元無罪請負人のワイやが、転生して地獄の執行人となる
雨井 トリカブト
第1話 転生した先
「ぎゃははははは、お金は貰ってくぜ。くそ弁護士。牢屋にぶち込んでくれやがってよ。おかげで俺様の貴重な10年が台無しじゃないか。大金をはたいたのに何が無罪請負人だよ。」
「・・・・・」
「あ。もう死んだか? まだ1か月しか経ってないのによ。全く、これだから勉強ばっかりのお坊ちゃんは根性が足りねぇな。」
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―――
―
山井 正 去年37歳 異世界に転送します。
≪打撃耐性獲得≫、≪斬撃耐性≫獲得、≪刺突耐性≫獲得、≪火耐性≫獲得、≪水耐性≫獲得、≪雷耐性≫獲得、≪猛毒耐性≫獲得、≪麻痺耐性≫獲得、≪酸耐性≫獲得、≪腐食耐性≫獲得、≪精神攻撃耐性≫獲得≪幻覚耐性≫獲得、≪恐怖耐性≫獲得 etc.
ユニークスキル≪閻魔≫を獲得しました。
―――――
―――
―
「ヤマさーん。例の書類どうした?」
「あのクエストの件やろ? もうとっくに処理済ませたで。」
「あの量をもう終わらせたのか? ヤマさん。あなたは英雄だ。」
「ワイはただの一事務員や。男に煽てられてもなんも嬉しゅうないで。」
「ヤマさーん。私の仕事が全然終わらないの。助けてえええええ。」
「あいよ。ちょっと待っとき。あとちょっとで今の仕事が片付くわ。」
「ヤマ様~。仏様~。」
ワイがこの世界に転生して1年絶った。
この世界には剣とか魔法とかが実際に存在するみたいや。
今は冒険者ギルドっちゅうところで事務員をしとる。
元々、ブラック企業もとい弁護士事務所でバリバリやってたワイにとって、
この程度の事務処理はお手の物や。
せやから、こっちの世界では平穏に
・・・・・とはいかないらしい。
「おい、また森からワイバーンが現れたらしい、隣町のジェイクファミリーが応戦したが、ほぼ壊滅状態だそうだ。」
「すぐに市長に進言して討伐クエストを作成しないといけないな。」
「ヤマさーん。ワイバーンの討伐の件、予算案を作成して貰っていいかー?」
「あいよ。予算案程度なら3分で終わる。」
「さすが、ヤマさん仕事が速い。」
まぁ、魔法と剣があれば魔物がいるのが常や。
ワイらが住む町『ドーンヴィル』の近くには魔物が湧き出るスポットがある。
そのため、冒険者ギルドが主要な産業となっているわけやが、
住民に被害がゼロと言うわけやない。
しかも、他の地域に比べて自然と税金も割高になる。
市長も頑張っとるが、それでも貧富の差っちゅうもんが生まれる。
「また、スキルを使った犯罪者捕獲の依頼か! 今度はどいつだ?」
「レックス・ギャラガー。45歳。警護のクエスト中、依頼元の金品を奪った罪で除名された元D級冒険者でな。風のスキルで空を飛ぶので捕獲が非常に厄介だ。」
「レックスか。久しい名だ。この前、服役を終えたばかりなのに全く反省がない。」
この世界にはスキルっちゅう特殊能力があり、それを悪用する奴もおる。
スキルの悪用は重罪やが、実際に犯罪でよく使われとる。
強力なスキルを使われたら騎士団クラスでも捕獲すら難しい。
まぁ、要するに治安は最悪っちゅうことや。
「おい! この件はどうする? 例の伯爵が絡んでるやつだぞ。」
「もちろん、それはなかったことにしとけ。俺らの首だけならともかく、家族全員が路頭に迷うぞ。」
「そうだな・・・・・・」
そして、こっちの世界は階級社会らしい。
貴族達の地位は絶対や。ワイら一般市民には何の口答えもできへん。
もちろん、立派な貴族様もいらっしゃるが、権力は時に人を暴走させる。
悪徳貴族に目をつけられたら、何をされるかわかったものじゃない。
これでも、ワイは前世では性善説に根付いた敏腕弁護士や。
人間、一時の迷いで道を外すことはあるが根は善である。
犯罪者といえど更生の余地がないものは存在しないとワイは信じとった。
せやけど、魔物にスキル、さらには階級社会。これらがこの世界を狂わせとる。
人間の悪意が浮き彫りになっとることは、性善教の敬虔な信者であったワイにも理解せざるをえなかった。
ガラガラ、
ギルドの玄関が開く音と共に入ってきたのは若い女性や。
綺麗な黒髪はボサボサになり、服は泥だらけで、よく見たらあちこち破けとる。
顔の左半分と左腕にはひどい火傷痕があり、ただ事じゃないことを臭わせる。
純朴な顔とは対照的に虚無感と憎悪を宿した目つきがその証拠や。
その女性は掠れた声で懇願するように訴えた。
「すいません。どうか。どうか。ある方を殺すのを手伝ってくれませんか。」
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