガネに半開きの瞼は眠たそうな表情に拍車をかけていた。


 机の上に上半身を委ねている体勢と声のトーンからもどこか気だるげな印象だ。


「もうすぐ入試なのに皆頑張ってるよねぇ」

「……そうだね。君だって勉強していないみたいだけど」


 初対面なのに話しかけるのが当然のようにいきなり接してくる相手には少し警戒してしまう。


「今更頑張っても大きく結果が変わるわけじゃないしね」

「それは俺も同じ意見。でも合格するしないの微妙なラインの人はやる価値はあると思うよ」

「へぇ〜。なら君はそうじゃないみたいだね」

「やれることはやってきたからね」


 多分だが、この子も俺と一緒だ。

 正直見た目からして勉強が好きとも思えないし、勉強を頑張っている姿が全く想像できないのだが、秋皇を受けている時点で勉強をしていないなんてありえない。

 だからこの子も俺同様に十分に勉強をしてきていると考えた。


「君、名前なんて言うの〜?」

「九藤だよ」

「名字とかどうでも良いよぉ。下の名前ぇ」

「光流だけど……」

「おっけ〜光流っちねぇ」

「光流っち!?」


 この子は距離感がバグっている子のようだ。

 初対面でこんなにラフなあだ名をつけるとは……見た目は全くギャルではないのに、ギャルのような距離感だ。


「呼び方なんてなんでもいいじゃん。ちなみに私は麻悠だよ〜」

「いきなり麻悠ちゃんなんて呼べないんだけど。名字教えてよ」

「名字ぃ? 私をさん付けで呼ぶ気ぃ?」

「教えてくれないなら……麻悠さん」

「うげぇ。なんか鳥肌ぁ」

「なら名字――」


 そう、麻悠さんと会話している途中だった。


「――はい、注目してください。これから入試前の注意点を説明します」


 担当の試験官がやってきたようだった。

 周囲を見渡すと、いつの間にか全ての席が埋まっていた。そして誰一人見覚えのない生徒たちだった。


 教壇に立った試験官が注意事項の説明や試験時間の説明などを行った。

 その後、試験官がテスト用紙を裏返しにしたままそれぞれの机に置いていった。



 その状態のまま数分。

 誰もが何も言葉を発しないまま、時計の針だけが動く。


 そしてついにその時がやってくる。


「――時間になりました。テスト用紙を表にして始めてください」


 受験生たちが一斉にテスト用紙を手に取り表にした紙の音が聞こえた。

 俺も皆と同じ動作でテスト用紙を表にして、試験をスタートさせた。




 ◇ ◇ ◇




 ――数時間後。全ての教科の筆記試験が終了した。



 試験官が全てのテスト用紙を回収し、教室にいる生徒たちも帰宅ということになった。


「終わった〜」「疲れた……」「難しかったぁ」「徹夜したのに予想してた問題出なかった」「早く帰ろ〜」などなど。中には知り合い同士の受験生もいたようで、そんな言葉を交しながら教室を出ていった。


 俺も筆記用具を仕舞い、カバンを持って席を立った。


「――光流っち、どうだった?」


 試験前に会話していた子から声をかけられた。

 もう俺の名前は光流っちで確定らしい。


「そうだね。全部埋めれたし、手応えはあったよ」

「へぇ〜。あの問題、全部埋めたんだぁ」


 まだ席に座っていた麻悠さんが上目遣いでそう話す。


「君は全部埋めれたの?」

「まぁね。全部埋めたよ」


 やはりこの子は勉強ができる子のように思えた。

 適当に空欄を埋めることもできるが、試験前と変わらない表情から察するに、ちゃんと回答を記入したようだ。


 そう会話していると、麻悠さんも筆記用具を片付けてカバンを持ち上げた。


 立ち上がると、より身長差を感じた。

 百五十センチほどだろうか。俺とは二十センチくらいは差があるように思えた。


 そんな帰り支度が完了した麻悠さんが一歩俺に近づくと――、



「――氷室」



「え?」



 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。



「私の名前……氷室麻悠って言うの」

「あ、教えてくれて、ありがと」



 試験前に聞きそびれていたことを律儀に教えてくれた彼女。

 意外と良い子なのかもしれない。



「――それじゃあね光流っち。もし二人とも受かってたら、また会う機会もあるかもね」

「えっ……あっ……」



 名字込みの名前を告げると、麻悠さん――氷室麻悠は、俺が追いかける暇もなく、そそくさと教室の外へと出ていってしまった。



「氷室……」



 聞き覚えるのある名字だった。

 

 珍しい名字ではあるが、世の中にいないわけではない。

 ただ、その名字がどうにも気になった。



「まさかな……」



 彼女の名前について少し引っかかりを覚えつつも、二人とも秋皇に受からないと恐らくもう会う機会はないだろう。



 ひとまず俺はスマホの電源を入れ、勉強会メンバーで作ったグループチャットに『皆お疲れ様』とメッセージを入れた。


 そしてもう一人。ルーシーにも『筆記試験終わったよ』とメッセージを入れた。



 

「ふぅ……あとは面接か」



 テスト用紙は既に手を離れた。

 もうどうしようもないので一安心するしかない。残すは面接だけ。


 皆の筆記試験はどうだったろうか。勉強の成果を発揮できただろうか。

 あれだけやったんだ。良い結果が出るはず。

 


 そんな時、冬矢から『一緒に帰ろうぜ』とメッセージが入った。

 俺はOKと返事を返すと、教室の出口へ向かって足を進めた。



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る